18話目 誘い
今回は肩書きを手に入れるお話です。
ご都合主義のところは勘弁してください、なにぶん『おはなし』ですから。
この肩書きを持つことによって、人間っていろんなことを出来るようにもなります。
社会人でも営業先に挨拶するときに「〇〇会社の△△です」と言いますよね。
〇〇会社と言うのがある意味肩書きになるわけです、それがなければなかなか色々なところには行けませんから。
タスクin村の市 昼頃
「こんにちはマシュリーさん、元気にしてましたか?」市場ででマシュリーさんを見かけて声をかけた。
「これはタスクさん、はい元気です」
「どうしたんですか、なんだかいつもよりよそよそしいような気がしますが」
「そんなことないさね」
「そうですか?そういえばこのあいだエリアスにここに住んでみたらって言ってくれたそうで」
「そんなこと言ったかね、気分を悪くしたなら忘れてほしいんだが・・・・・」
「そんなことないですよ、ここはいいところですしずっと住み続けるのは難しいですが滞在する家は欲しいと思うんですよ」
「え?そうなのかい?」
そこまで話してエリアスが後ろから声をかけてきた、村人の態度が今までに無いくらいよそよそしかったので今まで聞き込みに行っていたのだ。
「マシュリーさん、そんなによそよそしくしなくてもいいですよ。私たちは確かにいろんなことをやってはいますが、あなた達が考えているようなごたいそうな人ではありませんから」
「そんな言いようをするということは、私らが思ってることを知っているのかい?」
「はい、さきほど村の子供たちから聞きましたよ」エリアスが笑顔で答えた。
俺にはさっぱり話が見えてこない、何かあったのかな?
「村の子供から?どんなことを聞いたんだ?」
「はい、村の人は私たちが中央の偉い魔導士だと思っているようです」
「そうなのか?」
「はい」
「そうなんだよ、違うのかい?」マシュリーさんが疑問を直接ぶつけてきた。
エリアスと先日簡単に打ち合わせていたことをここで言うことにした。
「そうなんですか、一つ一つ説明します、まず魔導士かってことですけどある程度の魔術的なことはできますね、そして病気の治療はそうですね結構得意かなって感じです」
「やっぱり魔導士だったんだね、どこのだい?」
どこの?魔導士って言われる人はどこかに所属しているのが普通なのかな?
「いえ、どこに所属してないですよ」
「どこにも召しかかられていないのかい?あんなに腕がたつのに」
「はい」自分で言っていて変な話だがこの返事はなんか間抜けに聞こえた。
「あんなに簡単に病気を治せるのに、どこで覚えたんだね?」
「えっと~それはですね・・・・・お爺さん?」自分で自分の言ったことに疑問符を付けてしまった。
「お爺さんから教わったのかかい」
「はい」そうしておこう、これ以上は教えられないってことにしよう、ぼろが出そうだ。
「おじいさんはさぞや名の有る人だったんだろうね、なんて方なんだい?」
どうしようか、いろいろ話さなきゃいけない感じになってきてる…。
「お爺さんは人との係わり合いがイヤで隠遁してしまったんですよ、なのでこれ以上はちょっと遠慮させてください」
「・・・・・・・・・・・・そうかい、聞きたいけどこれ以上はやめておくよ。タスクさんがお偉いさんじゃなくてこれからもここに来てくれればそれだけで満足しなけりゃね」
「そう言ってもらえると助かります」
「じゃあ、どこかのお偉いさんでもないならこれからも普通に『タスクさん』でいいのかい?」
「そうしてください、お願いします。それにこの村に家を持とうとも思っているんですからそんな他人行儀な態度はやめてください」
「すぐには無理かもしれないがそうするよ、村の人にも言っておくよ」
「お願いします」
その後はどのあたりに家をもとうか話していった。
「そろそろセフォリアさんのところに行ってきます、エリアスちょっと来てくれ」
「わかりました」
部下に店番を任せてガウスレバス家の別荘に向かった。
マシュリーさんも市で買い物を済ませて帰るといっていた。
向かう途中エリアスに自分たちの身分について場合によってはその場で取り繕うこともあるので、俺の話を絶えずモニターしてつじつまが合うようチェックして欲しいと伝えた。
エリアスも先ほどの会話で感じたのだろう、それについてはフォローすると言ってくれた。
いくつか身分について確認や打ち合わせをしているうちにガウスレバス家の別荘についてしまった、話しながらだったので思った以上に時間がかかった気がしない。
こんなに近かったっけ?
