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僕の探し物  作者: ネガティブ
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明日香

 なぜ明日香が。

 僕には全くわからない。今日はわからないことが立て続けに起こるけれど、今回は特にわからない。

 金髪が話してくれて少し記憶が戻ってきた。明日香は僕のクラスメイトだ。成績が優秀で、高校は進学校に行くそうだ。可愛いから男子生徒からの評判もよくて、女子生徒からも受けは良い。

 テストがあるたびに負けないからねと言ってくる。だから僕は望むところだと受けて立つ。しかしテストが終わったら僕を避けるようになる。どうかしたのかなと気になるけれど、納得がいかない点数だったのかなと思うことにする。だから避けるのかな。

 明日香は生徒会に興味があった。だからどうしても生徒会の一員になりたくて、クラスメイトに選んでくれるように頼んでいた。他のクラスの生徒にも頼んでいた、後輩にも頼んでいた。

 生徒会の会員は皆の投票によって決められる。そこで投票数が上位だった者が生徒会の一員となれるのだ。学年ごとの投票と全学年の投票の二種類がある。学年ごとはその文字通り一年生は一年生、二年生は二年生、三年生は三年生だけを投票する。全学年の投票は、自分とは違う学年の生徒に投票しても良い仕組みだ。生徒会は選ばれた者達の場所、だから全学年の支持が必要なのだ。

 その二つを組み合わせて、そして開票される。数字もしっかり出るからシビアだ。ここまでしなくてもいいとは思うけど、リアルに少しでも近づけたいという校長先生の考えがあるからだ。学校を卒業して、社会に出たならそこは生き残るために日々戦う場所になる。厳しい現実、理不尽な世界、納得できない問題、様々な壁が行く手を阻み苦しめる。それの練習が生徒会選挙らしい。

 生徒会選挙には誰でも立候補できる。立候補したら公約がいる、自分が生徒会に入ったら何をしたいのかどうしたいのかそれらを有権者に訴える。滅茶苦茶なモノもある、堅苦しいモノもある、それはできないだろうというモノもある、現実味があるモノもある。多種多様なモノで溢れて、これらは全部キラキラしていて宝石みたいに綺麗だ。これらが全部採用されたら良いのにと思う時がある。

 しかしそんな事はできない。選ばれないと何もできない、選ばれないと何も力は無い、選ばれないと意味がない。

 誰でも立候補オッケーとはいっているけど、自分の人気は学校にいれば何となくわかってしまう。だから初めから人気がない人にはとても難しいのだ。立候補しても恥ずかしいだけ、選ばれることは無いといってもいいぐらいだ。だからといって立候補する人が少ないのかといわれればそうではない。一からのスタートで頑張る人もいる、強い信念をもって、学校をよくするために。

 生徒がそこまで考えなくてもいい、頑張らなくてもいい、他校の友達に言われたことがあった。学校を良くするのも悪くするのもそれは生徒じゃなくて大人、先生たちの役目であって生徒は関係ない。だって生徒がいなきゃ学校は成り立たないでしょ、だからお客様なわけ、そのお客様により良い学園生活を送ってもらうために質の高いモノを提供するのは当たり前。お客様は神様、お客様には最高のサービスを、お客様に対して失礼があったらそんなヤツはいらない。そう言っていた他校の友達の言い分はわかる、しかしそれは何だか偉そうで子供っぽかった。

 いくらお客様であってもやっていい事とやってはいけない事ぐらいはわかってほしい、それが他校の友達にはわかっていないように見えた。お客様なんだから何をやっても許される、お客様の命令は絶対だ、そういう偉そうな声が今にも聞こえてきそうだ。その様はまるで駄々をこねている子供のようだ。

 頷けるところもある、それは学校をよくするのは先生だということ。生徒はいつまでも学校にはいない、卒業していなくなる。だから生徒にとって学校は少しだけ通う場所なのだ。その少しだけの場所には色んなモノが待っている。泣いたり笑ったり、良いことも嫌なことも、そうやって少しずつ大人になっていく準備をする。少ししかいられない、それが逆に魅力的に見える。

 だからなのか、それで学校を良くしたいと思ったのか、それはよくわからないけれど僕は生徒会に興味をもった。自分の人気はイマイチわからなかった、人気が有るのか無いのか。しかしそんなのはどうでもよかった、僕が立候補したのは姉も昔そうしたからだ。僕は姉みたいに完璧になりたい、それなら姉がやった事を辿れば近づけるはずだ。そう思って立候補した。

 そして投票の結果僕は選ばれた、選ばれた事が信じられなくて嬉しかった。僕と同じぐらいクラスメイトが喜んだ、友達が喜んだ、担任も喜んだ、部活の後輩も喜んだ。

 僕はそうして生徒会の一員になって、学校をよりよくするためにつとめている。学校を良くするのも悪くするのもそれは生徒じゃなくて大人だ、他校の友達の言葉がよぎる。しかし僕は頭を振って振り払う。大人だけに任していたら、僕達生徒は大人の言う事にただ従っているだけになってしまう、それだけは嫌なんだ。与えられたモノをただこなしていく、そんなのまるでロボットみたいじゃないか。スイッチ一つで動くのは嫌だ、僕達には心がある個性がある一人一人違う。

 生徒会は生徒のための組織。生徒による生徒のための生徒のことを一番に考える。僕はその一員だ、そして明日香も。

「明日香は君に何をしたの?」

「さっきもちょっと言ったけど、俺と新井先生の事がバレてその事に対して学校中に言いふらすと言ってきた。立場が悪い今どんな手段でも使うと。だからお前たち二人は命令に従うしかないと」

「……それってつまり」

「脅されていたってことかな」

「そんな」

「でも従うしかなかった。明日香は従わせるしかなかった」

「どういうこと?」

「そっかお前はあんまり思い出せてないもんな」

「思い出せていたら苦労はしないんだけどな」

「ここまででわからない事はある? 一つずつ片付けていこう」

 金髪はニッと笑った。その笑顔はアイドルのようだった。

「何故明日香は二人を脅したの?」

「それかー」

「言いにくかったらいいけど」

「いやそうじゃないんだ、明日香が何故俺たちを脅したのかは俺もまだ思い出せていない」

「思い出したんじゃないの?」

「少し思い出しただけです」

「じゃあ何もわからないってことか」

「そうかな、お前も何か思い出したんじゃないの?」

「僕も……何か……」

 明日香が生徒会にいたこと、明日香が会長になりたがっていたこと、会長は僕がなるところだったけど明日香に譲ったこと。

 ここからわかるのは明日香は学校のことをよく考えていた、そのためには会長になったほうが手段としては早かった。こんなもんだろうか。

「明日香は生徒会にいて、学校の事をよく考えていた」

「よく考えていたって?」

「会長になりたがっていた。お願いだから譲ってくれと頼まれた、何回も何回も。頭も下げられた、何回も何回も」

「……」

 金髪が腕を組んで何かを考え出した。僕の言葉に何か重要なことがあったのだろうか。

「どうしたの、何か思い出したの」

「……まあね」

「えっ本当に?」

「うん本当に」

「それでその思い出した事とはいったい」

「俺と新井先生は何もなかった、恋愛的なやつも生徒と先生の禁断のなんとかも無い」

「嘘だ」

「だから嘘じゃねーよ」

「それは本当だと思っていた」

「お前漫画とかアニメの見すぎだよ。俺と新井先生はそんなことできないって」

「何で?」

「親戚だから」

 そして金髪はこう続けた。いい加減不良やめなさいと怒られていたところを、運悪く明日香に見つかってしまったのだと。

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