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僕の探し物  作者: ネガティブ
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学校

 メラメラのなかにある建物は、僕が通う学校だ。

 どこにでもあるようないたって普通の。外壁があってその中に学校という世界がある。

 中学生の僕にとってはこの学校が世界の一つだ。平日はほとんどここに来るわけで、クラスメイトともいつも顔を合わせる。だからコミュニケーションは大切で、これが有るのと無いのでは随分違ってくる。

 友達がいたらそこは楽しい世界になる。たわいもない会話で盛り上がって、昨日見たテレビ番組の話をしたり、今週のジャンプどうだったと感想を言い合ったり。

 友達がいなかったらそこは孤独の世界になる。聞こえてくる楽しそうな話し声、自分だったらこういう意見があるけど参加できない寂しさ、下校は寄り道せずにすぐにお家でたまに寄り道するとそこには羨ましい笑顔が溢れていて。

 まるで天国と地獄で、上手くこの世界を立ち回らないとやっていけないのだ。

 それは大人の世界だけじゃなかった、誰かを踏み倒して自分が登っていくというのは。それが良いことでも悪いことでもあっても、学校という山を登るのは同じだから卒業するまで逃れられない。追い詰められる日々に耐えられなくなて途中で下山する者がいる、追い詰められていても耐えて耐えて我慢する者もいる、何かを変えようと立ち向かう者、もう全てを受け止めてしまった者、色んな人がこの山にはいてそれを一部の悪者が牛耳っている。

 どこにでもいるのだ、ニュースを観たらその報道はある、いじめっ子といじめられっ子の戦い。

 僕はこのニュースを観るたびにこう思う、いじめてる奴はそんなに偉いのだろうかと。この社会を動かすほどの力を持っているのだろうか、人に自慢できるような人生を才能や能力があってそれを認められたのだろうか、後ろめたくない人生を歩んできたのだろうか。

 そんな事はない、僕らはまだ何もできない。これから何かをしてやり遂げて社会に貢献してこの国を変えていくための勉強をしている最中なのだから。

 それなのにドコをドウ勘違いしたのやら、偉そうに威張り散らして何様だという態度でそのクラスのトップに君臨していると自分は思っていてそれが馬鹿らしくてしょうがない。何故こんな馬鹿らしいヤツにいじめられなければならない、何故こんな馬鹿らしいヤツにゴミだバイキンだなどと言われなければならない、何故こんな馬鹿らしいヤツに命を奪われなければならない。

 理不尽すぎる、こんなヤツにキラキラと輝いている命を奪われるなんて。それでこの馬鹿は何も罰せられない、学校は面倒事を嫌がる傾向があるからこれを捻り潰し無かったことにする。

 教育委員会も役に立たない、非常勤の教育委員が月一、二回集まって議論するだけでそんなんで問題を解決できるわけがない。

 こどもを守るのは大人なのだ、それなのに大人はこどもを守らない、だから一向にこういう問題はなくならないし進展しない。そんな中で耐えている子は大勢いる、誰かが気づいてくれたら体が軽くなって楽になるかもしれない。SOSは出しているはずだ、それをちゃんと気づいてくれたらいい。

 学校という世界で生きるためには大人の力が必要だ。力を借りても解決しないときはあるけれどそれが意味は無かったとはならない。関心を持ってくれることが大切なのだ、無関心だからヤツらが放し飼いになってしまう、そして獲物を見つけて甚振ってしまう。

 一人でも多くの声を聞いてほしい、一人でも多く助けてほしい、そう僕は願う。

 ……長いこと考え込んでしまった。話を戻そう。

 明日香は腕時計を確認している、色はピンクでネオンカラーだ。今何時なのか確認したかったけど言ってくれた。

「今お昼休みだよ」

「よし行こう」

 僕は先を急ぐ。今しかない、この機会を逃してはいけない、皆に聞きたいことを聞こう。

 聞きたいことには優先順位があるだろう、しかしもうゆっくり選んでいる時間なんてない。口から出てきた言葉に賭けてみよう。何でもいい、情報さえ手に入れれば。

「ちょっと待って」

 しかし明日香は僕を引き止めた。僕は足を止めて明日香を見る。僕は先を急いでいるんだ、救世主の君はお世話になったけど今はそれどころじゃないんだ。一刻も早く確かめなければ、心の靄が退いてくれない。

