49話目 討伐での…
誤字脱字等につきましては転勤後時間を作って行います。
申し訳ありません。
ドマスケルニア帝国、帝都ドマスケルニア。冒険者ギルド総轄、冬始の月7日
俺はギフロ、少し前に冒険者ギルドの大きな依頼でゴブの野郎どもの討伐に参加した。
やつらは個々ではたいして怖い存在ではないが、集団で群れるとそれなりに脅威になる。
身長は50~60センチほどの2足歩行で、中にはどこで手に入れたかわからないショートソードで武装しているものもいる、大概は小さな木の棒(枝のレベルだな)を持って襲ってくる。
農村では害獣として扱われていて、数が多ければ農作物へも影響が出てくる。
単に農作物を荒らすだけでなく、その農作物に病気をうつすこともあるのだ。
多少の病気は植物を丈夫にするのに役立つが、度を越えると枯れてしまって収穫ができなくなってしまう。
そんな訳で、村の共同依頼と言うことで討伐の依頼があったわけだ。
冒険者ギルドは基本方針として、農業関係の依頼は特段の事情が無い限り格安で受けるというのがある。
昔、農村の依頼をおざなりにしたために、国全体が食料難に陥ったことがあったとかなかったとか。
なにせ昔のことなので真偽のほどは不明である。
ギルドとしても、依頼の多い郊外や村々の依頼は信頼を得るのに欠かせないものだ。
ゴブの討伐は慣れている者だったらそれほど難しくは無く、腕の立つのが3~4人以上であたれば、ゆうに50匹以上を相手に出来るだろう。
ただ今回の厄介なところは、その数が半端無いほど大量だということだ。
確認されているだけで、1000匹を超えているだろう。
もうそれは数そのものが害になりかねない、それだけの数を維持するだけで回りにある食べられるものが根こそぎ無くなってしまう。
春までには一帯が植物の無い丸裸になっているだろう。
討伐は朝から始めて、夕方にはほぼ終わらせることができた。
それはそうだろう、全部で50人近い冒険者が参加したのだから。
まあ、腕の立つのもいれば初心者もいるけどな。
特に問題も無く終われるかと思ったのだが、そうはいかなかった。
けが人がでたのだ。
まだ新米冒険者でギルドに登録して1ヶ月もたっていないやつらだった。
終わり近くなり油断しているところを襲われ、どうにか撃退したが5人の者が切りつけられた。
油断大敵、5人のうち2人の怪我が深く、しかも毒があった。
ゴブが毒を使うなど聞いたことが無い。
冒険者の中には治癒魔術を使える者もいたが、全員魔力が切れかけていて、おまけに毒についてはまったくのお手上げだったのだ。
毒に侵された奴等を見ていると徐々に弱っていくのがわかる。
経験上、あんな症状だともたないだろう。
小さな村なので治癒士など居るわけもなく、かといって中央まで連れていっても間に合わないだろう。
戻ってきた冒険者仲間達で悩んでいた。
隣にいるサワサも「魔力がほとんど無くてゴメンナサイ」と言っている。
「そういえば、タスクさんからもらった塗り薬ってどうしたの?毒にどれだけ効くかわからないけど気休めくらいにはならないかな?」
そういえばタスクさんから薬を貰ったんだっけ、あんなに強そうな毒には効かないだろうけど少しでもラクにできないだろうか?
「荷物の中にあったはずだから、探してくる」
そこまで話していると一緒に来ている冒険者から声をかけられた。
「どうしたんだ?何か治す手があるのか?」
「いやなに、以前毒にも効くって傷薬を貰ったんでな、少しでもやつらの苦しみを和らげられないかと思ってな」
「そうか、あんたらも解ってるか、やつらはもう明日の朝までもたんだろうってことを。少しでも苦しみを和らげてやりたいもんな」
後ろからも声をかけられた、「あんな毒を治せるのなんて解毒魔術以外ないからな、その解毒魔術を使えるヤツが居ないんだからどうしようもないな…」
「そうだよな、どうしようも無い…、薬探してくるよ」
「薬か…、同じ冒険者として薬みたいな安っぽい物じゃなくて、しっかりした治療をしてあげたかったな」
俺は薬を探してきて、怪我をした奴等が寝かされている大型テントに向かった。
中ではまだ苦しみながらも2人は意識があった、残りの3人も治療を受けて並んで寝かされていた。
「旅先で出会った腕の立つ治癒士からもらった薬だ、きっと効くだろう」そう言って治療に当たっている人に渡した。
治療に当たっている人も『たぶん助からないだろう』と感じている。
そして渡された薬も『気休め程度だな』そう感じているだろう。
ギルドから派遣されている依頼見届け人は「わかりました、使わせてもらいます」
そう言って受け取った。
外に出ると討伐に出ていた最終組が帰ってきていて怪我をした奴等の話を聞いていた。
今夜は皆でしんみり酒を飲むことになるだろう。
誰でも最初は新人冒険者だ。
そしてその新人時代をどうにか生き残り今に至る、そして今夜その新人の2人が命を落とすだろう。
もしかしたら自分達がそうなっていたかもしれないのだ。
最終局面になり、「ここまで来れば古参のものに任せて先に戻って夕飯の仕度をしておいてくれ」「うまいのを用意してくれよ」「楽しみにしているぞ」そう言って新人を先に戻したのだ。
良かれと思ってしたことが、かえって仇になってしまった。
本当は責任など無いのだが、それでも『もしかしたら一緒に最後までいればこんなことにはならなかったかもしれない』と考えてしまう。
今夜は長い夜になりそうだ。
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誤字脱字等についましては、転勤後一息ついたところでやりたいと思っていますのですぐの修正はご容赦ください。