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行動

「フハハハハッ!地獄をみせてやるぜ!!」

 間違いがないようにいっておくと、これ、正城の台詞である

 正城は荒事になると、性格というか言動が少しおかしくなる

 ちらみに、面が割れないよう、目だし帽をかぶっているので、どう見ても強盗にしかみえない

 しかも、滅茶苦茶強いんだから相手も、訳が分からないだろう

「このヤロゥゥゥゥ!!」

 正城は、まず向かってきた奴の鳩尾に拳をめり込ませる

「ウグフッ」

 それだけで不良はもう立てない

「どうした。面倒だ。まとめてかかってこい」

『―――ウォォォォォォ!!』

 正城の挑発に乗った不良どもが一斉に襲い掛かってくる

 正城は正面から来た奴の拳をかわし、首筋に手刀をたたきこむ

 左右から襲ってきた相手にしゃがんでかわし、足払いをかける

 後頭部を狙って、振り下ろされたパイプ椅子を掴んで、不良ごと、投げ飛ばした

 まさによく言う、ちぎっては投げ、ちぎっては投げの状態である 

 パソコンの画面には、正城の前で次々に倒れていく不良どもが映っていた

「ハッハッハ!俺こそが正義だーー!」

 ………どう見ても悪役っすよ。あんた



 そんな戦闘のさ中、由美と理恵は廃ビルの角から裏口を覗き込んでいた

「どうする? 見張りがいるよ? 2人」

 インカムに由美から連絡が入る

 なるほどな。表があんな騒ぎなのに見張りが外れないのを見ると、大島の命令だな

 中々、頭もいいやつみたいだ

「しかたない。あの作戦で行こう」



 ガン、ガン

「!! 何だ! 誰かいるのか!」

 見張りは表の騒ぎを知っているので、警戒心を強めて廃ビルを壁伝いに歩き、角を曲がった

「何だ。誰もいないじゃないか」

 そう言って踵を返して歩きだそうとした瞬間、

 背後に人が立つ気配がした

「ガハッ」

 しかし、気付いた時にはもう遅い

 そこには不良の首筋にしっかりと手刀をたたきこんだ由美がいた

「お見事」

「まあね」

 屋根伝いにのびている雨どいにぶら下がって、敵を待ち伏せる

 こんなこと、由美の身体能力なしでは絶対に実現不可能だ

 そして、由美は足元にのびている不良の服を脱がし始めた



「よお、遅かったじゃねえか。どうかし―――」

 残りの見張りの男は最後まで言葉を発することはできなかった

 流れるような動作で、不良に変装した由美が、鳩尾に拳を打ち込んだのだ

「さっすがだね~ユ~ミン」

 そんなお気楽な台詞とともに理恵が茂みから顔を出す

 そして、理恵もその不良に変装する

 ………身長差は超厚底の靴で誤魔化したそうだ



 「「潜入、成功」」

「了解。由美と理恵の連携はこっちでとる

 由美は裏口入ってすぐの右の部屋。理恵は左に進んだつきあたりの奥の部屋から捜索開始」

「「了解」」

 2人は今、変装中だ。仮に部屋の中に誰かいても、探し物をしてるとかいって誤魔化すことができる



 「由美、次はすぐ左の角を曲がって右手の部屋だ

  理恵はその部屋の奥、もう一部屋あるから、そこを」

「「了解」」

 捜索開始から5分経過

 まだ例の財布は見つからない

「正城、どうだ

 まだいけそうか」

「ああ、まだ大丈夫だがあといいとこ10分か、15分か……

 まあ、こっちはなんとかする

 理恵と由美のサポート。しっかり頼むぞ」

「ああ、了解!」

 まだまだ、作戦は始まったばかりだ



 「ん、何が―――!?!」

「おい、どうした由美!」

 突然聞こえてくる由美の悲鳴のようなもの

「何だ! なにがあった

 理恵、廊下に出て左に走って3番目の右手の部屋に入ってくれ」

「了解」

 理恵もただならぬ気配を感じ、走り出す



 「………あ~和也」

「どうした、大丈夫か」

 インカムから聞こえてきた理恵の声は拍子抜けしたものだった

「うん。まあ。えっとね~一応説明しておくとね~

 情事の最中だったんだよ」

「………え。あ、あ~そういうこと

 了解」

 どうやら、事の最中に出くわしたらしい

 こんな真昼間からやってるのもどうかと思うが……

 しかも、こんな騒ぎが起きているというのに

 由美はあんまり免疫がないからな、そっち方面に

「でも、今ので何か不審がられちゃったみたいだよ」

「分かった。引き続き、作戦を続行する」

 



