11話目 左右対称!
カベルin屋敷
「家令さん、彼女は皮膚の病気でここに療養に来たのではないのですか?」
エリアスと言う女性がこちらが話していないことをいきなり言ってきた。
「わかりますか、あんな魔道具を使うのですからわかりますよね」
たしかにそうだ、病気を調べる魔道具など見たことも聞いたこともない。
彼らが何者なのかいよいよわからない。
「子供のころから皮膚が突然炎症を起こしたり、水ぶくれができたり、何もしてないのに手のひらくらいの広さから血が出てきたりするのです」
「やはりそうですか」
「はい、その病気でお嬢様はずっとつらい思いをしてまいりました」
たしかにそうだ、
そこまで話して、彼らはこちらから顔をそむけ何やら小声で話している。
「司令、皮膚炎も・・・・・・・」
「いいんじゃ・・・、インフルエンザ・・・・そっちの治療・・・・」
「ただですね、年齢が・・・・・・・・かなり固・・・・・・・・・・があります、湖の屋敷・・・・・・ません」
「そうなのか、それはちょっと・・・・・・・・ならないか?」
「何か・・・・えますか」
「そうしてくれ」
聞き耳を立て彼らの話を聞いていた、私はかなり耳がいいほうだ。
少し話を聞きとることができた。
病気はインフルエンザと言うのか?聞いたことがない、それに司令とか言っているし軍隊らしき言葉だ、それに湖の屋敷?
湖に屋敷を持っている有力者や貴族はいるが彼らのような人の話は聞いたことがない、どこの湖のことを言っているんだ?
エリアス女史は家令に向きなおり、治療について話がしたいのでどこか落ち着けるところがないか聞いている。
治療?皮膚の病気を治せるのか?10年以上にわたり国中の薬師や治癒魔導士が投げ出したのに。
それともただのはったりか?
ともかく熱が下がりインフルエンザと呼んでいる病気が治ってからだ、まずこれが治らないことには信じることができない。
エリアスin屋敷
応接室のようなところに案内された、家具なども品良く配置されてここが趣味のいい貴族の屋敷だと認識させられる。
「皮膚の病気なのですがどこまでわかっていますか?」
「そう言われましても、家令と言う身分では詳しくは聞かされていないのです、カベルどのはいかがですか?」
「私も詳しくは聞かされておりません」
「そうですか、皮膚の病気は多発性皮膚炎と言います、両親からの遺伝組み合わせの要素もありますが、アレルギーの側面もあり、免疫不全な側面もあり、同時にいくつもの治療を平行して行わなければいけません」
「イデン?アレルギー?それとなんですかメンエキなんとか?いったいそれらはなんなのでしょう?」
タスク指令がここで口を開いた、小さな声だ。
「そっか、たしかに今の状態でそんな話をされてもわからないな」
「たしかにそうですね、できるだけ簡単に話します」
「「お願いします」」2人が合わせたように返事をした。
「彼女の皮膚の病気の原因は最低でも3つ以上の原因があり、治すにはその原因すべてを同時に治していかないといけません」
「なるほど」家令さんがわかってるのか返事をした。
「ご両親や親戚の方に体の弱い方や何か食べられない物があるとか居ましたでしょうか?」
「はい、たしかにご親戚も含めますといたはずです」
「そう言った人たちとも彼女は血縁関係にあるわけですから、同じような症状が出てもおかしくありません、そして場合によっては症状がいくつも出てしまう場合もあるのです」
「そんなことが?」
「はい、そしてその症状が重なると新しい症状が出てくるのです」自分で言っていてかなり大雑把な説明だ、しかも抜けもかなりある。
「そうなのですか?」
「はい、そして原因がわかればそれを取り除いたり、そこを治したりすれば症状は出てこなくなるのです」
「確かに理屈としてはわかります、しかしそれができるのですか?」
「はい、私たちにはできます、しかしなんにしてもインフルエンザが治ってからです」
「あの病気はインフルエンザと言うのですか?」
「そうでした、その名前をお教えすることも忘れていました」
私たちはその後、明日また様子を見に来ると言い屋敷をあとにした。
カベルin屋敷
夜にはお嬢様の熱も下がり、立って歩けるくらいまで回復した。
あんなに重い症状だったのに信じられない気持ちでイッパイだ。
最初は彼らをどこかの間諜か何かかも知れないと考えたが、その可能性は低いのではないだろうか。
病気をこんな短時間で治せるような者を間諜に使うなど考えられない。
それにこう言ってはなんだが、我がガウスレバス家は中央から遠ざかって久しい、いまさら間諜を潜り込ませても何も意味が無い。
しかしどこの誰かわからないことには違いない、隊のものに調べさせたほうがいいだろうな。
「お嬢様、早めに寝てください。ずいぶん回復しましたが明日また治療の者が来ますのでそれまで無理をしないでください」
お嬢様は使用人と広間で話をしている。
「そうですね、今朝はもう立って歩けなくなるのではと思っていたのが、夜にはこうやって元気に歩けるようになるなんて信じられないです」
「そうですとも」使用人の女性が同意をしめした。
「わかったわ、明日来られる方に会うまで自重します。それにしてもどんな方なのですか?来られたときは意識が朦朧としてよく覚えていないの」
「そうでしたよね、お嬢様は意識もハッキリしていなかったですよね」と使用人の女性、
「30くらいの男性とその使用人の女性ですよ」と俺、
「そうなの?会えるのが楽しみです」
「早くお部屋に戻りお休みください」最後は家令が声をかけ部屋に戻るのを急かした。
