12話目 生物なのか?!
カベルin屋敷
タスク殿が帰られるとのことで、一応念のため身元確認のため部下にあとをつけさせた。
結果は2時間後には見失ったとのことだった。
部下は「途中で意識が朦朧として、気がついたら見失っていた」と言っていた。
どういうことだ?
部下の職務怠慢なのか、それともなんらかの力が加わったのか。
部下の中でも真面目な者を使ったのでウソは言っていないと思いたい。
だとすると何らかの力があったと考えられるだろう、どんな力だ?
人の意識に干渉するなんて事は私は聞いたことがない、魔術師にはそういった力を有するものがいるかもしれない。
しかし私はもともと魔術関係にはかなり弱い、知り合いにもほとんどいない。
さて、仮定を立てるにも手詰まりになってしまった。
仕方ない、7日後にはまた来るとのことなのだから。
それにしても本当にお嬢様の皮膚病は治るのだろうか?
タスクin湖の邸宅
村を出たその日の夜には湖の邸宅に着いていた。
「司令、追跡者を足止めできてよかったですね」
タスクたちは村から離れてしばらくして、ロプスからの報告で後方から意図的に着いてきている人間の存在を知ったのだ。
そして、追跡を巻くために麻痺フィールドを意識障害モードで作動させ追跡者の足を止めたのだ。
「そうだな、いままで追跡者なんて居なかったから気にもしてなかったが、貴族と呼ばれる人と接触してしかも身元がはっきりしない旅の商人となれば不審がっても仕方ないか」
「そうですね、それに病気を治せる薬まで提供してるわけですから、余計気になるんでしょう」
「たしかにな、そういえば足止めした人は大丈夫なんだろうな?」
「はい、それは大丈夫です、先ほどロプスからの報告で衛星軌道から無事屋敷に戻ったと確認できたそうです」
「そうか」
そこまで話しているとロプスから緊急連絡が入った。
詳しく聞くために壁一面がスクリーンに変わる大広間に移動した。
そこにはすでに詳しく報告するためにロプスが宙図を表示していた。
「司令、RA3ZAの方角より未確認物体の接近を補足しました。距離は約45光年、誤差は0.5光年以内です」
早速ロプスが報告してきた。
「未確認物体?なんだそれは」
「はっきりしたことは判りません、しかし自然物でないことは確認してます」
「自然物じゃない?どうことだ?」
「はい、まず軌道がかなり不安定です、まるで子供の学校帰りの寄り道のようです」
そういって軌道を表示してきた、確かにこれは寄り道みたいだ、あっちこっちに動いているが全体的な方向は同じように感じる。
「たしかに寄り道に見えるな、こんな動きはたしかに意図的な動きだ」
「はい、さらに現在までの観測情報によりますと速度は約光速の10分の1、大きさ全長80メートル前後、形状は細長い感じで突起物もあり、質量は100トンほどです」
「そこまでの速度を出せるにしては小さな宇宙船だな、こちらより技術の進んだ星があったのかな?」
「いえ、それは確認できません。それにここまでの調査で推測されることは、これは人工物ではなく自然物と推測されることです」
「え?さっき自然物ではないと言っていたじゃないか」
「はいそうでした、説明が不十分でした、正確には動きは自然物ではないが、動いている‘もの’は自然物と言うことです」
「それは?どういう?」
「はい、宇宙生物ではないかと思われます」
「宇宙生物?宇宙空間を光速の10分の1の速度で移動する100トンの生き物?」
エリアスも怪訝な顔をしている。
「はい、驚かれるのももっともだと思います、光学観測、亜空間スキャナ、光粒子観測、考えられる観測方法で得られたデータを総合的に検証すると生物と言うのが一番合います」
「まさか、そんなものが存在するなんて・・・・」
「地球圏にいる生物と同じと言うことではありません、しかももう一つ特徴があります」
「まだあるのか?!なんだ?」
「はい、ワープ航法と思われる移動方法を確認しています」
「はぁ?」
エリアスも俺と同じような顔をしている、生き物でワープする?
