お嬢様は庶民派
コバタ村、冬始の月19日 夜 セフォリア
「あら、これはお久しぶりです。たしかギフロさんでしたでしょうか。お元気にされてましたか?」
屋敷に戻ると以前みえられた冒険者の方がおいでで驚きました。
「お久しぶりです。ありがとうございます。今日は冒険者ギルドの頭領も一緒にお邪魔させてもらっていまして」
そう言って隣の男性を紹介してくれました。
セバスがコバタ村に来ているのにも驚きました。
夕食を一緒にと言うことなので、詳しくはその席でと言うことでした。
夕食の席で頭領の方はタスク様のことについて聞いてきました。
「セフォリア様は、治癒士のタスクさんと親しいとお聞きしましたが」
食事をしながら、丁寧に話をしてきました。
「はい、親しくさせていただいています」他の人から親しいと言われるとちょっとだけ嬉しくなります。
「実はそのタスクさんの薬について、話があって訪問させて頂いたしだいなのです」
なかなか貫禄というのでしょうか、そう言ったものを感じる方です。
「そうなのですか?」
「はい」
セバスも同行していると言うことはお父様ともお話しているということなのでしょう。
でもお薬についてって、どういうことでしょうか?何かあったのでしょうか?
「お薬についてとはどういうことでしょうか?タスク様が何かされたのですか?」
少し不安な気持ちになってしまいます。
「ハハッ、そんなに心配そうな顔をされなくてもいいですよ、ご心配されるようなことは何もございません。と言うより逆でしょう。タスクさんの作る薬を分けていただけないかと思って来たしだいなのです」
「そうなのですか?タスク様のお作りになる薬ですか。村の人もタスク様にはお世話になっていますし、頂く薬もみんなに好評ですからね」
遠くからタスク様の薬を欲しがる方が来られるなんて、すごいですねタスク様は。それにしてもどこでお知りになったのでしょうか?
「ほう、好評ですか」
「頭領様は、タスク様のことをどこでお知りになったのですか?タスク様はコバタ村以外では我が領内の巡回診療以外ではお渡ししていなかったと思いますが…」
「実はこちらのギフロ達から知ったしだいなのです」
「そうなのですよ」そう言ってギフロさんはタスク様の薬がいかにすごく、そして助かったのかを話してくれた。
確かに以前村を離れるときに、お渡ししていたのを見た覚えがあります。
「毒にも効くとは聞いていましたが、あれほど効くとは思ってもしませんでした。傷の治りも信じられませんでした」
ギフロさんが少し興奮気味に話してくれました。
「そういうわけでタスクさんのところに来たわけなのですよ。セフォリア様は明日もタスクさんのところへ行かれるのですか?」
「はい」
「それでしたら、ぜひ我々も同行させていただきたいのですがいかがでしょうか」
「よろしいですよ、朝食のあとすぐ出ますので」
「お嬢様、わたくしも同行させていただきたいのですが」
セバスが遠慮がちに言ってくる。
「ええ、いいですわよ。明日はみんなで行きましょう」
その後の食事はタスク様はどういった方なのか、どういう治癒術を行うのか、そういった話をしながら進んでいきました。
コバタ村、冬始の月20日 朝 冒険者ギルド頭領ドミンゴ
「それでは行きましょうか」
セフォリア嬢が声をかけてくれる。
会ったときから感じていたが、随分気さくで人当たりのいいお嬢様だと感じる。
貴族の令嬢となると大半が平民を見下す傾向があるものだが、セフォリア嬢にはそれが感じられない。
セフォリア嬢の話だとタスクと言う治癒士も気さくな人だと言っていたが、本当にそうだろうか。
話し始めてから気がついたのだが、セフォリア嬢はタスクと言う人に個人的な好意を持っているように感じる。
そうなると、どうしてもどこまで信じていいか気になる。
感情的にどうしても贔屓目に見てしまうからな。
ギフロやサワサの話からも『魔導士とは思えないほど腰の低い人』ということだが、あくまでもそれは一般的な魔導士と比べてと言う事だろう。
世間一般に比べても『腰の低い魔導士』など冒険者になって30年以上、見たことも聞いたことも無い。
屋敷を構えている魔導士は、自分の能力に自信を持っている人が多い傾向がある。
そう言った魔導士にはやっている研究や魔導士としての力を賞賛すれば大抵は気を良くしてくれる。
まぁ、簡単に言うとおだてて持ち上げて、こちらの都合の良い契約を結べばいいだろう。
それに冒険者ギルドの頭領と言う肩書きがあるのはさらにいい、自分が権威や威光と言ったものから一目置かれていると言うのが『自分は特別なんだ』と言う優越感に浸れるのだろう。
冒険者などというものを長年やっていると、権威や威光と言うのものを不要とは言わないが、より実利に重きを置くようになってくる。
冒険者と言うのものは命に関わる依頼が思ったより多く、虚栄心など持っているといつかどこかで命を落とすか仲間を失うことになる。
必然的に『見栄え』などより『中身の有用性』や『実利』を大事にする傾向になる。
「どうしたのですか、頭領様」
おっと、考えているとセフォリア嬢が声をかけてきた。
「申し訳ありません、考え事をしておりました」
「そうでしたか、それでは行きましょう」
「はい、それで馬車はどちらに?」
「あら、馬車はないですよ、歩きですよ」
ん?歩き?
「そうなのですか?」
「はい」
ニッコリと微笑を返される。
いやはや、セフォリア嬢をそこらの令嬢と同じに見てはいけないな。
なんか書きにくいです。
こう書きたいなと思うことはあるのですが、なんともです。
ほんと、原案だけだったら「こうしたい」「ああしたい」と色々あるのですが、文章表現となるといきなりつまずいたり遅くなったりします。
遅くても遅くなった分表現力のある文ならいいんですけどね。
なかなかそうもいきません。
薬を卸す云々については早めに終わらせて、今はその次の話を書いています。
村の整備について、村人との話に行く予定です。
他には、
タスクのところの子供達と村の子供達の話とか。
セフォリアのデート(ピクニック)?の話とか。
ドラゴンのMBIを使っての町への単独行とか。
テンプレの魔物・魔獣襲撃話なんかも。
順番はまだ決まってませんが、大筋になる話の流れに絡めていくつもりです。