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40話目 旅人

生活をしていくと色々な人に出会い、そして関係を築いていきます。


人とのつながりや関係が物語の『もと』ではないでしょうか。


今回、新登場人物が出てきます。

この人からさらに今後色々な人と接触していくと思います。


旅人in西村、秋始の月22日




これだけ大陸の外れまで来たのは初めてだ。


多分この村が一番西にある村だろう。


俺はギフロ、冒険者をしている。年齢は20、♂、剣の腕には自信がある。


一部では‘勇者'なんて呼んでいる人もいる。まあこれは自慢だけど。


「この村でいいんだよね?」


今声をかけてきたのは同じパーティーのサワサ(19歳、♀)だ、主に回復や防御の魔法を使って援護をしてくれている。


普通冒険者と言われる者は数人でパーティーを組んで行動をする。


「そのはずだ、高級果実ピコの産地は!」


そうなのだ、俺はその果実を食べたくてこの村まで来たのだ。


普段は同業者組合、別名冒険者ギルドの依頼で魔物の討伐に行ったり、護衛をやったりしているがこの前割のいい仕事をして懐にかなり余裕ができた。


この機会に休息をかねて以前から腹いっぱい食べたいと思っていたピコの実の一大生産地に来たわけなのだ。


ギルドと言うと冒険者に関わりのあるものと勘違いしている人も多いが、そもそもギルドとは同業者の人たちで作った組合で冒険者ギルド、商人ギルドや手工業ギルドなど、さらに下部組織も入れると多種多様のギルドが存在する。


その中でわりと活動が活発で、多種多様な依頼を受けることが多い冒険者ギルドは3本の指に入る大きなギルドだ。


ギルドにはあまり大きな声では言えない非合法なものもある、有名なのが盗賊ギルドだ。


他にもアサシンギルドなんてものも聞いたことがあるが、本当にあるかどうかはわからない。


それより、今はピコの実だ。


俺は村での拠点を確保しようと宿屋を探したが見当たらなかった。


通りを歩いている人に声をかけていくつか聞いてみた


宿屋が無いと言うのは正確ではなかった、10日ごとにある市場に合わせて開くのだそうだ。


しかし今日は市が終わって2日、次に宿屋が開くのが6~7日後だ。


酒場はあるようだが、昼間は他の仕事しているとのこと。


酒場も基本的に村の男衆が定期的にドンチャン騒ぎをするところらしく2~3日に一回しか開かないらしい。


困った、高級果実ピコの実の生産地と知られているところなので、少しは旅人用の施設があると思っていたのだが。


しかし考えてみれば、ここより西に人の住んでいるところは無いと言われている。


ここまで足をのばす人はかなり限られる、どこかへの中継地だったら人通りも多くかなりの施設があるだろうが、ここまではずれの地域だと無いのだろう。


旅人や商人などが来た場合は村長のところにやっかいになるか、場合によってはガウスレバス家の別荘にやっかいになるらしい。


しかし今回はある人を紹介してくれた、村一番のおせっかい、じゃ無くて親切なマシュリーさんをだ。


「マシュリーさんに相談すればどうにかしてくれると思うよ」


そう言われて家を教えてくれた。


マシュリーさんと言う人は言われたとおり親切な人だった。


「ちょうど宿屋が閉まったあとだからね、どうしたもんかね」


少し考えて、「ついておいで」、そういって案内してくれた。


案内されたのは村の外れにあるそれなりに大きい建物だった。


見かけは飾り気の無い建物だが、その壁は信じられないくらい平たんで見たこともないほど四角だった。


「タスクさん、いるかい?」


この家の主はタスクと言うか、そんなことを思っていると中から女の子が顔を出した。


「マシュリーさん、こんにちは、どうしたんですか?」


「なに、旅人が来られてね、タスクさんのところで宿屋代わりができないかと思ってね」


「宿屋代わりですか、ちょっと待ってください、呼んで来ます」


少し待っていると男性がやってきた、タスクと言う人だろう。


「こんにちはマシュリーさん、宿屋代わりとかって聞きましたがどうしたんですか?」


マシュリーさんは簡単に俺達のことを説明してくれて、少しのあいだこのタスクさんのところにやっかいになることになった。


「もうすぐ暗くなってきますので中に入って休んでください。あ!こちらの建物には空き部屋がなかったな、隣の診療所のほうに少し狭いですけど2部屋あるのでそれぞれ使ってください」


俺は疑問になって聞いた、診療所?


診療所と言うことは治癒魔導士が居るのだろうか、こんな外れの村にいるなんて珍しい。


その診療所を勝手に使うことを決めれるなんて管理人かなんかなのかな?


「どうしました?」


少し顔に出ていたのだろう、俺は驚いた顔をしていたようだ。


「すみません、治癒士がいるなんて思いもよらなかったので」


「そうですか?そんなたいしたものじゃないですよ」


「いえいえ、治癒士として独り立ちしている方ですから、ご自分の主人(雇い主)を悪く言ってはだめですよ」


タスクさんはなんか怪訝な顔をしている。


「まあともかく中にどうぞ、寝る部屋は隣の家ですけど、食事はこちらに食堂がありますのでどうぞ」


そう言われて建物の奥に入っていった。


食堂には10数人の子供達がいた、なんでこんなに子供がいるんだ?


「この子供達はなんなんですか?」


「ああ、マシュリーさんは何も言ってなかったんですね、この子達は簡単に言うと孤児です」


そのあと色々と子供達のいきさつを聞いた、ここの治癒士殿はかなりできたひとのようだ。


「なるほど、ずいぶん立派な考えを持っているんですね、しかも考えだけでなく実践もしているなんて」


「当たり前のことだと思うんですけどね」


「さっきからタスクさんは雇い主に対する敬意が感じられないみたいだけど、何かあるんですか?」


「あー、そのなんと言うか、もしかして何か勘違いされているように感じるのですが」


「勘違い?何がです?」俺と一緒にいるサワサが視線を合わせる。


そしてタスクさんに視線をもどしてもう一度言う「何を?」


「あー、えー」どうにも歯切れが悪い。


「どうしたんですか?」


「えっと、雇い主って、私がここの主なのですが…」


へ?タスクさんがここの主?こんなに腰の低い人が?


「え?あるじ?ここの?」


タスクさんが頷く。


「!!これは失礼しました!申し訳ありません」俺とサワサは二人そろって頭を垂れた。


「いいですよ、他にも『ずいぶん腰が低いですね』って言われてますから」


タスクさんはそう言って俺達を咎めなかった。


マシュリーさんとの会話を聞いていると、タスクさんが治癒士なんて思いもよらなかった。


魔導士への見方が変わってしまう人だ。


サワサも少しは治癒魔術が使えるが、診療所を構える人に比べれば微々たるものだ、それでもサワサは魔導士としての矜持があるようで冒険者に比べれば少し高飛車なところがある。


しかしタスクさんにはまったくそんなところが無い。信じられなかった。





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