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聞き込み(デート)?

 「うつむいてちゃ、空にかかった虹にも気付かないよ」

これはチャールズ・チャップリンの言葉だったか?

 まあ、ようするにどんなときも前を向いて、明るく生きろってことなんだろうな

 時刻は午前10時。昨日の夜から降り出した雨は夜明けとともに止み、空にはきれいな虹がかかっていた。

 チャップリンじゃないが和也が虹に気付いたのは、待ち合わせ場所でふと上を見上げたからである

 由美と待ち合わせしたのは午前10時。場所は駅前。和也はその15分前からここで駅前をせかせかと通り過ぎる人波をなんの気なしに眺めていた

 


 聞き込みというのは、普通一人でやるもんだ。そのほうが範囲を広げることができるし、有益な情報発見にも繋がる

 それでも、由美が和也に同伴を提案し、和也がそれを了承したのは2人の気持ちによるところが大きい。まあ、この近くで起こった事の聞き込みだから多少、人員が削られても問題ないだろう。

 和也は誰に言うわけでもなしに、そんなことを考えていた

「ごめん、待った?」

 パタパタという音に振り返ると、息を軽くきらせた由美がそこにいた

 ヤバい、これはヤバい

 いろんな意味でもう、ヤバい

 由美は紫色のワンピースに、茶色のロングブーツという組み合わせ

 前にもいった通り、由美はかなり可愛い

 そんな可愛さが逆に服を可愛く見せていた

 道具によって素材が生きるというのはよくあるが、素材によって道具が生きるというのは中々ない

 しかしどうだろうか。こんな状態の由美を連れて歩いたら道行く人は和也と由美を恋人同士としてみるだろう。それはまあ、和也としても満更でもない。でも、聞き込みは非常にやりづらい

 以前にもあったことだが、スカウトが山ほど釣れるだろう

 まあ、いい。ここでうだうだ考えていても仕方ない

「いや、今きたとこだ」

 そんな当たり障りのない返答をすると

 ―――少し驚いた顔をしているな。何だ?そして今度は急にモジモジし始めたぞ

「あ、あのさ。この服、なんか変かな」

 そんなことを上目遣いできいてくる。うっ、か、可愛い

「い、いや。かなり似合ってる。文句なし」

「そ、そっか」

 和也が正直にいうと、由美はホッとしたような表情をして小さく、行こっか。といった

 


