2話目
一瞬で艦隊は飛ばされたのだろう、宇宙空間では周りの景色が劇的に変わることはほとんど無く、飛ばされたのがまったくといっていいほどわからなかった。
それでもついさっきより、なんか星の見えるのが少なくなったかな?と感じた。
「エリアス!?」
少し大きな声で呼んだ。
「ハイ、少しお待ちください、現在宙域を計測中ですので!」
さっきまでとは違う、少し緊張感が感じられる声が返ってきた。
「わかった」
エリアスに返事を返すと同時に艦隊の状況確認も考え旗艦に話しかけた。
「ろぷす!艦隊の現状確認と状況報告」
ロプスにもアルティシファリクリエイトと同様に言葉によるコミュニケーションがとれる。
ある意味艦船の体をもったアルティシファリクリエイトコンピュータである。
もちろん本業は旗艦及び艦隊の管理だが。
「わかりました、駆逐艦の3隻が不明です、それ以外は変化ありません、艦隊の配置と艦列を表示します」
少し目線を上げたところに3D表示された。
「なるほど、艦数は減ってるが損傷はないな、巡洋艦10と駆逐艦37だな」
「はい」
「不明艦はどうした?」
「一緒にこちらにこれなかったか、移動瞬間に他に飛ばされたと予想されます」
「そうか・・・」
「司令」
エリアスが横から声をかけてきた。
「現在宙域がわかりました」
「あぁ!それで?」
「ボイドをはさんだθ503星団の外周にある恒星系のようです」
「ハ?エ?なにそれ?」
「ですから、ボイドの向こう側に出ました」
「えっと、理解したくないところなんだけど」
「簡単に言うと2億光年飛ばされました」
「そんなバカな!!!」
タスクが生きてきた中で一番の衝撃だった。
エリアスin旗艦ロプス内
「司令! タスク司令!」
「ン?ア?」
「宇宙艦隊司令本部に連絡をいれますね」
「・・・・・・・ワカッタ・・・・」
心ここにあらずな返事が帰ってきた。
「タキオン通信ですから、すぐに向こうから返事が返ってきますよ、少しはシャキッとしてください」
「・・・・・アァ・・・・」
しかしやはり反応が鈍い、まぁ仕方ないか。
ここまで飛んだと言うか、来た人類はいない、単純に考えても地球圏管理宙域まで最短で2500年かかる、それも直線距離でだ。
実際にはボイドを通って行くにはエネルギーと食料の関係でできない、ボイドの周りにある星団星雲を渡り歩くので概算で4000年近くかかると思われる。
それもトラブル無く、すべて順調にいったとしてだ。
タスク司令が生きてるうちに地球圏に戻れるのは確率的に皆無どころか完全な0%だ。
空間湾曲も現在はまったく観測できない、片道通行だったようだ。
仮に湾曲があったとしても元の場所に戻れるとは限らない、事実4279年前の第3艦隊は約1年4ヶ月かけて地道に戻ってこざるを得なかった。
「なんでこんなことに・・・こんなところに・・・」
指令の独り言が聞こえてくる、アルティシファリクリエイトの私は時間さえかければ戻れるだろうが、人間には寿命があるから帰るはるか以前に棺おけの中だ。
「司令、本部から返信がきました」
「ハァ・・、わかった」
のろのろと通信に応じ始めた。