砂漠の王子とアイスコーヒー
異世界と現代日本を繋ぐ不思議な扉を持つ喫茶店。今日もまた、遠い世界から一人の旅人が訪れました。砂漠の王国から来たという若い王子は、見たことのない「冷たい飲み物」を求めています。果たして、彼はこの店で何を発見するのでしょうか――
――今日も平和な一日だ。
私はカウンターの奥で、いつものようにポットを温めながら店内を見回す。午後の日差しが窓から差し込み、砂糖壺がキラキラと光っている。焼き菓子の甘い香りが店内に漂い、ジャズのBGMが静かに流れている。
――まあ、この店はいつもこんな感じだ。常連客たちも午後になると集まってきて、それぞれの好みの飲み物を注文する。近衛兵の青年はいつもケーキを真剣な顔で食べているし、商人ギルドのおじさんは紅茶を飲みながら世間話に花を咲かせる。魔族の外交官はブラックコーヒーを飲んで、カフェインでテンションを上げている。
――今日は午後二時過ぎ。そろそろ常連客たちが来る時間だが、まだ誰も来ていないな。
突然、扉のベルが鳴った。
チリリン。
――お客さんか。でも、この時間帯は珍しいな。
振り返ると、そこには見慣れない男性が立っていた。白いターバンを巻き、砂漠の民のような服装をしている。額には汗が滲み、喉を手で押さえながら息を切らしている。年齢は二十代前半くらいだろうか。
――砂漠の民か。初めて見る顔だな。しかも、かなり暑そうだ。一人で旅をしているのか?
「い、いらっしゃいませ」
私が声をかけると、男性は慌てて姿勢を正した。まるで何かに追われているかのように、周囲をキョロキョロと見回している。
「あ、あの……ここは、お店ですか?」
――何だ、その質問は。明らかに喫茶店なのに。でも、砂漠の民には喫茶店なんてないのかもしれないな。
「はい、喫茶店です。お座りください」
男性は恐る恐るカウンター席に座った。手を膝の上に置いて、背筋をピンと伸ばしている。ターバンを少し緩めて、額の汗を拭っている。
――緊張しているな。初めての場所なのかもしれない。
「あの……冷たい飲み物はありますか?」
――冷たい飲み物?コーヒーでも飲まないのか。でも、砂漠の民は冷たいものを好むのかもしれないな。
「アイスコーヒーはいかがですか?」
「アイスコーヒー?それは、何ですか?」
――何?コーヒーを知らないのか。でも、砂漠の民にはないのかもしれないな。
「冷たいコーヒーです。氷を入れて冷やした飲み物です」
「氷!?それは、魔法の氷ですか?」
――魔法の氷?何を言っているんだ。ただの氷だ。
「いえ、普通の氷です。冷凍庫で作った氷です」
「冷凍庫?それは、何ですか?」
――冷凍庫を知らないのか。でも、砂漠の民にはないのかもしれないな。
「氷を作る機械です。食べ物を冷たく保つための箱です」
男性は目を輝かせた。まるで宝石のように美しい瞳が、期待に満ちて光っている。
「氷を作る機械……それは、魔法の道具ですか?」
――魔法の道具?ただの機械だ。でも、砂漠の民には初めて見るものかもしれないな。
「いえ、ただの機械です。でも、確かに便利な機械ではあります」
「そうですか……あの、アイスコーヒーをいただけますか?」
「はい、お作りします」
私はアイスコーヒーを作り始めた。コーヒーを淹れ、氷を入れて冷やした。コーヒーの香りが店内に広がり、男性の鼻がピクピクと動いた。
「これがアイスコーヒーです」
男性は恐る恐るグラスを手に取った。グラスの模様をじっと見つめている。
「あの……これは、魔法陣ですか?」
――魔法陣?ただの模様だ。でも、確かに魔法陣みたいに見えるかもしれないな。
「いえ、ただの模様です。飲んでみてください」
男性は恐る恐るアイスコーヒーを一口飲んだ。その瞬間、目を大きく見開いた。
「……あ、冷たい!でも、苦い!」