「こんにちは、タスクです」
中から戸をあけてようとしている音が聞こえてくる、扉があくと女中が「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」そう声をかけてくれた。
以前にも案内された応接室に通され、そこにはすでに夫妻が待っていた。
「「ようこそ、お待ちしてました」」ガウスレバス家夫妻が出迎えて言葉をかけてくれた。
「セフォリアお嬢様のご様子を確認させていただきたく、お邪魔いたしました」
前回から来るとは言っていたので、これは完全な社交辞令のようなものだ、用件を何も言わずに話し始めるのを無作法と思う人もいるからな。
そこへセフォリアさんが部屋に入ってきた。
「いらっしゃいませ、タスク様」
「部屋の方に行こうと思っていたのに、こちらに来てしまったか」ガルバジが声に出す。
「来るのを楽しみにしていたのですから、女中に、タスクさんが来たらすぐ知らせてと言っておいたのです」
「まぁまぁ、セフォはタスクさんが来るのを楽しみにしてましたからね」婦人が言う。
その後は治療成果の確認や気をつけることを話した、と言っても治療は完璧にうまくいっている。
こう言うのもなんだが、これほど完璧な治療は地球圏の人々には出来ないかもしれない。
この星、ブルーマーブル星の文明が思った以上に進んでいないのでそこに住む人の病気耐性や自然治癒力が高いと考えられる。
太古の地球でも文明社会から持っていったただの栄養剤が、未開の住民の病気に想像以上の治療効果を及ぼしたと記録が残っている。
それと似たことがおこったのではないだろうか。
体調や病気の話がある程度終わってくると、ガルバジが当初から聞きたかったのだろうこちらの素性を聞いてきた。
「タスク殿はただの商人ではありますまい、どういった方なのですか?」
「私も気になっていました」セフォリアさんも一緒に聞いてくる。
「あなたほどの腕の立つ治癒魔導士、失礼ながらそのお名前を聞いたことが無いのです」
「私もです、それにこの前聞くことが出来なかったのですが女中から見せてもらったイヤリング、あんな精巧なものはじめて見ました」
「ん?そんな物まで扱っているのですか、タスク殿ぜひご身分をお聞かせ頂きたい」
なんか思った以上にお偉いさんに見られている、村で思われている以上に過大評価しているんじゃないだろうか。
それにここに持ってきたイヤリングなんて子供の装飾品のレベルだぞ、そんなにすごいか?
