第1章 2025年11月28日 冬支度の街で
2025年11月28日
会社を出ると、ビルの灯りだけが照らされた冷えた夜だ。いつもなら何も考えずに自宅まで帰っていくところだが、今日は違う。
Nintendo Switch2の抽選結果が出る日だったからだ。 今日は敢えて近くのカフェに向かった。
俺の名前は雪村聖也。今年で27歳。平日は仕事、休日はゲーム――そんなごく平凡な社会人だ。
近くのカフェで本を開きながらその瞬間を待っていた。
そして、結果発表の時間。俺はスマホを開く。
「厳正なる抽選の結果、落選となりました」
胸の内側がひどく冷えた。発売前から何度も抽選に申し込んでも全敗。深いため息をつきながら、俺は帰路へ歩き出す。
最寄駅に着く頃には、街はすっかりクリスマス色に染っていた。キラキラ光るイルミネーション。笑い合う親子。はしゃぐ子供たち。
その光景を見て、ふと少年時代を思い出す
――子供の頃はサンタさんにニンテンドーDSをお願いしたな…
だが、今は違う。
今どきの子供はサンタさんに頼んでも簡単に欲しいゲーム機を簡単に貰えないのだ。抽選という壁があるのだから。サンタさんでも流石に苦戦するだろう…
そんなことを考えていると、自分だけが季節に置いていかれた感じがした。
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家の灯りを照らすのはいつも一人だった。
狭いながらも1人で暮らしには十分なアパートでいつも通り自炊や家事を済ませていた。
……そして、ふとクリスマスであることを思い出した。
俺はノートとボールペンを取り出す。
何を血迷ったのか、俺は冗談半分でサンタさんに手紙を書いた。もちろんお酒は飲んでいない…
「サンタさんへ
今度こそNintendo Switch2が欲しいです」
直筆の手紙を書き終えて、同じ文体でXにも投稿した。サンタさんなんてこの世に居ないくらい、子供じゃないんだから知っている。
それでも、自分の書いた手紙を見て思わず苦笑した。
いい歳して何をやってるんだろう…
そんなことを思いながらも、狭い部屋で1人静かに天井を見つめる。
胸に漂う寂しさの中、俺はゆっくり目を閉じた。