――当然だ。コーヒーだからな。でも、砂漠の民には初めての味なのかもしれない。
「これは、毒ですか?」
――毒?コーヒーは飲み物だ。
「いえ、飲み物です。苦いので、砂糖を入れて飲みます」
「砂糖?それは、魔法の粉ですか?」
――魔法の粉?ただの砂糖だ。でも、砂漠の民にはないのかもしれないな。
「いえ、ただの砂糖です。甘くする粉です」
男性は首をかしげた。
「甘い粉を入れる……それは、魔法の調合ですか?」
――調合?ただのコーヒーだ。
「いえ、ただの飲み物です。試してみますか?」
「は、はい!お願いします!」
――まあ、砂糖を入れてみよう。
私は砂糖を入れて、スプーンでかき混ぜた。スプーンがグラスに当たる音が静かに響く。
「これで甘くなります」
男性は恐る恐るアイスコーヒーを一口飲んだ。その瞬間、目を細めて幸せそうな表情を見せた。
「……あ、甘い!美味しい!」
――当然だ。砂糖を入れたからな。でも、砂漠の民には初めての味なのかもしれない。
「これは、本当に魔法の薬じゃないんですか?」
――薬じゃないが、確かに魔法みたいな味かもしれないな。
「いえ、ただの飲み物です。ミルクも入れますか?」
「ミルク?それは、魔法の液体ですか?」
――魔法の液体?ただのミルクだ。でも、砂漠の民にはないのかもしれないな。
「いえ、ただのミルクです。牛の乳です」
「牛の乳……それは、魔法の牛ですか?」
――魔法の牛?ただの牛だ。でも、砂漠の民にはないのかもしれないな。
「いえ、ただの牛です。でも、確かに魔法みたいな味かもしれません」
「そうですか……あの、ミルクも入れていただけますか?」
「はい、お入れします」
私はミルクを入れて、スプーンでかき混ぜた。アイスコーヒーがクリーム色に変わった。
「これでミルク入りアイスコーヒーです」
男性は恐る恐るアイスコーヒーを一口飲んだ。その瞬間、目を大きく見開いた。
「……あ、これも美味しい!これは、本当に魔法の飲み物じゃないんですか?」
――魔法の飲み物じゃないが、確かに魔法みたいな味かもしれないな。
「いえ、ただの飲み物です」
男性は安心したような表情を見せた。
「あの……ここは、本当に普通のお店なんですね」
「はい、普通の喫茶店です」
「そうですか……あの、この氷は、どうやって作るんですか?」
――どうやって作る?冷凍庫で作るだけだが。でも、砂漠の民にはないのかもしれないな。
「冷凍庫で作ります」
「冷凍庫……それは、どうやって氷を作るんですか?」
――どうやって作る?電気で冷やすだけだが。でも、砂漠の民にはないのかもしれないな。
「電気で冷やします。食べ物を冷たく保つための機械です」
男性は目を輝かせた。
「電気で冷やす……それは、雷の力ですか?」
――雷の力?まあ、電気だから雷の仲間かもしれないな。
「まあ、そうですね。でも、もっと安全に使える電気です」
「そうですか……あの、私の名前は、アリムです。砂漠の王国から来ました」
――アリムか。いい名前だな。
「アリムさんですね。よろしくお願いします」
「はい!よろしくお願いします!」
アリムは嬉しそうに答えた。その表情は、まるで子供のように純真だった。
「あの……アリムさんは、一人で旅をしているんですか?」
「はい、そうです。父王に言われて、新しい技術を学ぶために旅に出ました」
――父王?王子なのか。でも、確かに王子らしい服装をしているな。
「そうなんですね。大変ですね」
「はい、でも、いろんな場所を見ることができて、とても楽しいです」
――楽しいか。でも、一人旅は危険も多いだろうに。
「あの……アリムさんは、今までどんな場所を回ったんですか?」
「えーっと、人間の街や、ドワーフの山、それからエルフの森も見ました」
――エルフの森まで?かなり危険な場所も回っているな。