翌日 タスクin屋敷
翌日の昼過ぎに昨日の屋敷に向かった。
「こんにちは、昨日お伺いしました如月です」
「はい、お待ちしていました、どうぞお入り下さい」家令さんがドアを開けてくれた。
中に入りあれからのどうだったか歩きながら聞いてみた。
「お嬢様の熱は下がりました?」
「はい、夜には熱も下がり元気になられました」
「そうでしたか、それは良かった」
「ところで昨日いらしたエリアス殿は?」
「エリアスでしたら移動のための荷造りをしてますよ」
「荷造り?どこかに行くのですか?」
「忘れてるんですか?私は売り歩きしている商人ですよ、市場も今日までですから夜には出発しようと思ってます」
「行ってしまわれるのですか、お嬢様の病気を治していただけると言ってましたが・・・」
「はい、そのことについても相談がありまして」
そこまで話すと目的の部屋の前まで着いてしまった。
「話はのちほど、お嬢様にはまだ話さないでおいてください」
「なぜですか?」
「治せることは治せますが準備に少々時間がかかるかもしれないのです」
「そうなのですか、わかりました」
家令さんがドアをノックして中に入っていった、俺も後ろからついていった。
部屋の中には昨日の女性がベットに腰掛けていた、女中の人と話をしていたようだ。
「昨日来ていただいた如月殿です」
「ありがとうございます、ガウスレバス家のセフォリアといいます」
自己紹介を受けた、思った以上に元気になっている昨日のが嘘のようだ。
ベットに寝ていたので昨日は判らなかったが、彼女は金髪が腰近くまでのび、背は150cmを少し超えるくらいだろうか、体格は均整がとれているが少し細い感じがする、そして印象に残るのはその瞳だった、緑色の瞳で吸い込まれそうな深い色をしている。誰もが第一印象は綺麗と感じるだろう。
しかし、着ているのは手足のさきまで隠れる衣服を身につけ手袋まではめている、顔以外の皮膚が人目につかないようにしているのだろう。
「如月タスクといいます、お元気になられてよかった」
「はい、昨日の夜には起きて歩くことも出来るようになりました」
「そうでしたか」薬が効くと同時に体力回復も効いたな、良かった。
その後、女性と家令さんと少し話をして部屋を出て行った。
「皮膚病についてなのですが、7日後くらいにもう一度この村に来ますので準備をしてきます」
屋敷の玄関で家令さんと話をしている。
「ほんとに治るので?」
「ハハハ、信じられないのも判りますが治せますよ」
「そうですか、それと今回のお礼なのですが、受け取ってください」
そう言って硬貨が入っているのだろう袋を渡してきた。
受け取らずに慈善事業のようなことをするとかえって怪しまれると思い受け取った、ただでさえしばらく治らなかった病気を治そうとしているのだから出来る範囲で怪しまれないようにしないと。
(タスクたちは勘違いしていた、女性の病気は時間さえかければこの星の技術でも治せると思っていた、まさか10年以上にわたり苦しんでいた難病とは思っていなかったのだ)
お嬢様in自室
家令が男性を連れてきた
「昨日来ていただいた如月殿です」
この人が治してくれた方?思ったより若いわね。
「ありがとうございます、ガウスレバス家のセフォリアといいます」
礼儀正しく挨拶を、家の印象が悪くなるのはまずいですから。
でもなんかじろじろ見られてちょっと不快、まあ私の病気をしって見ているのでしょうけどそれでもちょっと・・・。
「如月タスクといいます、お元気になられてよかった」
あら、声の感じは思ったより年上って感じ、見た目より歳がいってるのかしら?
「はい、昨日の夜には起きて歩くことも出来るようになりました」
「そうでしたか」
その後、タスクさんと家令とで話をして出て行った。
「ねえ、さっきの男性どう思う?」この村からきてもらってる女中に声をかけた。
「タスクさんですか?」
「ええ」
「いい方ですよ、村の病人も治してもらったし、しばらく前から村に物売りに来ている方なんですよ」
「物売り?商人なのですか?」
「そうですね、気さくな方ですよ、一緒にエリアスさんって方も来ていて彼女は使用人って感じでしょうか」
「そうなの」商人なの?それにしても商人がこんなに効く薬を普通に扱ってるなんてどういうこと?
「珍しいものを売っていて、村の女性で知らない人は居ないですよ」
「珍しいもの?どんなの?」
「お嬢様にはそうでもないでしょうけど、村では結構人気の小物なんですよ」
そういって女中は普段は髪に隠れいているイヤリングをとって見せてくれた。
なに?これ?こんな細かい細工見たことが無い、それにこんな色が出せるなんて、しかも細工が完全に左右対称にできている。
人の手でここまで出来るものなの?
「こんなものが・・・・」
「中央では普通に出回ってるんでしょうけど、どうですかお嬢様」
「ええ、そうね、たしかに中央ではたまに見かけますね・・・」(見たことなんて無いわよ)
「どうかしましたか、お嬢様」
「なんでもないわ、ちょっと考えたいことがあるので一人にしてくれます?」
「???わかりました、失礼します」そういって女中は部屋から出て行った。
あんな綺麗なものを扱ってるなんて、私も欲しいかも・・・・じゃなくてどういう人なんでしょう?
また会えないかしら、村に来ているってことは定期的にきているのかしら。
たしかこの村は5の着く日に市場が立っていたはず、今回の市は今日で終わりのはず、
次はたしか7日後、次会うことができれば色々詳しくお話したいですね。