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第51章:エピローグ



アバドンの消滅から、王都は一変した。


空を覆っていた漆黒の質量が、

ルルノアの歌声とアイルの『黄金の三日月』によって

無数の光の粒子へと変わり、

街に降り注いだあの日から――王都は「三日三晩」の祝祭に酔いしれていた。


「ルルノア様に乾杯!!」


「俺たちの命の恩人、ゼノス様に乾杯だ!!」


中央広場には、

兵士も市民も貴族も関係なく、

肩を組んで笑い合う人々で溢れかえっている。


屋台からは香ばしい肉の焼ける匂いと、

最高級の酒樽がいくつも抜かれる小気味いい音が響き、

広場の中央には魔導演出技術を駆使した巨大な噴水が、

七色の光を放ちながら夜空を彩っていた。


これほどまでの「多幸感」が、

かつてこの国の歴史にあっただろうか。



いや、ない。人々は死を覚悟したからこそ、

今、生きている喜びを爆発させていた。


「地獄の淵まで追い込んでやった甲斐があったな。

……この熱狂こそが、俺が欲しかった最高の報酬だ」


ゼノスは喧騒から少し離れたテラスで、

祝杯用のワインを揺らしながら、

広場の中心に立つ少女を見守っていた。



王宮のバルコニーでは、

この国の王が正装に身を包み、

ルルノアの前に跪いていた。


「……ルルノア。貴女の歌声がなければ、

この国は今頃、地図から消えていたことだろう。

貴女はもはや、一人のアイドルではない。

この国の、そして人類の『希望』そのものだ」


王はその手で、

代々の王族にしか授与されない

最高位の勲章――『暁光の聖十字勲』を

ルルノアの胸元に掲げた。


それは軍事的な功績を称えるものではなく、

ただ一人の少女が、

その歌声で十万人の心を救ったことに対する、


国家最大の敬意の証だった。


「……ありがとうございます。

でも、これは私だけの力じゃありません。

おじさんやアイルちゃん、

そして……一緒に歌ってくれたみんなの勲章です」


ルルノアがそう言って微笑むと、

広場からは割れんばかりの拍手と喝采が巻き起こった。


受付嬢だった頃の彼女なら、

王の前に立つだけで失神していただろう。

だが、今の彼女は違う。


十万人の命を背負い、

魔神さえも「満足」させて消し去った真のスターだ。

その瞳には、揺るぎない自信と慈愛が宿っていた。


「おじさん、見てて。……私、もっともっと、

みんなを幸せにするよ」


ルルノアはテラスのゼノスに向けて、

小さく、だが確かなファンサの合図を投げた。

 

「……へっ、生意気に。

……だが、いいだろう。……お前の輝きは、まだ序の口だ」



宴のクライマックス。

 


ルルノアが再びステージに立った。


特別な演出はない。


クローディアが用意した数基の魔導スピーカーと、

簡易的な魔法照明ライト

それだけで十分だった。


「みんな、最後に一曲だけ……。

私の大好きな歌を、聴いてください」


イントロが流れ出す。



明るく、それでいてどこか切ない旋律。

 


アイルが舞台袖でリズムを取り、

カルティアが祈るように見守る。


市民たちはペンライトの代わりとして、

手にした酒杯や魔法の灯火を高く掲げた。


「――♪ 遠く離れていても、

光が届かなくても……私の声が、君の盾になる……」


ルルノアの歌声が、

夜風に乗って王都の隅々まで染み渡る。


それは戦いのための歌ではない。

傷ついた人々の心を癒し、

明日へ一歩踏み出すための、

優しい子守唄のような響き。


ゼノスは目を閉じ、

その完璧な調律チューニングに酔いしれていた。 


(完璧だ。……これ以上のライブは、この世に――)


そう確信した、その時だった。


 ――プツッ。


不気味な、乾いた音がした。


「……?」


ルルノアが目を見開く。


誰も、何が起きたかわからない。


ただ、一つだけ確かなことがあった。

 



――何かが、終わった。




 

第一部完結です!ありがとうございました!

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