 ここらへん一体は竹園高校があることもあって、住宅街や商店街が広がっている

 今日は休日ということもあって、小学生から大学生、家族連れ、カップルなど、色々な人をみかける

 やはり、道ですれ違う人はみんな一様に振り返る。と、同時にやってくる羨望と嫉妬の視線。

 いうまでもなく、前者が由美へ、後者が和也へのものである

 事が起こった繁華街はここから少し離れたところにあるが、まあとりあえずこの辺でやってみようということになった

 商店街を出て、一本細い路地に入るとさっそくでくわしてしまった

「オラ、金だせや」

「たんまり持ってんだろ、お坊ちゃん」

「へへへ」

 こんな真昼間からやってんだなカツアゲ

 不良っぽい2人が竹園校生をいたぶっている

 2人がこちらに気付いた

「フュー可愛い姉ちゃんだ。連れの男は彼氏か? 冴えない顔してんなあ」

「よし、と―――」

 りあえず落ち着いて被害者を逃がして話をしよう。手はだすなよ。と続くはずだった和也の言葉は3文字しか間に合わなかった

 和也の横から猛然と走りだした由美は和也が気付いた時、すでに竹園校生の胸倉をつかんでいた男を蹴り飛ばしていた

 いわなかったが、由美はかなり正義感が強い。この世のありとあらゆる悪を許せないのだろうか

 っつうかやりすぎだろいくらなんでも。明らかにあの不良、飛んだぞ。空を。しかも胸倉を掴まれていた竹園校生もいっしょに

 あ、2人そろって後頭部をぶつけたらしいな

「恥を知れ!弱いものから金をむしって、楽しいか!そんなことをするやつは人間のク―――」

「はい、ストップ」

 和也は慌てて由美の口をふさいだ

「ンガー、ンアガー」

 本人はまだなにか言いたそうだったが

「おい、なにしやがんだ、この」

 しばし呆然としていたもう1人の不良がやっと我を取り戻していた

「まあまあ、怒んのはもっともだけど。許してやってくれ。ちょっとしたミスなんだ」

「ミスってなんだ! ミスって! 今、俺のダチがきれいな弧を描いて飛んでったじゃねえか!」

「こいつ、今日ワンピース着てるからさ、あんまり足あげないようにして蹴ったら思いのほか蹴られた体がうきあがっちゃったんだ。ごめん」

「いきなり、蹴ること自体問題だろ!っていうか、人間のクズっていいかけたぞ、この女!」

「人間のク、までしかいってないだろ。その後に、こう続くんだ。人間のクオリティが高い!」

「急に褒められた!いやいや、それ無理あるだろ!」

「うつむいてちゃ、空にかかった虹にも気付かないよ」

「遂に、誤魔化した~~~!!」

 そんなことを叫んだ不良はふっ飛ばされた仲間を担いで、逃げる

「あ、ちょっと待っ、話を………」

「覚えてやがれ~~~変人カップル!」

 逃げられてしまった。なんかノリのいいやつだったな

 振り返ると飛ばされた竹園校生に由美が話しかけている

「ほら、カツアゲされそうになったくらいで泣かない」

 いや、多分泣いてるのは、由美に飛ばされたからだぜ。その証拠に由美が一歩近づくごとに尻をついたまま後ずさりしている。

「ほら、立てる?怪我はない?取られたものはないわよね?」

 由美は面倒見のいいところがあるからな。美点だ

 でも、それは逆効果だ

「じ、じゃあ僕はこ、これで」

「「あ………」」

 その竹園校生は脱兎のごとく逃げ出した

 ま、当然か

「由美、とりあえずどっか喫茶店でも入って落ち着こうか」

 由美は結構怒っていた



 「何よ!変態カップルって!何よ!お礼もいわないで!」

「いいから落ち着け。それと変態とはいわれてない」

 和也と由美は近くの喫茶店に入るとちょっと早めの昼食をとることにした

 この時間はやっぱり家族ずれが多いな

 由美はさっきから大分、ご立腹である。怒った顔も可愛いなんていったら殴られるだろうか

 聞き込みの一発目が空振りに終わり、なんとなく出鼻を挫かれたかんじである

「由美~。駄目だ。いきなり手を出しちゃ」

「手は出してない。出したのは足よ」

 小学生並みの言い訳をした由美に苦笑を返し、和也はなおも言葉を続ける

「あれだと、助けられた側もプライドずたぼろだ。それに、あいつらの中の由美のイメージが暴力女になっちまうぞ。あんなやつらだけど、誤解されたイメージもたれんのはやだろ」

「そりゃあそうだけど……あいつら、和也のこと悪く言ったんだもん」

「ん?何か言った?」

 後半がよく聞こえなかった

「な、なんでもないわよ!」

「そ、そうか」

 こころなしか、頬がほんのり赤くなっている気がするが……

 まあ、いいか。和也の言ったことはどうやら理解してもらえたようだ

「すいませ~ん。イチゴパフェ、ひとつ」

「えっ和也、甘いものあまり得意じゃないってなかったっけ?」

「ああ、奢ってやる。イチゴパフェ好きだろ?食って機嫌直してくれよ?」

 苦笑混じりに和也がいうと

 プイ

 由美は目をつぶってそっぽをむいてしまう

 だが和也は由美のこういうしぐさは嬉しい気持ちをかくしているものだと知っている

 そして由美はこういう和也の気遣いに弱いのだ



 2人はそろって喫茶店をでたあと、住宅街に入って行った

 住宅街の中にある、公園などでは主婦の方々が子供を遊ばせてその近くで井戸端会議をしていることが多い

 和也と由美は公園を回って、聞き込みを続ける

 竹園校生がカツアゲされているところをみたことがないか、きいたことがないか。写真をみせて、この財布に見覚えがないか。など

 ………まあ、話を聞くたびに

「休日にデートかい。若いっていいわねえ」

「あら、彼女、べっぴんさんだねえ。兄ちゃん手放しちゃダメだよ」

 とからかわれるたびに和也は苦笑を返し、由美は真っ赤になっていたが

 


 ともあれ、中々目ぼしい情報はみつからない

 今回は事が事だけに、主婦に聞いてもそんなに有益な情報はみつからないかもしれない。

 そう思った和也達は、商店街近くの廃ビルに来ていた。

 このビルは一階部分が駐車場になっていたらしく、がらんとしていていくつもの柱がのびていた

 そこで、再び遭遇した

 カツアゲの現場

 これはついているのか、ついていないのか

 ん? でも何か違和感

 3人の不良が1人の竹園高校ではない高校生に、金を強要している

 が、違和感の正体。主に、実行しているのは2人で、あとの一人は……動揺している?

 こころなしか、顔がこわばっている

 この状況で不良がおびえる理由が分からない

「どうする、和也? とりあえず、介入しよっか?」

 由美がそう聞いてくるが……和也は―――

「いや、俺に考えがある」

 和也は唇の端を釣り上げ、ニヤリと笑った

 


 


中々、怪盗ぽくなりませんね(汗)


情報収集は次回までです

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