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脱出

 ビーッーーーッ

 けたたましいサイレンが鳴り響く中、正城と理恵は3階の廊下をひた走っていた

 今のところ捕まらずにすんでいるが、包囲網を張られるのも時間の問題かもしれない

「おい、そっちに回り込め!」

「もっと応援を呼べ! 早く!」

 あちらこちらから足音や怒声が聞こえる

 「和也! どうすんの!」

「このままだと捕まるぞ」

 結構本気で焦っている声がインカムから漏れ出てくる

 走りながらだから息も荒い

「大丈夫だ。脱出方法は考えてある。ただちょっとばかりアグレッシブだから覚悟はしとけよ」

 和也は自信たっぷりといった声音で話す


 

「見つけたぞ! 追えー!」

 再びの逃走劇

「2人とも、そのまま全力ダッシュ

 突き当たりの角を曲がれ」

 いわれたとおり全力で逃げる2人

「で、この後どうすんだよ」

「おう。正面のガラスに向かって思いっきり突っ込め!」

「「はぁ!?」」

 和也は2人に飛び降りろといっているのだ。三階から

「いやいやいやいや。何で!」

「大丈夫。あなたたちは死なない。私が守るから」

「ふざけてる場合かぁーーーー!」

「いいから!」

 そんな言い争いをしている間にガラスはもう目の前

 そして………

「くそっ」


 ガッシャーーーン


 そう、だから僕らは空を飛んだのだ


 正城と理恵は空中に飛び出した


 パラパラとガラスの破片が舞う


 ―――ぎゃぁぁぁぁぁーーーー

 しかし、それも束の間2人の体にはGがはたらき

 まっさかさまに落ちる


 

  ボス

 ドフ

 2人はやわらかいマットのようなものに着地していた

 ブルルン

 そしてエンジンがかかる音

「おう、お帰り」

 運転席から和也が声をかける

 和也が考えた脱出作戦は、窓から飛び降りた2人を車で回収するというもの

 車は、天井と後部座席がないワゴン車

 本来後部座席があるべき場所にはマット――高跳び何かで使うやつが敷かれていた

 少々荒っぽい作戦だが正城はいうまでもなく、理恵だって身体能力は高い

 妥当な作戦といえるかもしれない

「っていうか、和也。免許持ってたの?」

「俺、17だぜ」

 無免許運転は高校生の特権である

「でもさ、和也ならもっとスマートな脱出方法も考えられたんじゃないの?」

 正城が訝しげな表情で言う

 確かに、もっとスマートな方法があったかもしれない

「いやいや、お前らにも無重力を体験してもらおうと思ってな」

「「………」」

 和也は意外と根に持つタイプだったりするのだ



 「それでは! black crow 仕事完遂と成功を祝して! 乾杯!」

「「「かんぱ~い」」」

 その日の夕刻、和也達は基地で祝杯をあげていた

 仕事も文句なく成功

 あとはこのデータを渡すだけである

「いや~よかった、よかった」

「ホント、ホント」

 テーブルの上には宅配ピザや唐揚げなど、様々な料理が並ぶ

 酒は飲まない

 別にこれは真面目とかそういうんじゃなくて事情があるのだ


 それにしても今回は本当によかったと思う

 無事成功したことももちろんだが、こんな大きな仕事をしたのは初めてなのだ

 みんな緊張したろう

 でも、やっぱりこいつらと何かやるのは楽しい

 俺たちはみんな同じ境遇であるがゆえかもしれないが、何か落ち着くのだ。こういう空気は

「どうしたの? 和也」

「日向ぼっこしてるおじいちゃんみたいな顔してるよ」

 ………俺はそんなに老けて見えるのだろうか、と、まあ

「いや、楽しいな。と思ってさ」

 俺の言葉に3人がにこやかにほほ笑む

 そういって新しいグレープフルーツジュースの缶を空け、流し込む

 うん。ほのかな甘みがあってうまい。……ん? 苦い?

 慌てて缶をみると


 「グレープフルーツサワー」


 「酒じゃねえかっ!」

 誰かが間違えて買ってきたのか……

 確か買い出しにいったのは、理恵と正城………

 ――振り向いた先にはいやにニヤニヤしたカップルがいた

「おい、由美。お前は絶対………」

 プシュ ゴクゴクゴク

 ああ、時すでに遅し

「プハー」

 由美が豪快に缶ジュース(チューハイ)を飲みほしていた

「お、おい由美?」

「な~に? 和也ぁ~」

 もうすでに完全に酔っぱらっている

 酒を飲まない理由は、由美の酒癖が滅茶苦茶悪いこと

 「ハッハッハッーー」

 もうキャラが崩壊している

 見ると頬を染め、目はトロンとし、体全体がやや赤みをおびている感じがする

 そんな由美はなんだかとても色っぽい

「へへっ和也。今押し倒したいって思っただろ」

 正城がニヤニヤしながらそういう

「バッ、そんなこと思ってるわけねーだろ!」

「うそうそ。和也~今なら何してもいいんだよ~」

 理恵も同様、ニヤニヤしながらそんなことをいう

「お、俺は別に……」

 そこで、ふと腰に違和感

 慌てて前を向くと

「!!」

 由美が和也にしだれかかってきている

「お、おい。由美ちょっと待って……ちょ、ちょっと、マジ、ヤバいって。た、助け……」

 その光景をみている例の2人は和也の助けを無視してひたすらニヤニヤしている

「くそっ。覚えてろよ……」

 しかたなく和也は自力で脱出を試みる

 腰にまわされている手をひきはが……せない!

 がっちりホールドされてしまっている

 それどころか由美は和也の胸に顔をうずめて来ていた

「お、おい。本気でヤバい………」

「へへへ~ 和也の匂いだぁ~」

「………オフッ」

 その台詞と満面の笑みは卑怯だと思った






 

今回は少し短くなってしまいました


話はまだ終わりません


まだひと悶着あるんですよ


よろしくお願いします

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