ガルバジと頭領
久しぶりの投稿です。
精神的な圧迫と苦痛が無くなったので、今後は以前のように投稿できると思います。
ガルバジinガウスレバス市、ガウスレバス家の屋敷、冬始の月17日 ガルバジ
大まかな話を冒険者ギルドの頭領ドミンゴから聞き終えた。
タスク殿の作った薬を冒険者ギルドで優先的に扱いたいと言う事だ。
確かに話のような効果があるのならそう思うのも当然だろう。
ここに来たのはタスク殿が我がガウスレバス家に仕えているということで、当主である私のところに事前に話を通しておきたいということだ。
「いかがでしょう、我がギルドの要望は」
本来家臣がやっていることに、当主であっても理由も無く口を出すこそはできない。
例えば、『家臣の者が家族と共に小物を作って売りに行く』とする。
そういったことに、『やってはいけない』とは言えないのである。
そういったことをするにはそれぞれ理由がある、また家臣によってもその俸給が違う。
やむを得ずやっている場合もあるのだ。
慣習として、家臣の内職に類するものについては口を出さないとなっている。
しかし、冒険者ギルドのような大きな組織が関わる場合、後々不具合が起きた場合のことも考えガウスレバス家の当主である私に話を通しにきたのだろう。
小さな額であれば問題はないのだが、それなりの金額になるとそれは内職程度ではなく『その領地の特産』になる可能性があるからだ。
そうなると話は変わってくる。
税の収入が変わりかねない。
「いや、我がガウスレバス家がタスク殿個人のことに関して言うことはありませんが、実は私もまだ半信半疑なところがありまして。本当に言われるほどの効果があったのですか?」
「いやはや、ガルバジ殿、それは無いでしょう。ご自分の家臣の能力をご存じないなんて」
「ハハハハ」実際のところ、タスク殿についてはかなり腕の立つ治癒士とは思っているが、まさかそこまでものすごい薬も作れるとは思っていなかったのである。
もともと、治癒士と言うものは自分の治癒魔術の腕に自信がある者がなるのであって、誰が使っても同じ効果しか出さない‘薬’を作る魔導士はほとんどいない。
それにセフォリアの病気を治すほどの腕があるのなら、余計に‘薬’なんかに力を入れているなど信じられないのだ。
さてどうしたものか、本当にタスク殿の作る薬がそれほどの効果があるのなら、このまますべて冒険者ギルドに取られてしまうのももったいない。
しかし、昔ながらの慣習もあるので簡単に口を出すのもはばかられる…。
それから時間にして20秒ほどだろうか考え込んでしまった、そして頭領の言葉で気持ちを戻した。
「どうしましたか?」
頭領の言葉に私は返事を返した。
「うちの者を一緒に同行させたいと思いますがいかがですかな?」
「?それは願ってもないことですが、どうされたのですか?」
翌日、ドミンゴは案内役で連れてきていたギフロとサワサ、それにガウスレバス家から取次ぎ役としてセバスと共にコバタ村に向かった。
コバタ村、冬始の月19日 ギフロ
出発して翌日コバタ村についた。今は村の入り口だ。
そろそろ昼になる頃だろう。
前回来てから、こんなに早くまた来ることになるとは思ってもいなかった。
あれから3ヶ月、随分寒くなってきている。
「頭領、ここは宿屋がいつも開いているわけではないですけどどうしますか?」
俺は頭領に声をかけた。
「そうなのか?どういうことなんだ?」
「はい、なんでもここまで来る人はそれほど多くなく、人が集まるときだけ宿屋を開けてそれ以外は閉めているそうです」
「なるほど、田舎だな」
そこにセバスさんが言ってきた。
「コバタ村にはガウスレバス家の別荘がありますので、滞在中はそちらにおこし下さい」
セバスさんの言葉で我々はガウスレバス家にお世話になることにした。
ガウスレバス家の別荘に着き頭領はタスクさんのことについて再度聞き始めた。
ここまでの道すがら話をしながら来たわけだが、確認のようだ。
頭領とセバスさん、それと俺とサワサが応接室で話をしている。
「セバスさんはタスクさんとはそれほど親しいと言うわけではないのですかな?」
頭領がセバスさんに聞いている。
「そうですね、親しくないわけではないでしょうが村人やお嬢様のほうがはるかに親しくさせて頂いているようです」
「お嬢様と言いますと、セフォリア様ですかな?」
「はい、そうでございます」
そこで俺がなんとなく聞いてみた。
「セフォリアさんは、今日もタスクさんのところに?」
頭領が俺の言葉に怪訝な顔をしている。
「あ!セフォリアさんって普段タスクさんのところに手伝いに行っているようなんですよ」頭領に俺が簡単に説明をする。
頭領がセバスさんに顔を向けて「そうなのですか?」と聞く。
「はい、お嬢様はタスク様にお礼も兼ねてお手伝いさせていただいているようです」
普通に考えれば爵位持ちの家の令嬢が、魔導士とはいえ『手伝い』に行くなど普通は考えられない。
しかし長年苦しんでいた病気を治してもらったというのは、セフォリア本人にとっても、父のガルバジにとっても周りが思っている以上に感謝していた。
セフォリアは感謝以上の気持ちもあって手伝いに行きたいと言ったのだが、父ガルバジは感謝に絶えなく手伝いに行きたいと言っているのだと思ってセフォリアの行動を許していた。
ガルバジの感謝の気持ちもまた多大であったことは間違いの無いことだったからである。
いくつか頭領は質問を繰り返し、「それでは明日タスク様のもとへ伺いましょう。夕方にはセフォリア様も戻られますのでご一緒にお食事はいかがでしょう」とセバスさんが言ってくれた。
次話の投稿についてですが、投稿予定が立ちましたら活動報告に書くつもりです。




