海の中 2
僕はゆっくりと沈んでいる。
重りは付けていない、荷物も何もない、制服姿でただ下へ下へと。
ここは海の中だ、上の方から眩しくて輝いている光が射し込んできている。
空も見えて、爽やかすぎるぐらいの青が広がっている。
魚が僕のそばを泳いでいる。種類はわからないけど、なんだか可愛い。
もう今は海から出れそうにない、さっきより体が重くなったような気がしたから。
それにちょっと泳いだら顔を外へ出すには遠い。
僕はこのまま光が届かない暗闇の世界へと沈むのだろうか。
息はできる、しかし体は動かない。さっきと同じだ。
再びここに戻ってきたからにはここには意味があるのだろう、僕にとって大切な意味が。
じゃあその大切な意味とは、それは何なのだろう。
アレだろうかコレだろうか、大切なことが多くて決まらない。
決まったとしてもそれが果たして本当に正しいのかどうかを考えてしまう。結局決まらない。
考えても答えは出ない、それなら答えが出るように動くしかない。
僕は手足を動かそうとする。しかし全く動かなくてその間も沈んでいる。
魚が僕の目の前を旋回して、僕からはなれていく。
僕といたら暗闇の世界へ行ってしまうような気がしたのだろうか。
空の色が変わっていた。青から灰色に。
太陽の光が弱まってきた。それは深く沈んだからではない、海の外が暗いのが原因だ。
あんなにいい天気だったのに今にも雨が降りそうな空だ。
灰色はみるみる広がっていって、そして雨が降ってきた。
太陽の光は消えて海へと落ちてくる雨へと変わった。
波紋が幾つもできている。いく重にも輪を描いて広がる波の模様が海を荒らす。
波ができて、それははじめは小さかったけど次第に大きくなっていった。
海上に船があったら揺れるだろう、海で人が泳いでいたら流されるだろう。
しかし海の中は平和で、相変わらず静かで、波の影響はない。
それほど深く沈んでいるのだろうか。
だんだん海の外が見えにくくなってきている、僕は沈み続けている。
もうこのままただ海の底へと沈むのだろうか。
眩しい光や、新鮮な空気や、綺麗な花々や、どこまでも広がる空は見れないのだろうか。
目が重たくなってきた、何だかとても眠たい。視界が暗くなる。
僕はどうなる……このまま海の底で、骨になるのか……。