9話目 インフルエンザ
今回は人との交流です。
ここまで交流できるようになるまでも少し話的に考えていたのですが、とりあえず一気に1~2ヶ月進めた感じの時間軸にしました。
それにちょっと話が強引なところもあります。
うちとける過程の話はいずれ投稿しようと思います。
前回より数十日後、タスクin村の定期市場
この村に定期的に来るようになって5回目だ。
昼食時が終わって少ししてからだった、
「タスクさん、いつも思っていたのですがこの木の実とかはどこから取ってきてるんだい?」
村人の女性から声をかけられたのは、40歳くらいだろうか現地としては恰幅がよく見える。
ここは村の中央にある広場で、10日に一回開かれている市場と言うかフリーマーケットのようなところだ。
その市場が開かれるのに合わせて村に1~3日訪れ、露天を出していた。
「これはマシュリーさん、どこと言われても森に入って取っているのですよ」
マシュリーさんはこの村では年配のほうだ、村長夫妻の次に年配といっていい。
「でもこの木の実ってこの近辺の森の奥にしか無いって聞いたことがあるんだよ」
そうだったのか?ちょっとあせった。
「そうなんですか、でも現にここに他で取って来たものがあるじゃないですか」
動揺を隠しながら言った。
「そうだねー、まあその話を聞いたのも何年も前だからね、あんまりあてにできないかね」
「そうですね、あはは」
「それはそうとタスクさん、薬ってないのかね?最近風邪が流行ってるみたいで寝込んでる人が多いのさね」
「そうなんですか、わかりました、たしかエリアスが何か持ってたはずなので聞いてきますよ」
「いつも仲良しでうらやましいよ」
「そうですか?」
そんな会話をしながら護衛として連れ来ているアポロの部下(まあ、俺の部下でもあるわけだけど)に店番を任せて宿屋に向かった。
宿屋に戻りエリアスに声をかけた。
「エリアス、薬って持ってきていたと思うがどこだったかな」
「薬ですか、ここにありますよ」
そういって荷物箱の一つをさして教えてくれた。
「司令、薬ってどうするんですか?」
「ああ、マシュリーさんに頼まれて薬はないかってな」
「そうなんですか、判りました私も一緒に行きます」
「いや、薬だけ渡してもらえれば大丈夫だよ」
「そうはいかないです、いくつかの薬の現地人への影響は解析済みなのですがまだ全部は調べ終わってないんですよ」
「そうなのか?そりゃ一緒に来てもらったほうがいいな、頼む!」
「はい」
エリアスが箱を抱えて俺の後ろについて部屋を出て行った。
「マシュリーさん、薬もって来ましたよ」
エリアスが声をかけた。
「ありがとう、それでどんな薬があるんだい?」
「エリアス、説明してあげてくれ」
「はい、わかりました。マシュリーさん症状はどうなんですか?」
少し思い出しているようだ。
「熱がかなり高くて、それと咳が止まらない、長い人で4日以上続いている人もいたよ」
「4日もですか」
「そうだよ」
エリアスは少し考えているようだ。
「熱はどれくらいですか?」
「どれくらいって言われてもねー」
体温を測る習慣がないのかもしれない。
「わかりました、一度見せてもらえますか」
「そうかい、でも何人もいるんだよ?」
「そうなんですか?わかりました人数が多いのでしたら急いだ方がいいでしょう」
「わかったそれじゃ早速ついてきてちょうだい」
「司令、そういう訳でちょっと行ってきますね」
「わかった、あとでどうだったか教えてくれ」
「わかりました」
エリアスとマシュリーさんは俺から急ぎ足で離れていった。
エリアスside
何人もいるって、何が原因かしら?
