第3章 11月30日 ぎこちない日曜日
11月30日
――10:30
その日は、昨日と同じように昼近くまでぐっすり眠ってしまった。けれど、いつもと違う。甘い香り、柔らかいものが頬に触れる感触、そして、妙に暖かい気配。
違和感に押されて、途中で目を覚また。
隣を見ると、彼女――ノエルがすぐそばで眠っていた。
「…………聖也く〜ん。」
寝言を漏らしながらぐっすりと眠っていた。
もちろん昨夜何かあったわけではない。本当に何もしてない…
そんなことを思っても、心臓の音だけが自分に聞こえる気がした。彼女を起こさないようにそっと部屋を出ようとしたところで彼女がゆっくり目を開けた。
「聖也くん…おはよ……」
「おはようございます」
「あぁ、また敬語…タメで言ってよ……」
ノエルは布団に丸まりながら、じっとこちらを見つめている。そのまま無防備に布団から出ようとして――
「ちょっ……!出るなって!」
「……なぁに、そんなに慌てて」
ぽかんとした顔のまま出ようとするが、その寝姿は控えめに言っても危なかった。
「いや、はだけてるんだよ。早く服、着て!!」
ノエルは小さく笑って、あざとく首を傾けた。
「やだ……
だって、聖也くんに甘えたかったんだもん」
その甘い声に、胸の奥が強く鳴った。
――12:30
ノエルは着替えを済ませ、俺は昼食の準備をしていた。さっきの騒動で朝を食べ損ねていた。
卵を取りだし、簡単な炒め物を作ろう思っていた時――
「ねぇ。聖也くん。これで済ませるつもり?」
背後から声がして振り返ると、ノエルがじっと俺の手元を見つめていた。
わずかに頬を膨らませていて、どこか不満げだ。
「いや、別に急いでるし……軽くでいいかなって」
するとノエルは一歩近づいて、ふっと微笑む。
「だめ。そんなの食べてたら、すぐ体壊すよ?」
「私が作ってあげるよ。ね、貸して?」
そう言って、俺の手からフライパンをそっと取り上げた。
距離が近くて、シャンプーの匂いがふわりと香る。
ついさっきまで布団で寝ぼけていた少女とは思えない。
整えられた姿のノエルは、どこか“面倒見のいい年上の女性”のようだった。
同日 15:00
俺はジムとランニングのため運動着に着替えた。それを見た彼女はじっと見つめて
「どこ行くの?」
「ジム……」
「着いていく。……私も綺麗になりたいし」
「普通に綺麗なんだけど……」
「だから、もっと綺麗になりたいの!!
あなたがちゃんと見てくれるくらい……惚れさせるくらいに」
真剣な眼差しに負けて、結局一緒に筋トレとランニングをすることになった。
同日 19:00
彼女の料理を食べ終え、俺は趣味のゲームに費やしていた。
彼女は構ってくれなくて膨れて
「画面の女の子が好きなんだ…
可愛いもんね……
ねぇ、聖也くん、私とどっちがいいの?」
俺は手を止め、セーブして電源を切り寝る準備をした。
そして、目を閉じた。
ノエルは聖也が寝ているのを見て…
「今朝のこと…
あれは………」
「だって、大好きだもん
ずっと一緒にいたいくらい……」
そう言って、ノエルはそっと寄り添うように、彼の隣へ潜り込んで静かに目を閉じた。




