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第21章:『共鳴の方程式』、完封す



『共鳴の方程式レゾナンス・フォーミュラ』。


ルルノアが放った新曲の第一声は、

ギルバートの絶望の静寂を、

文字通り「物理的に」粉砕した。


ズン、ズン、ズン……!


それは、兵たちの心臓を直接叩き起こすような、

激しいビートだった。


無骨なメロディラインは、

ソリラリスの虚無の歌とは真逆。


聴く者の根源的な「生きたい」という本能を刺激し、

血流を加速させる。


「なっ……何だこの歌は!?」


アステリアがその体をよろめかせた。


彼女の全身の細胞が、勝手に熱を帯び、

筋肉が軋みを上げて動き出す。


兵の士気をあげた、ルルノアの魅力への

『理解』はある。

だが、まだ本当の意味でら『ファン』になってはいない

アステリアですら、バフの影響が出ている。

まるでアステリアの手を、

ルルノアの歌が引いているかのようだ。

 

兵士たちの間に広がっていた瘴気による脱力感は、

どこかへ吹き飛んでいた。

 

代わりに湧き上がるのは、闘志。

そして、ルルノアを守るという、

『ファン』として当たり前の本能的な「使命感」だった。


「ひるむな! 死霊騎士団デスナイト

奴らを沈黙させろ!」


ギルバートが杖を振るが、彼の命令は届かない。


死霊騎士たちは、

ルルノアの歌によって発生する

「メロディの壁」に阻まれ、進軍が鈍る。


ソリラリスの虚無の歌も、

ルルノアの爆発的な熱狂の前に、

まるで砂の城のように崩れ去っていた。


「いけえええええええ!!」


バルカスが、燃え盛る鬼のような形相で叫んだ。

巨大な戦斧を振り回し、

城壁を登り始めた剥製の兵を、一撃で叩き落とす。


彼の筋肉は、ルルノアの歌に合わせて、

通常ではありえない出力で躍動している。


「……まさか、歌でここまでとは……!」


アステリアも、その潔癖な表情を驚愕に染めていた。


彼女が率いる第三騎士隊の兵士たちが、

まるで練度の高い部隊のように、

ルルノアの歌のリズムに合わせて動き出す。


恐怖を忘れた彼らは、

ただルルノアの歌を守る盾となり、剣となる。

まさに「共鳴」だ。


「ルルノア! そのままだ! 全てを巻き込め!」


ゼノスが、高揚した声で叫んだ。

彼の周囲には、魔法陣がいくつも展開している。

ルルノアの声を増幅し、

兵士たちの精神と同期させるための、

ライブ専用「魔術演出方程式」だ。


人間ほどしか持たない魔力を、戦闘ではなく技術にする。

省エネ型な魔術。

「これもひとつのゼオの野郎の大好きな『効率』だが、

あいにく俺のは節約タイプってやつだ」


ルルノアの歌声は、

関門の隅々まで行き渡り、

兵士たちの心に直接語りかける。



そこには、「誰かのために歌う」という、

ポルカ村で得た純粋な決意があった。


誰も死なせたくない。

マーサさんの息子に新しい靴を。

ロキ君に教会の約束を。


その「願い」が、

歌声となって兵士たちを突き動かす。


銀の鎧を纏ったカルティアは、

ルルノアの傍らで、静かに剣を振るっていた。


彼女の剣筋は、

ルルノアの歌のリズムに完璧に同期している。


剥製の兵がルルノアに迫るたび、

カルティアの剣が閃き、

正確に、そして優雅に敵を薙ぎ払う。


それは、アイドルを守る聖騎士の舞踏であり、

同時にルルノアへの、絶対的な信頼の証だった。


「……ソリラリスの虚無を打ち破り、

兵を鼓舞する。……まさに、奇跡だ」


カルティアの瞳は、ルルノアへの賛美で輝いていた。


数分後。


第一防衛線は、

死霊騎士団の侵攻を完全に食い止めていた。


数体の剥製の兵が関門内に入り込んだが、

それもルルノアの歌に鼓舞された兵たちによって、

瞬く間に塵と化す。


ギルバートの第一攻勢は、まさかの「完封」だった。


関門の兵たちは、疲労困憊ながらも、

勝利の歓声に包まれる。


彼らは、自分たちの体が、

ルルノアの歌によって、

信じられない力を発揮したことを肌で感じていた。


ロキは、再び槍を強く握りしめ、

マーサは涙を流しながら空を見上げた。


「……なるほど。これが『バフ』。いや、『アイドル』の力。

……そして、これはまだ始まりに過ぎない」


ギルバートは怒りに顔を歪め、

空中のソリラリスに目を向けた。


ソリラリスもまた、

虚無の瞳の奥で、

ルルノアという自分との「不協和音」に、

かすかな「感情」のざわめきを感じ取っていた。


しかし、この勝利は、まだ嵐の前の静けさに過ぎない。


ゼノスは知っている。

魔王ゼオの「効率」は、こんなもので終わらないことを。


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