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僕の探し物  作者: ネガティブ
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夕方の学校

「他に何かわかった事はある?」

「あるよ、一人にされて寂しいとか女の子をジロジロ見ても怒られないとか授業中に教卓に乗ってギャグをやっても誰も笑わないとか」

「……」

「なにその顔、とても不満そう」

「遊んでいたの?」

「遊んでねーよ、この世を彷徨っていたんだよ。こんな体験滅多にできないだろ、やろうと思ってできる事じゃないからさ」

「……あっそう」

 僕は立ち上がった。呆れて何も言いたくない。金髪を少し見直したのにこれではぶち壊しだ。いや本来の姿に戻ったということなのか。

「冷たい態度だな、お前そんな態度じゃ女の子に嫌われるぞ。俺が男でよかったな嫌われなくて」

「女性は苦手です」

「そうなの? お前いつも喋ってたじゃん、仲良さそうだったけど」

 金髪の言うとおり僕はいつも女性、クラスメイトの女子と喋っていた。それはクラスメイトだから喋っていただけだ。それ以上の感情があるかどうかはまた別だ。

「とにかく苦手です」

「物体ないなー。女の子可愛いのに、そういうのわからないのかお前」

「可愛い、綺麗、そう思うよ僕も男だから」

「なんだそうなのか、てっきり興味がないと思っていた。お前いつも真面目ちゃんだろ、だから教科書が好きなのかなって」

「そんな事はないよ」

「お前も俺と同じなんだな、なんか急に親しみやすくなってきた」

 金髪が笑顔で手を自分の前へと出してきた。これは握手をしようってことなのかな。僕も手を自分の前に出した。すると金髪が握手してきた。

「もう俺達友達だな」

「そうだね。色々言いたいことはあるけど言わないでおくよ」

 とりあえずこれで正式に金髪と友達になれたわけだ。厄介事に巻き込まれなけりゃそれでいいんだけど何だか不安だ。学校一の不良だから、厄介が次から次へと襲ってきそうだ。

「よし、じゃあお前が消える前に頑張ろうか」

「うん」

 でもなんだかんだで頼りにはなりそうだ。一人よりは二人の方が心強い、一人よりは二人の方が謎を解き明かせそうだ。それに一人は寂しいし。

 僕と金髪は学校の敷地内へと入った。門を潜って花壇が両側に置かれた校舎までの道を歩く。

 花はどれも綺麗だ。ちゃんと手入れをしているから、ちゃんと愛情込めて育てているから綺麗なのだろう。僕の家の庭に咲く花も負けてはいない、母の愛がたっぷり花が吸収しているのだから。

 帰宅を急ぐ生徒とすれ違う、腕をぐんと伸ばして伸びをしている生徒とすれ違う、頭を掻きながら単語帳と睨めっこしている生徒とすれ違う。僕達はその流れの逆を行く、流れに逆らう。

 帰宅する生徒に、生徒玄関はさようならと言っているような気がする。また明日ねと言っているような気がする。この世を彷徨っている僕達には何と言うのだろうか。ここは君たちが来るべき所じゃないよなのか、そんな姿になってしまったけどここは君たちの学校なんだよなのか、お願いだから学校の七不思議を増やさないでねなのか、学校で起こったことは何でも知っているから何でもきいてねなのか。

 僕達は生徒玄関にやってきた。しかし何も聞こえない、いや先生の声が聞こえる生徒の声も聞こえる。でも僕が聞きたい声はそのどちらでもなくて、聞こえないまま通り過ぎてしまった。振り向いて耳をすましてみる。しかし聞こえない、聞こえてくるのは先生と生徒の声だけだ。それは当たり前だ玄関が喋る訳がない。でも声を聞きたかった、いつも出迎えてくれるから、お見送りしてくれるから。それに僕達生徒のことは何でも知っているような気がしたから。