「ワープです」
「そんなバカなことがあるか!生き物自身がワープするわけないだろ!」
「そう怒られても事実です。地球圏で常識と考えられていたことが、すべてに当てはまるということはありません」
「まあそうかもしれないが、それにしても信じられない…」
「私たちの基準では生物と定義して良いものかもまだ不確定です、あくまでも当てはめるとしたら生物だと言う事ですので」
「確かにそうだ、ともかく一度宇宙に上がろう」
「はい、これ以上の判断は私にはできません、お待ちしています」
「ああ、準備できしだい宇宙にあがる、エリアスたのむ」
「はいわかりました」
「それと、緊急時用にワープ転送装置を早く用意しておいたほうがいいな、いちいち小型艇を使うのでは時間がかかってしまうからな」
「わかりました、そちらはアポロに言っておきます」
「たのむ」
その後小型艇で宇宙にあがった。
タスクin第三衛星上ロプス艦内
定期的に連絡はとっていたがロプスに戻ったのは久しぶりだ。
ロプス内は見慣れた風景ではあるが懐かしい気もする。
「ロプス、船体状況はどうだ?」
「はい、問題ありません、おかえりなさい司令」
すぐに返事が返ってきた。
「ああ、ただいま」
もともと何か問題があればすぐに報告されるのでわざわざ聞く必要は無いのだが、タスクは人間である以上会話でコミュニケーションをとりたくなってしまうのだ。
総合中央管制室に向かいながらその後何か変わったことが無かったか確認していく。
エリアスは後ろからついてきて、俺と同じように話しを聞いている。
「物体がワープしました、現在地は約41光年ほどのところです」
「先ほどから約4光年飛んだのか」
「はい、ワープ時間と飛んだ距離からわれわれが行っているワープ航法とほぼ同じ原理のものと推測されます」
「ワープのスピードは同じと言うことか」
「はい、それと今回のワープから物体の来た方向がかなり特定されました」
「どこだ?」
「はい、我々が最初にこの星雲に飛ばされてきたときの太陽系です」
「あそこから?しかしあの宙域には何も居なかったはずだが」
「はい、たしかにそうです。まだ不明なことがありますのでさらに調査を進める必要があります」
「わかった、まかせる」
そこまで話して管制室の前までつき中に入った。
ロプスが宙図をいくつか表示し今までの報告を解りやすく表示している、そして新しい情報も重ねて表示される。
「こちらに向かってきているのはわかるが、なにか接触はあったのか?」
「いえ、今のところありません」
「そうか、偵察機を出せ、何か反応があるかもしれない、一応こちらの位置がわからないよう別方向から接近するように」
すでにこちらの場所は解っているのかもしれないが、それでも念のためだ。
「わかりました」
「それと第一警戒態勢発令、戦闘艦を出しいつでも稼動できるよう待機」
「了解」
「エリアス、物体が友好的な場合と敵対的な場合の接触シュミレーションをたのむ、できれば接触することなく離れていってくれればいいんだけどね」
この場合のシュミレーションとは接触方法やその後に起こるであろう行動のことである、友好的な場合は接触できた方法でそのまま通信していけばいいが、敵対した場合有効攻撃手段やそのエネルギー量の算出、戦場が拡大しないような対処、そして惑星への影響確認である。
「わかりました、そうですね人々が住んでいる星に被害がでたりすると惑星規模の被害になるでしょうから」
指示を出してからおよそ24時間がたった、惑星の自転も地球とほぼ同じなので地上でも1日たったはずだ。
窓から惑星を見ている(綺麗な星だな、地球とはちょっと違うがそれでも似ている感じだ)そんなことを考えていた。
「司令、至急管制室へ」ロプスからの呼び出しだ。
「わかった」自分の個室から急いで出て行った。
管制室の中ではエリアスが先に来ていた。
「どうしたんだ?」
「はい、偵察機が撃墜されました」エリアスが答えてくれた。
「撃墜?生物らしいものから撃墜されたってことは、そんなに接近したのか?」
生物だったら、わからない小さな物が近づいてきたら払ったり叩いたりするだろう、手みたいな物があったらだが。俺だって虫みたいな小さなものが回りでちょろちょろされたら叩き潰してしまうからな。
「いえ違います、撃墜される直前にエネルギー流を検知しています。なにかのエネルギー砲だと思われます、距離約10光秒でした」ロプスが言ってくる。
10光秒だったら近くは無いが遠くもないな、しかし・・・・
「生物らしいのにエネルギー砲まで持ってるのか?もうインチキ反則生物って感じだな」考えていたいたことをそのまま声に出した。
「いかがいたしましょうか」エリアスが聞いてくる。
「そうだな、簡単に敵対していると判断するには早いと思う。再度偵察機を出してさらに慎重に観測してくれ、なんらかの反応があった場合考えられる方法すべてで交信してくれ」
「「わかりました」」2つの声が返ってきた。
「念のためにもう一つ、この恒星系の太陽から6光時のところまで移動その後待機、万一の場合に備えておこう」