なんにしてもうまく説明しないとな。でっち上げの話だが信じてもらえるようにしないと。
「そんなにかしこまらないで下さい、村の人からも聞かれたのですが、私たちはそんなたいそうな者ではありません」
「しかし!」
「まぁ待ってください、そうですね確かに私たちには病気を治したり精巧なものを作ったりできます。それらはすべて祖父から受け継いだものでして、その祖父も今は亡くなりどこでどうやって手に入れた技術や知識なのかわからないのです」
「そんなすごい祖父殿ならどこかで話にのぼっていてもおかしくないのですが…」ガルバジが当然な疑問を聞いてくる。
「そうかもしれませんが、私が物心つくころにはすでに世捨て人になっていまして接していたのは家族だけだったのです。しかも住んでいたのも森の奥ときていましたからほとんどの人はその森に人が住んでいたこともしらなかったのではないでしょうか」
「それにしてもすばらしい知識と技術をお持ちの祖父殿だったのですな、してそのお名前は?」
「えーとですね、お恥ずかしい話いつもジジイと呼んでいたものですから、そういえばパウスとかって呼ばれていましたね」
「パウス殿ですか?聞いたことがあるような無いような・・・」
聞いたことなんてあるわけ無いよ、俺がここで適当にでっちあげたんだから。もし居たとしたら偶然の産物、実在のパウスさんごめんなさい、まあいないとは思うけど。
「それに私自身もどこかに属してるわけでもないですから、そんなに畏まらないでください」
「そうなのですか?!」ガルバジが勢いのある声で聞き返してきた。
「はい、そうですがなにか?」
「でしたら我が家に仕官されませんか!」
「仕官ですか?今のところそういったことは考えていないのですが・・・・・」
「ぜひ考えてほしい!結論をすぐとは言いません、娘を治して頂いたのですから無理強いをするのは気がとがめますのでいたしませんが、しかしタスク殿ほどの腕前でしたらどこの貴族でも召抱えたいと思うはずです。どこからも声をかけられていないのでしたら是非我がガウスレバス家を考えて頂きたい!」
「そうなのですか?治癒魔導士と言うものがどう受け入れられているのか田舎者なのでよく解らないのですよ」
「魔導士も突き詰めれば腕前が大事なのですが、タスク殿ほどでしたら一流と言って差し支えないと思います」
「そうなんですか?今のところ声をかけられているところもないですけど、士官を考えていたわけでもありませんのですぐに色よい返事はできませんよ」
「そうでしょうとも、それだけの腕を持って商人のような生活をしているわけですから何か理由があるのでしょう。待ちますので他からも誘いがあったらガウスレバス家はそれ以上の気持ちでお待ちしていると思ってください」
かなり熱心にガルバジは話してくる、士官なんて考えてもいなかったからな。
ともかくこの話にいい返事をするつもりはないから話を変えないと。
「まぁまぁ、タスクさんも急な話で戸惑っていますわ、ともかくタスクさんの知識と腕前で娘の病気も治ったわけですし、そんな堅苦しい話はそこまでにいたしましょう」
「ああ、そうだなあれほどの腕を持っていながらどこにも属していないと聞き驚いたものだから、ついっな・・・・・・」
「なにはともあれ娘を治して頂いてありがとうございます」シャウリ婦人が話を締めくくってくれた。
ともかくよかった仕官の話がここで終わってくれて。
「タスクさん、イヤリングなのですが私にもお売りしていただけないですか?」
いきなりアクセサリーの話をふられた。セフォリア嬢はやはり女性だ、アクセサリーのことが気になっていたのだろう。
しかし困った、今回はあまり目立ったものは控えようと思ってそういったものをまったく持ってこなかった。
「それはいいのですが、今回は持ってきていないのです」
「そうなのですか?残念です…」
「タスクさんほどの人が扱っているアクセサリーなのですからそれは素晴らしい物なのでしょう?」この話にはシャウリ婦人も乗ってくる。
「それはもう、女中の持っていた物を見せられたときはビックリしました」
「まあ!それはぜひ私もお願いしたですわね」
「そうですか、次来るときにはいくつか持ってきます」
「「お願いします」」2人が声を合わせた。
その後、タスクはアクセサリーや魔道具について色々聞かれるはめになった。
アクセサリーについてはエリアスもいたのでそれなりに2人で話はできたが、魔道具、我々にとっては科学文明の技術力だがどこまで話したらいいのかわからず適当に話を濁すことになってしまった。
今回の話で今後さらに展開を色々持っていくことができると思います。
今まで考えていたことに持っていくのがやり易くなるんじゃないかと。
そんな中でも、タスクはできるだけ自分の力は出さないようにしようとしていきます。
宇宙生物も絡んできますが、さてどこで出そうか??
地上でもエピソードは色々おきます!