 捜索開始から20分

 そろそろ正城の体力もやばくなってきたころだ

「和也! 鍵付きの部屋があったよ

 しかも、12桁」

 インカムから理恵の声が響いてくる

 12桁とはまた、しっかりした防犯対策だな

「どうする? 開ける?」

 心なしか理恵の声には期待感が入っているような気がする

 まあ、この手の鍵開けは理恵の十八番だからな

「いや、その部屋には多分ない

 その部屋の向かい側の部屋を探索してくれ」

「了解」

 理恵は落胆混じりの返事を返すと、部屋に入っていった



「和也、あったよ。間違いない

 依頼の財布だよ」

 理恵がその部屋に入ってから、財布が見つかるまでそれほど時間はかからなかった

「よし

 全員に通達する。今すぐ撤退せよ」

「「「了解」」」

 ちなみに正城についてはイヤホン型のマイクをつけている



 「ふん、今日はこの辺にしといてやる

  月夜の晩にまた会おう!」

 言葉とは裏腹に正城は割とフラフラである

 そして、一目散にダッシュ

 正面の入口から飛び出ると瞬く間に夜の闇に溶け込んだ



 由美と理恵はすでに変装をといている

 仮に変装していても、このタイミングで外にでようとすれば、絶対に疑われる

 強行突破しか道はない

 物陰から向こう側を伺うと、頭が光った男が廊下で煙草をふかしている

 由美と理恵はうなずき合うと、さっき探索した部屋の1つに仕掛けを施した

 その部屋は物置なのか、2畳ほどしかない

 そして理恵は物陰から音をたてる

 コンコン

「ん、なんだ。誰かいんのか? さっきの仲間か?」

 はげ頭が近付いてくる由美はタイミングを計って例の部屋に入る

「ったくなんなん―――」

「おやすみなさい」

 ドサ

 由美の台詞と同時にはげ頭が一瞬で気絶した

 部屋には、よく病院で麻酔に使われる笑気ガスが満ちていた

「ふう」

 部屋を出た由美はガス防御の特殊なマスクをはずす

「これで、1人」

「ええ、先を急ぎましょ」

 


 2人目の男は長めの廊下をいったりきたりしているロン毛の男だった

 由美と理恵は廊下に広告をしいておく

 男が戻ってくると………

 ツルッ 

 ガン

「っ痛」

 ドフ

 由美は男がひっくり返ったところにすかさずボディーブローをたたきこんだ

 ただの広告ならこんなに滑ることはない

 広告の下にはさっきみつけたサラダ油をたっぷりつけたラップがひいてあった

「………こんな子供騙しにひっかかるなんて―――頭悪いとしか思えないわね」

「手厳しいねえ~ま、ユーミンは頭のいい男が好きだもんね」

「!な、なんのことよ……ん、いいから先急ぐわよ」

「はいはい」

 理恵は呆れとも、感心ともつかない顔で走り出した



 「ラストは2人か。めんどくさいわねえ」

「ま、あたしとユーミンなら余裕でしょ」

「ん、あたしに合わせて」

「了解」

「3、2、1」

 バッ

 まず理恵が物陰から飛び出す

 出口まで来たのはいいのだが見張りは2人

 由美たちは強行突破をもくろむ

 2人の男の内、1人が走ってくる

 理恵はその男の足元めがけてスライディングをかます

 文字通り、足元をすくわれた男は体が浮き、前のめりになる

 由美がすかさずその男に右ストレートを放つ

「クリーンヒット!」

 見事、拳が顔面にストライクし、男が派手にふっとぶ

 しかし、もう1人の男は由美の攻撃後の隙を見逃さなかった

 金属バットを振り上げ、襲い掛かってくる

「やばっ」

 バットが由美の頭寸前に迫る―――

 由美はとっさに頭をかばい、目をつぶる

 しかし、いつまでたっても来るべき衝撃がこない

 ゆっくりと目を開けると、男の体がゆっくりと崩れていった

 体からはプスプスと煙が出ている

 少し焦げくさい

 そこでは、男の体にスタンガンを押しつけた理恵が由美にピースサインを向けていた



 「black crow」のメンバーは作戦を終了し、基地に戻って来ていた

「いやー成功成功」

「これで一件落着ね」

「ふっ、ま、当然の結果だ」

「正城、もうキャラ直せ」

 作戦は成功

 依頼のものは無事、手に入れたし、言うことなしの内容である

 和也は全員分の紅茶をいれ、ソファに腰掛けた

「はあ、今日は疲れたよ………」

 ようやくキャラが直った正城はソファに倒れこんでいる

「おう、お疲れ

 みんなもな

 今日はこれで解散。明日、祝杯でもあげよう

 理恵、今日は正城を送ってやれ」

「あいあいさ~

 よしっ、帰ろうー!正城」

「………襲うなよ」

「……あっはっは~………まっさか~」

「返事が遅れたぞ」

 まあ、大丈夫だろ

「いいっていってんだろ」

「まあまあ、よいではないか。よいではないか」

 ………大丈夫なはず

 そこでは理恵が無理やり正城に肩をかそうとしていた

 そんなじゃれあいをしながら、2人は出ていった

 


 そんな様子を見送った和也はソファに座りなおし、大きなため息を吐いた

「………どうしたの。浮かない顔して」

 最初は黙っていた由美だったが、たまりかねたように尋ねてきた

 別に不満顔はしなかったつもりだが………由美にはばれてしまったらしい

「いや、別に……何でもないよ。依頼も無事に成功したしね」

 そう言う和也は言葉とは裏腹に、納得のいかないような顔をしている

「はぁ……あんたのそういうところはねぇ……

 何か思ってることがあったら、いってよ

 私は、……いや、私たちは仲間でしょ」

 由美が苦笑いしながら、それでも暖かい声でそういってくれる

「………そうだな。ありがとう」

「それで? 何がきになってるのよ」

「ああ、なんかモヤモヤしてんだよ

 これで、終わりではないような……ここから始まるような……」

 和也は途切れ途切れにそう言った

「………」

 由美は今の話を聞いて、考えているのだろうか

 何も言わない

 まあ、考えていても仕方ないか

「考えていても仕方ないんじゃない?

 それに、何か起きても、和也がなんとかしてくれるでしょ」

 由美の自信に満ちたような声は、微笑みとともに和也にかけられた

 自分が思っていたことと、同じことを考えた由美の顔を見、しばらく唖然としていた和也だったが、フッと小さく笑う

「そうだな。任せとけ」

「フフフッ」

「ハハッ」

 そう言って由美と笑い合うと、和也は少し気分が落ち着いた感覚がした

 和也はティーカップに残っていた紅茶を一気に流し込んだ


 




 


 

 

 


 

今回は少し長くなってしまって申し訳ありません(汗)


とりあえず、ひと段落ですが、第一章はまだ続きます


暇なときにでも、読んでやってください

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