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50話目 回復そして取り調べ

日にちはまたぎましたが、前回の投稿から6~7時間しかたっていません。


気分的には連続投稿です。


前回短かったのは、連続投稿するために短かったいえます。


まあ、自分の勝手な思い込みなんですけどね。























ドマスケルニア帝国、帝都ドマスケルニア。冒険者ギルド総轄、冬始の月8日












翌日の朝、時間は早いが冒険者達はノロノロと起きだした。


そこに依頼見届け人が走ってきた。


そして全員に聞こえるように大声で言った。


「大変です!2人が大変です!」


寝ていた者も起きだした。


「そんなに大声を出さなくてもいいじゃないか、亡くなった者を静かに送ろうじゃないか」冒険者の中では年長にあたる男が言った。


「誰が死んだんです!」


「そりゃあ、昨日の2人が…」「勝手に殺さないで下さい!!回復しましたよ!」


そこまで聞いて寝ぼけていた者も一気に目が覚めたようだ。


「「「そんなバカな!!!」」」多くの声が重なった。






朝食時には昨日毒にやられた2人がやってきた。


ばらばらに食べているが、それなりに集まって摂っている。


「皆さん、心配をかけました。この通り元気になりました」「なりました」2人が同時に声を発した。


それぞればらばらに食べているところから、何人もが2人のところにやってきてもみくちゃにされた。


「なんで治るんだよ!」「あんなに心配したのにもったいねえ」「信じられない奴等だな」「死んだときの叫び声まで考えていたのに無駄になっちまったじゃないか」などなど言い方はまちまちだが全員無事治ったことを喜んでいた。


「そんな風に言わなくてもいいじゃないですか」「もっと素直に喜んでくださいよ」2人は回りの先輩冒険者に返していた。


そして怪我の具合を見せてくれと言ったことから、さらに驚きの声が上がった。


「なんで傷跡がほとんどないんだ?」「おれの方が傷が残ってるじゃねえか!」「どれどれ?こりゃあスゲエ!怪我のあとが綺麗じゃないか!」


「そうなんですよ、傷が綺麗に治っていて、まだちょっとひっぱる感じがあるけどほとんど痛みは無いんですよ」


「俺もそうなんですよ、俺なんか痛みもあんまり無いんだよ」


「なんだよ、そりゃ、2人ともようは同じってことじゃねえか」


「「そうか」」爆笑の渦に包まれた。



そんな中、俺は依頼見届け人に「ちょっといいですか」と言われて大型テントについていった。


サワサも声をかけられ一緒だ。


中に入り依頼見届け人は昨日の彼らの様子を話し出した。


「昨日薬をもらってから、すぐに使ったんです。5時間くらいしてでしょうか患者から声が聞こえなくなり、いよいよ体力の限界になり、声も出なくなったかと思ったんです」


それはそうだろう、俺もそんな状況を見たことがある。


「でもよく見てみると寝息が穏やかになったような感じなんです。助かるかもしれないと思って毒を受けた部分の包帯を交換しようとすると」


「「すると?」」


相手が頭を乗り出すような感じで話しかけてくるので、思わず俺達も顔を乗り出すような感じで頭を突き合わせた。


「怪我が治ってるんです」


「治ってる?」


「イヤ、ちょっと違いますね。隣で寝ていた毒を受けていない患者より怪我が治っていたと言えばいいでしょうか」


「イヤ、そんなことってありますか?」俺が疑問を素直にぶつける。


「普通ならありえません、そこで考えたんです。毒を受けた人とそうじゃ無い人との違いは何かって。そう考えるとギフロさん、あなたからもらった塗り薬を使ったか使わなかったかだけなんです」