「私とはここでお別れ、お昼は友達と約束したから」

「うん」

「じゃあね○○君、また会いましょう」

「うんまた」

 明日香は手を降って西館のほうへと歩いていった。

 僕の通う学校には学年ごとに校舎が違う。一年は西館、二年は東館、三年は本館だ。僕は三年で明日香も三年、何故西館のほうへ歩いて行ったんだろう。

 いやそんな事はどうでもいい、僕は僕のやるべきことをやらなければならない。

 本館へと足を進める。全校生徒が利用する生徒玄関は広くて綺麗で、ここも学年ごとに分けられていて、さらにそこからクラスごとに分けられている。

 僕のクラスのエリアまで歩く、そして僕の名前を探す。探すといっても僕は自分の名前がわからない、モザイクがかかっているからどうしても見れない。

 しかしそれが逆に探し物には便利で、モザイクがあるのはとても不自然だからすぐに見つけた。ネームプレートにしっかりとモザイクがある。他のネームプレートにはモザイクなんてない。

 ここが僕の靴箱、この中には僕の上履きがあるだろうけど果たして靴箱を開けることができるだろうか。鍵付きの扉みたいなものが付いている、これは盗難防止のためで昔は靴が剥き出しの状態だったらしい。

 急いでいるときは鍵を開けるのがめんどうで仕方ない、剥き出しだとすぐに靴から上履きに履き替えられて楽だっただろう。

 僕は靴箱の扉に手を伸ばす。しかしもう少しというところで手が止まる。

 さっき僕は公園でペットボトルを拾うことができなかった、その光景が頭に過ぎる。もし扉を開けて、上履きを掴むことができなかったらどうしよう。そうなったら心にダメージがくる。

 誰かが走ってくる足音が幾つも聞こえる。早くしないと売り切れちゃう、今日こそメロンパン食べるぞ、俺のオススメはチョコパン、とお腹を空かした声が響く。

 この学校には購買部がある。どれも安くて美味しくて、果たしてこの安さで儲かっているのだろうかとこっちが心配してしまうぐらいだ。因みに僕のオススメは季節の野菜のクリームが入っているパンだ、名称は忘れたけどとても美味しい。

 そんなことより上履きだ。触れたとしても、すり抜けたとしても、僕はこの現状を素直に受け止めてなるべく動揺せずに先に進むしかない。動揺している時間はないのだ、何もわからないままただ時間だけが進んだら不安になってしまうから。

 僕は恐る恐る手を伸ばした、少しずつ扉に手が近づく。

 そして見事に手は靴箱をすり抜けた。予想はしていた、しかしすり抜けないでほしかった。僕はがっくりしたけどそれも数秒で、すぐに前を見て進んだ。

 生徒玄関を出たら、広々とした吹き抜けのホールがある。全校生徒がここに集まることができるほどの広さで、集会などをここでやったりする。

 購買部はこの近くにある、だから人が大勢いた。ワイワイガヤガヤと騒がしい、話し声や足音が混ざってパンを誰よりも先にゲットする熱気に包まれている。

 購買部にはパンだけではなくておにぎりもあって、色々な種類があるからパンと共に人気がある。定番の昆布、鮭、ツナマヨ、男子に人気のチキンカレー風、デミグラスハンバーグ、変わり種のオクラ納豆トロロのネバネバ三兄弟、おにぎりとピザを一度に味わえるピザおにぎり、しゅうまいが丸ごと入った焼売おにぎりなどがある。

 日夜新メニューの研究をしていて、購買部のおばちゃん達はたまに新メニューを食べなさいと進めてくる。部活をしている生徒にとってはおやつ変わりになって良い、しかし味の保証はしていないので当たりか外れかは食べてみるまでわからない。

 そこで美味しかったものが新メニューとして購買部に並ぶのだ。購買部に並べられている物は選ばれし精鋭ともいえる。

 アイドルグープを真似て、購買部総選挙というイベントが季節ごとに開催される。このイベントの趣旨は、好きな商品に投票してランキングを付けるというものだ。ここで下から三つの物はメニューから外されてしまう。ワースト二位と三位は控えになって、最下位の物は追放されてもうメニューに戻ることはない。

 新メニューをとにかく沢山作っているから入れ替わりが激しいのだ。追放された物にもファンがいて、復活して下さいという声がある場合は何故追放となったのかを一緒に考えて一から作り直す。

 そこまでする必要があるのだろうか、という疑問は初めて総選挙を見たときに思った。しかしこうすることによって僕らに美味しいものを提供してくれている、おばちゃん達は僕らを喜ばせたいだけでそれは全く苦にはならなくてそこらへんにあるお店にも負けない物を作るというプロフェッショナル魂を垣間見えることができた。

 前に聞いたことがある、もう購買部より普通にお店出したほうがよくないですかと。しかしおばちゃんの一人はこう答えた、そんなことしたら貴方達の笑顔が遠くなっちゃうでしょと。なんていい人なんだおばちゃん、僕らのためにそこまで。

 僕は頭を振った。購買部より重要なことがある、それをまず確認しないといけない。

 ホールには人が大勢いる。今はお昼休み、誰かに声をかけてみよう。それが目的の一つだ、まず一つわからないことをどうにかしよう。


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