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第33章:新星ユニット? 鋼のビートと少年騎士



王都の喧騒を離れた一角。


そこには王国軍が管理する魔導演習場があった。


そこに、今回の作戦の「技術支援」を担当する、

十三英団が一人――『Qクイーン至宝アーティファクト』の

クローディアが待ち構えていた。


「お久しぶりです、カルティア。

相変わらず、その銀鎧を汚さずに生き延びているようですね」


現れたのは、知的な眼鏡をかけ、

魔導技術局の制服を完璧に着こなした美女だった。


カルティアの元上司であり、

戦闘よりも「戦場を支配する道具」を作ることに

執念を燃やす女性だ。


「いまでも思い出すわ。採寸から何から、貴方との密なる日々を」


「く、クローディア様!ただのオーダーメイドの作業であってーー」


「それなのに、貴方様ったら、

騎士団を抜けてしまうのだから。

私の『銀鎧』の魔道効果と

合わさって、『神速』や『不動』、いいえ、

『到達者』だって目指せたのに。



「……私は凡才ですよ、クローディア様。

……ところで、ここにいらしたということは、

貴女が今回のバックアップを?」


「ええ。

……ゼノス様、貴方様は戦闘に使わない魔術を

演出術式として

昇華している、と伺いました。

『ステージ演出』。

私の魔道具開発により更なる進化を望めるでしょう。」


クローディアはその透き通った声で冷静に言い放つが、

その視線はルルノアを興味深そうに観察している。


そんなプロ同士の緊迫した再会を、

一陣の風が切り裂いた。


「あはは! まーた難しいおはなししちゃってさ、クローディアさん。

理屈より、まずは『音』を合わせなきゃ始まらないでしょ!」


Aエース』のアイルだ。


アイルは演習場の中央に立つと、

腰の細剣――『月虹』を抜き放った。


その瞬間、空気の震えが変わった。

一見、華奢な少年にしか見えないその体から、

凄まじい威圧感が放たれる。


「ルルノア、歌ってよ!

僕の剣に、君の声を乗せてみて。

……おじさん、いいよね?」


アイルがゼノスを振り返り、不敵に笑う。

ゼノスは不敵に口角を上げ、ルルノアに頷いてみせた。


「……面白い。最強の矛と、最高の歌。

これが混ざればどうなるか

……『合同レッスン』といこうじゃねえか」


ルルノアが喉を整え、声を出す。

だが、アイルの動きは速すぎた。


シュンッ! という鋭い風切り音と共に、

アイルの剣が空中に幾何学的な軌跡を描く。

そのあまりの「速さ」に、

ルルノアの歌のテンポが追いつかない。


「……あれ? 合わないな。

ルルノア、もっともっと速く!」


「は、はい!

……う、うぅ、追いつけない……っ」


神速アクセルのA』アイル。

音速すら超えるそのスピードは、

継続的にバフを受けるために、

ルルノアとの波長を合わせることが必要である。


焦るルルノア。それを見て、

カルティアが静かに一歩踏み出した。


「ルルノア。私に声を重ねてください。

……貴女の旋律を、私がアイルまで繋ぐわ」



カルティアが、

ルルノアの主旋律に寄り添うように、

低く、力強い『コーラス(和音)』を重ね始めた。


聖騎士の魔力を乗せた重層的な響き。

それがアイルの剣の風圧に干渉し、

歌と剣の「波長」が、初めて噛み合った。


「――っ! これだ!!」


アイルの剣が黄金色に輝き、

演習場の巨大な石標を一瞬で粉砕した。


これまでのバフとは違う。

歌い手が増え、響きが重なることで、

効果が幾何級数的に膨れ上がる

――『バフの連鎖レゾナンス・チェイン』の

萌芽だった。


「すごい……! カルティアさんと歌うと、

私の声が、アイル君まで真っ直ぐ届く感じがする!」


ルルノアが目を輝かせる。アイルも「最高だよ、これ!」とはしゃぎながら、ルルノアの肩を抱いた。


その距離感は、まるで仲の良い友達のようだ。


だが、その光景を後方で見守っていたゼノスだけは、冷徹な目でアイルの「喉」の震えを凝視していた。


「……なるほどな。カルティアのコーラスに引っ張られて、アイル、お前の魔力の『波形』が露骨に変わったぜ」


「(……ふん。理由は知らんが訳はありそうだ。

隠し通したいなら勝手にしろ。だが、次のステージ……

お前がその『仮面』を脱ぎ捨てた時、

この王国は本当の意味で熱狂することになるぜ)」


ゼノスは、それを口には出さず、

ただ次の「ユニット編成」の完成図を、

頭の中でニヤリと描き上げた。



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