「そうなの?」


「そうなんです、それ以外の治療の違いは何も無いんですよ」


そのあと、彼は俺からもらって残っている薬を、怪我を負っただけの患者にも使ってみたそうだ。


そうすると、魔術を使ったときほど短時間ではないが、10センチほどの切り傷だったら2時間もしないで治ってしまったそうだ。


さらに小さな傷だったら、魔術の2~3倍ほどの時間で傷が解らなくなるくらいに治ってしまった。


「あんなすごい薬は見たことも聞いたことがないんです!どこで手に入れたんですか?!腕の立つ治癒士って言ってましたけど誰ですか?!どうやって作るんですか?!」


依頼見届け人は俺達2人に詰め寄った。


「あの薬がもっとあれば、冒険者の活動が一変します。いや!それだけじゃありませんみんなの生活もずっと変わります!ぜひ教えてください」


あまりの力強さにサワサがおずおずと返事をする。


「あの~、あれはもらい物でして、彼以外は作れないんじゃないかと…」


そこから依頼見届け人の俺達2人への詰め寄り方は半端なかった。


最後には「わかりました、今度紹介しますから」ということに落ち着いた。


サワサなんて途中で泣く一歩手前までいっただろう。


「絶対ですよ、総轄にあなた達のことも漏らさず報告しますので、逃げられると思わないで下さいね」


最後はそう言われてしまった。






















といった訳で、今は『薬に関する約束』を果たすために冒険者ギルド総轄に来ている。


冒険者ギルド全体のトップ。頭領に会う為、あのときの依頼見届け人に案内された部屋だ。


「ザウバから聞いたのだが、信じられないほど効く薬をもっているらしいな」


頭領は依頼見届け人を見やりながらそう切り出してきた。依頼見届け人の名前はザウバと言うんだ。


頭領は50歳に届こうかと言う年齢に見える。昔は冒険者だったのだろう傷跡があちこちに見える。


年配らしい落ち着いた声だ。


「そうなんです、この前の討伐のときに使ったら信じられないほどの効きでした」


「ザウバには聞いてないぞ」


「申し訳ありません…」小さな声が返ってくる。


「で、どうなんだ?」


ちゃんとした報告がされているのだろう、隠すこともないので普通に話すことにした。


「あれは、ガウスレバス領のコバタ村で貰った物でして、そこにいる治癒士からもらいました」サワサが先に話し始めた。


「そうなんです!俺がピコの実を食べたくて行ったんですけど、そこでもらったんですよ」


「ピコの実は関係ないでしょ!」サワサに怒られた。


「それで、ガウスレバスにいる治癒士の名前はなんと言うのかな?」


「はい、タスクさんと言う方で、ガウスレバス家に仕えているようです」


その後は知っている範囲で頭領に話をした。




「実際のところどれくらい効くんだろうか?」そう言って頭領はザウバに目に見えない速さで切りつけた。


「「あ!」」


「頭領!何するんですか!」


「いやなに、どれくらい効くのか見てみたいと思ってな。薬を使ってみてくれ」


「それにしたって、結構血が出ちゃってるじゃないですかー」


そう言われて俺は薬を取り出してザウバに手渡した。


傷は2センチほどの切り傷で、血がドクドクと出ている。


傷は小さいがそれなりに出血がある。押さえておけば1時間ほどで止まるだろうという感じだ。


塗って数瞬の間があったが、そこから徐々に血が止まり傷口が塞がっていった。


治癒魔術に比べれば明らかに時間はかかっているが、それでも目の前で傷が治っていくのがわかる早さだ。


「これはすごいな、傷口が大きくても効果は変わらないのか?」


「そうですね、もう少し時間はかかるようですがそれでもかなりの効き目です」ザウバが以前の様子を説明する。


「治癒士にかからなくとも傷がこれほどの速さで治るとは信じられないな」


「頭領!それだけじゃありません!毒にも効くんですよ」


「そうだったな、傷だけじゃなく毒にも効くなど尚更信じられんな」


そこから頭領は考え込みはじめた。


「頭領、どうしたんですか?」ザウバが声をかける。



「よし!そのタスクと言う治癒士のもとへは俺が行こう。これだけのものを他のギルドに取られたら重大な損失だ。なんとしても治癒士をこちらに引き入れなければいかん!」


冒険者ギルドの頭領みずからガウスレバス領へ出向くつもりのようだ。


「早いほうがいいな、ザウバ!明日には発つぞ!ガウスレバス領までの行程を調べておくように、頼むぞ」


「わかりました、準備いたします」


話はここまでになった。


あんなに効き目がいいなんて思いもしなかったけど、タスクさんてホントにすごい人なんだな。


あらためて感心してしまうギフロであった。






















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