第5話:最強にエモーショナルに、優勝です!
魔法が当たり前にある世界で、
技術を超えた
「歌」という名の熱狂が。
最強の反撃を開始した。
絶望が支配する広場。
黒犬の群れが、
カルティアの防衛線を
飲み込もうとしたその瞬間――。
戦場に、場違いなほど
澄んだピアノの旋律のような、
鋭い魔力の振動が走った。
「――お前たちの『絶望』なんて、
彼女の『一音』で終わらせてやる」
ゼノスが、枯れ果てた魔力を
絞り出すように指先を震わせた。
口の端から細い血を
流しながらも、彼の指先からは、
銀河の如き煌めきを湛えた
魔力糸が展開される。
それは、ただの支援術式ではない。
ゼノスがかつて魔界で培った、
光と音を物理的に増幅させる
独自の「演出術式」だ。
糸の振動が周囲の空気を加熱し、
ルルノアを中心に、無数の
星屑のような光の粒子が
戦場へ舞い上がった。
「ルルノア。……歌え。
お前の、剥き出しの魂を、
世界に叩きつけろ」
ルルノアは、ゼノスを見た。
おじさんの身体はボロボロで、
今にも崩れ落ちそうだ。
それでも、その瞳だけは
「この世界で一番美しいものを見ている」
と確信に満ちていた。
自分を信じてくれる人がいる。
その熱が、彼女の喉を震わせた。
ルルノアは、叫んだ。
――♪
三日月の欠けた その隙間に
溢れ出すほどの 星を詰めて
世界を 僕を ひっくり返す
きまりごとなんて ステップで踏み越えて!
一瞬の光が ずっとを射抜く
君の輝きが 僕の答えだ
この欠けだらけの 方程式を解いて
0(ゼロ)に1を足して――無限を叫べ!
ーー♪
その瞬間、最前線で戦っていた
カルティアの脳裏に。
今まで抑え込んできた感情が
溢れ出した。
厳しい騎士であらねばならない自分。
弱音を吐けず、常に
完璧を求められる息苦しさ。
そんな自分の心を、
ルルノアの歌が、
まるで「それでいいんだよ」と肯定するように。
優しく、けれど激しく包み込む。
(ああ……。私の心は、
ずっとこの声を、
この瞬間を探していたんだ……!)
愛称や外見的な「かわいい」を
超えた、もっと根源的な「共鳴」。
カルティアがルルノアを
「推し」として、
心から肯定したその瞬間。
ルルノアの固有スキルが
臨界点を超えた。
カルティアの身体が、
これまでの魔導士が放つ
青白い光とは違う。
生命力そのもののような
黄金色の輝きを放った。
「――全軍、私に続け!
彼女の歌こそが、
私たちの明日だッ!!」
カルティアの剣が、
まるで光の軌跡を描く
彗星のように振るわれ。
一撃で十数体の魔物を消滅させた。
腰を抜かしていた
若手冒険者たちも、
涙を流しながら武器を振るう。
「なんだこれ……
身体が勝手に動く!
涙が止まらねえよ……っ!」
戦場は、もはや
悲惨な争いではなかった。
一人の少女の歌声によって
指揮された、美しき熱狂の
シンフォニー。
ゼノスはそれを見つめ、
静かに震えた。それは喜び。
(カルティアのバフの出力、想定の10倍だ…。
まだファンになっていなかった他の冒険者たちへの影響も…。
しかも、まだ完全ではない。
ルルノアのステージ次第では出力も、範囲も
さらに跳ね上がる…⁉)
(……ゼオ。
お前はこの熱を
『非効率な無駄』と呼んだ)
(だが、見ていろ。
この無駄こそが、世界を、
そして魔法すらも変える
未知の方程式なんだよ)
ルルノアの歌声が、
夜空を突き抜けるような
ラストフレーズを駆け抜け。
戦場を浄化する光で満たした。
第1章(1〜5話)を読んでいただき、
ありがとうございました!
ついにルルノアの歌が戦場を「ライブ会場」に変え、
最強の親衛隊(?)カルティアが誕生しました。
元魔王ゼノスのプロデュースは、ここからさらに加速していきます。
さらなるピンチに立ち向かうルルノアたちや、
ライバルなども登場します。
「ルルノアを応援したい!」
「ゼノスのプロデュース術の続きが見たい!」と
思ってくださった方は、
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次回更新は2/21(土)22時です。またお会いしましょう!




