事故と結末
第二十五章 アメリカの事故 ― MCSU-US暴走事件
アメリカ・ネバダ州の砂漠地帯。
MCSU-US試作機の耐久試験が行われていた。
アメリカ製の操作ユニット(OSモジュール)を搭載した試作機は、
最初は正常に動いていた。
だが――
突然、試作機が制御不能になった。
「停止命令が通らない!
緊急停止コードも反応しない!」
技術者たちが叫ぶ。
MCSU-USは暴走し、テストコースの外へ向かって走り出した。
幸い、周囲に人間はいなかったため被害は出なかったが、
アメリカ軍は衝撃を受けた。
「……日本製の制御MPUは正常に動いている。
暴走したのは“アメリカ製操作ユニット”だ」
技術顧問のマクレガー博士が言った。
「OSモジュールの安全性が不十分だった。
日本の制御MPUとの相性問題もある」
アンダーソン局長は深く息を吸った。
「日本に連絡しろ。
この問題は、我々だけでは解決できない」
第二十六章 市ヶ谷の反応 ― 日本製ユニットの圧倒的安定性
東京・防衛省。
アメリカからの緊急報告を受け、技本の技官たちが集まった。
「アメリカ製操作ユニットが暴走したとのことです」
「日本製ユニットでは同様の事例は一度もない」
「原因はアメリカ側のOSモジュールの安全性不足と推定されます」
三浦一尉は静かに言った。
「MCSUは、市販品ユニットを組み合わせて作る装備だ。
だが、制御系だけは“日本の思想”で作られている。
そこにアメリカのOSを無理に合わせれば、齟齬が出る」
技本長官が頷いた。
「アメリカは日本製ユニットを採用するしかないだろう」
その予想は、すぐに現実となった。
第二十七章 日米再交渉 ― 日本製ユニットの採用決定
防衛省と国防総省の緊急会談。
アンダーソン局長は率直に言った。
「日本製操作ユニットを、MCSU-USに採用したい」
日本側は驚いたが、すぐに理解した。
「アメリカ製ユニットでは安全性が確保できない。
日本製ユニットは安定している。
それが理由ですね?」
アンダーソン局長は頷いた。
「そうだ。
日本の制御思想は、我々のものとは違う。
だが、MCSUの根幹は日本の技術だ。
それを認めざるを得ない」
日本側は静かに答えた。
「日本製ユニットの採用を認めます。
ただし――」
技本長官が続けた。
「兵器ユニットは各国が自由に選択できる“モジュール方式”に変更します」
アメリカ側は目を見開いた。
「つまり、
日本製の制御ユニット
各国製の武装ユニット
市販品の駆動ユニット
を組み合わせる“国際標準MCSU”を作るということか?」
技本長官は頷いた。
「その通りです」
アンダーソン局長は深く息を吸った。
「……日本は、世界の標準を作ろうとしているのか」
三浦一尉が静かに言った。
「MCSUは兵士を守るための装備です。
その思想は、日本が主導すべきです」
アンダーソン局長は笑った。
「いいだろう。
日本製ユニットを採用する。
武装は我々が選ぶ。
それで共同開発を続けよう」
第二十八章 世界への拡散 ― NATO・フィリピン・台湾・タイ
MCSU-USは、アメリカ製武装ユニットを搭載し、
日本製制御ユニットを採用した“国際標準型”として完成した。
アメリカはすぐに動いた。
■ NATOへの配備
ポーランド
ドイツ
イタリア
ノルウェー
イギリス(限定導入)
NATOはMCSU-USを「歩兵損耗を減らす装備」として高く評価した。
■ フィリピンへの輸出
南シナ海情勢の緊張から、
フィリピンはアメリカ経由でMCSU-USを導入した。
日本も動いた。
■ 台湾への輸出
台湾は日本製の制御ユニットを高く評価し、
日本製MCSUを導入した。
■ タイへの輸出
タイは市販品ユニットで整備できる点を評価し、
日本製MCSUを採用した。
世界は動き始めていた。
MCSUは、
日本製制御ユニット
各国製武装ユニット
市販品駆動ユニット
という“国際標準ロボット兵器”として広がっていった。
第二十九章 エンディング ― 日本の逆襲
東京・市ヶ谷。
三浦一尉は、並んだMCSUとMCSU-USを見つめていた。
吉岡曹長が言った。
「……日本製ユニットが世界標準になるなんて、
誰が予想したでしょうね」
三浦は静かに答えた。
「日本は、静かに、確実に、世界を変える。
それが俺たちのやり方だ」
灰色の空が、少しだけ明るく見えた。
MCSUは静かに立ち、
世界の新しい秩序の中心にいた。