 金髪に呼ばれた。急いで追いついた。

 夕方の学校は朝に見るものとは違う、昼に見るものとも違う。部活や生徒会で夕方になることは多々ある、だから夕方の学校が特別珍しくはない。なのにいつもと違ってそう見えてしまうのは僕が魂だからか。陽が落ちて暗くなったら今まで見えていたものも影で隠れてしまう、そうなってしまったら見つけ出すのは難しくなる。どうにか夕方の間に、陽が完全に落ち切るその前に一歩でも多く前進したい。

 ホールが見えてきた。広い空間だからここでダンスをやっている人や部活勧誘をしている人、文化祭の時はこの場所は一番人気で取り合いになる。今ここにいるのは先生と生徒数人だ。さっきの声はここから聞こえてきたのだろうか。

 生徒が先生と何かを話している。何を話しているのかわからないけど、生徒に囲まれている先生は黒髪でショートカットの新井先生だ。僕とは学年が違う先生だからあまり喋ったことはないけれど、生徒会会議ででいつも僕らを優しく見てくれている。

 生徒会は生徒による生徒のための組織だ、だから大人である先生の介入は認められない。しかし幾ら生徒による生徒のための組織でもここは学校だ、僕達こどもは大人の管理下にある。なので先生が一人、書記として参加している。勿論生徒会には生徒による書記係がちゃんとある。僕たちが何をやっているのか、それを大人に伝えるための書記なのだ。これじゃあ向こうに筒抜けだよと誰かが言う、生徒がそんなに信じられないのかなと誰かが言う。

 生徒によるモノであっても大人に管理されている。それは仕方ないことなのだ、僕達はまだ何者でもなくて中学生なのだから。何者かになったら、管理下から外れたら、その時は何でもできるのだろう。

 先生側が送り込んだ書記はスパイと呼ばれている。そこにいる新井先生はスパイだ、生徒に囲まれている新井先生は。僕はその言い方はあまり好きじゃない。何だかとても悪いことをしている人に見えてしまうから。新井先生はただ書記としての仕事をしているだけだ、僕らがどんな話し合いをしていても横から話に入ってこない、ただ黙々とノートにシャーペンを走らせている。

 あまりにも熱が入った場合、なかなか決まらない場合、解決しない場合、そんな時は大人である新井先生を頼るときもある。なかにはスパイなんかに頼りたくないというヤツがいる。しかし僕達だけじゃどうにもできない事がある、そんな時は大人に頼るしかない先生に頼るしかない。ここは学校だ、悩んだとき迷ったときは先生が助けになってくれる。僕らは守られているのだから。

 生徒会が決めた事がすんなり通るとも限らない。最終的に決めるのは校長先生なのだから。校長先生は時には見方になって、時には敵にもなる厄介な人物だ。決めた事に関して、これは中学生としてどうなのかこれは個性が発揮できて良いですねと評価する。校長先生のOKが出たら合格、NOなら不合格だ。OKなら喜びNOならしゅんとなる。どちらの結果になっても校長先生はよく頑張りましたと労ってくれる。

 この時は大人って優しい、先生は嫌なヤツじゃない、校長先生最高っすとテンションが上がる。それでもグチグチ言うヤツは素直じゃなくて可愛げがないのだ。

「新井先生だね」

「そうなの? 見たことはあるけど名前までは知らなかった」

「何で囲まれてるんだろう」

「さあわからない。もうちょっと近づいてみたら何話してんのかわかりそうだけど先急がない?」

「じゃあ近づいてみよう」

 僕と金髪は新井先生へと歩いていく。生徒が新井先生を囲んでいる。皆楽しそうだ、新井先生はちょっと迷惑そうな顔をしている。

 ホールの真ん中あたりからその声は聞こえてきた。

 ねえ先生彼氏できたってホントなの、噂ではイケメンって話だけどどうなの、何故今までバレなかったんだろう、もうキスしたのかぐらい教えてよ、新井先生は仕事が恋人だと思っていたよ。どうやら新井先生に彼氏ができたらしく、そのことに関して女子生徒が追求しているようだ。よく見たら女子生徒しかいない。新井先生は女子にモテる女性なのだ。

「先に進む?」

「そうだね。僕達には関係なさそうだし」


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