「何人くらいいるんですか?」
歩きながらマシュリーさんに声をかけた。
「そうさね、子供から大人まで全部で30人以上いたと思うよ」
歩く早さを変えずに答えてくれた。
「けっこういますね、何日くらい前からなんですか?」
「あんたらがこの前来て、帰っていった4・5日後だったと思うよ」
「そうですか、他に気がついたことがあったら教えてください、どんな小さなことでもいいですから」
「そうかい?あとどんなのがあったかね、えーーっと」
その後症状についていくつか思い出してもらい出来るだけ詳しく聞くことができた。
「カリネ、ちょっといいかい」
寝込んでる人がいる家の前まできてマシュリーさんがドアを叩きながら言った。
少しして中から30歳前後に見える女性が出てきた。
「マシュリーさんいらっしゃい、どうしたんです?」
疲れた感じがする、看病疲れだろうか。
「薬を持ってる人がいてね、ガレリアに飲ませてあげたいと思ってきたんだよ」
「そうなんですか?」
嬉しそうな声をあげた、そして私に向かって「ありがとうございます」と声をかけてきた。
「お子さんを見せていただけますか?」
「はい、どうぞこちらです」
力の無い返事だ、案内されて家の奥に入っていった。
女の子がベットに寝かされていた、年は10歳を越えたくらいだろうか、目はうっすらと開けているが見た目にも朦朧としている感じがする。
健康なときに見れば愛らしい印象を受けただろう。かわいらしいのがわかる。
「ガレリア、薬をもってきたよ」
「お母さん?薬?」
声に力がない。
「見せてくださいね」
そう言ってカバンの中から小型銃のような形をした簡易診断装置を手に持ち、女の子に向けて身体スキャンをしていく。
マシュリーさんとカリネさんは少し不思議な表情をしている。
「なんだいあれ?」
「私が解るわけないじゃないですか」小声でそんな会話が聞こえてくる。
スキャンをし終わり10秒ほどで診断結果が出た、インフルエンザだ。
「この病気でしたら効く薬があります、ちょっと待ってください」
適合調査が済んでる薬でよかった、そう思いながらカバンの中からインフルエンザ特効薬を出した。
「あるんだね、よかった」「治るのですか?」マシュリーさんとカリネさんが同時に言ってくる。
「この薬です、水と一緒に飲んでください」
小さな丸い錠剤を渡した、
(指令にはナノマシンの補助があるから効きが早いだろうけど、ここの人たちには補助がないから効くのに少し時間がかかるかな?それでも半日もあれば効くはずだ)
カリネさんは薬をお子さんに飲ませながら「治るんですか?」
さっきと同じことを聞いてくる。
「明日の朝には熱は下がってると思います」
「よかった・・・ありがとうございます」
感謝仕切りだ。
「他にも居るんですよね、次の方のところに行きましょう」
「わかったよ、じゃあカリネ、村中回るからこのへんで」
「はい、ありがとうございます」
家の外に出てマシュリーさんに聞いてみた。
「他の方も同じ症状なんですか?」
「そうだね、同じ感じだったと思う」
「わかりました、急ぎましょう」
その後村中を回り全員を見て回った、インフルエンザだった。
帰り道でマシュリーさんから、
「みんなのところで最初に使っていたあの手に持っていた物、なんだい?」
簡易診断装置のことかな?
「あれですか、患者さんの病気を調べる物ですよ」
「?魔道具なのかい?」
(魔道具?なんだろ?よくわかんないけどこんなはずれの村の人でも知ってる物なんだから一般に結構知られている物なのかもしれない、適当に話を合わせた方がいいかな)
「えっと、そうです、その魔道具ってものです」
「やっぱりそうだったのかい、タスクさんはあんなのも扱っているのかい?」
「扱っているというか、たまたまです」
(魔道具と言うものがどういうものか解らないから司令がたまたま持っていたってことにしてしまおう、もし返事が出来ないレベルまで話がいったらあれだけしか無いってことにしてしまおう、それにできる範囲で情報も収集しないと)
「しっかし、魔道具って便利だよね、病気がわかったりするんだからね、他にはどんなのあるんだい?」
「どんなのがあるって言われても、あれしか見たことがないので・・・・」
「そうかい、あんなの持ってるんだから他にも色々扱ったことがあったのかと思ったよ。魔道具って遠くと話をしたり、壁の向こうを見たり、力が強くなったり、色々あるって言うだろ?」
「そうなんですか?」
「そっか、あれしか見たことが無かったんだね、昔帝都に行ったときに早く走ることのできる指輪の魔道具を見たことがあってそのときの事を思い出しちまったよ」
(魔道具って色々なものがあるのかな、話しから推測できるのは色々な形の物があり、色々な使い道があり、結構高価な物のようだ)
マシュリーさんはまだ話してくる。
「あんたらみたいな人がこの村に居てくれたらいいのにね、どうだいここに住んでみたら」
「そう言ってもらうのは嬉しいですね、タスクさんに話しておきますよ」
「言っておいてくれよ」
マシュリーさんは宿屋まで送ってくれてそこで別れた。
その夜は司令に一日の状況報告を行った。
村での交流は次回かその次くらいまで続きます。
その後少し宇宙での話しにしようと思っています。
これを書くにあたり、以前から宇宙と地上の行き来があるようにしたいと思っていました。
誰でも真剣に何かに取り組んでいる姿と、休息のときのやすらぎ、そんな中でのハプニング、そんな物語に出来ればなと思っていました。
まあ、書いてるうちになんか変わってきたかな?となるかもしれませんが。