「すごいですね。危険な場所も多かったでしょうに」
「はい、でも、みんな優しくしてくれました。特に、食べ物を分けてくれる人が多かったです」
――食べ物を分けてくれる人?まあ、王子なら、みんな優しくするだろうな。
「そうですか。でも、こんなに美味しい飲み物があるお店は初めてですか?」
「はい!アイスコーヒーも、初めて飲みました」
――初めてか。でも、確かに砂漠の王国にはないかもしれないな。
「あの……この扉は、どうやって動いているんですか?」
――動いている?扉は普通に開閉するだけだが。
「いえ、この扉は、時々違う場所に繋がるって言いましたよね?」
「はい、気まぐれに繋がります」
「気まぐれ……それは、魔法の力ですか?」
――魔法の力?そんなものはない。ただ、この店の扉は不思議なだけだ。
「いえ、魔法は使っていません。ただ、この店の扉は不思議なだけです」
アリムは目を輝かせた。
「不思議な扉……それは、古代魔法の遺物ですか?」
――古代魔法の遺物?そんな大げさなものではないが。
「いえ、ただの扉です。でも、確かに不思議な扉ではあります」
「そうですか……あの、私、新しい技術を学んでいるんですが、この扉の技術について教えてもらえませんか?」
――新しい技術?でも、この扉に技術は使っていないんだが。
「いえ、技術は使っていません。ただ、この扉は不思議なだけです」
「でも、時々違う場所に繋がるって言いましたよね?それは、空間技術の一種じゃないですか?」
――空間技術?そんな大げさなものではないが。
「いえ、ただの扉です。でも、確かに不思議な扉ではあります」
アリムは少しがっかりしたような表情を見せた。
「そうですか……でも、とても興味深い扉ですね」
――興味深いか。でも、確かに不思議な扉ではあるな。
「あの……アリムさんは、どんな技術を学んでいるんですか?」
「えーっと、農業技術や、建築技術、それから冷凍技術も学んでいます」
――冷凍技術か。だから、氷に興味を持っているのか。
「すごいですね。いろんな技術を学んでいるんですね」
「はい、でも、まだまだ勉強不足です。特に、冷凍技術は難しいです」
――冷凍技術は確かに難しいだろうな。でも、この扉は冷凍技術じゃないんだが。
「そうですか。でも、この扉は冷凍技術じゃないんですか?」
「いえ、ただの扉です。でも、確かに不思議な扉ではあります」
アリムは首をかしげた。
「不思議ですね……でも、とても興味深いです」
――興味深いか。でも、確かに不思議な扉ではあるな。
「ありがとうございます。また来てもいいですか?」
「はい、いつでもどうぞ」
アリムは嬉しそうに笑った。その笑顔は、まるで砂漠の太陽のように明るかった。
「ありがとうございます!今度は、他の冷たい飲み物も教えてください!」
――冷たい飲み物じゃないが、まあいいか。でも、確かに冷たい飲み物かもしれないな。
「はい、お待ちしています。他にも美味しいものがありますよ」
「わあ!楽しみです!」
アリムは立ち上がり、ターバンを正した。そして、お金を置いて店を出て行った。
チリリン。
――また来るって言ってたな。まあ、面白い客だった。
私はグラスを片付けながら、今日の出来事を振り返る。
――砂漠の王子か。新しい技術を学んでいるって言ってたが、アイスコーヒーも知らないのか。まあ、異世界の住人だから仕方ないか。
――でも、冷凍技術の話をしていたな。この店の扉のことを言っていたのかもしれない。
――古代魔法の遺物って言ってたが、そんな大げさなものではない。ただ、この店の扉は不思議なだけだ。
――でも、確かにこの店は不思議な店ではある。時々違う場所に繋がる扉があるし、異世界の住人たちが来ることもある。
――まあ、また来てくれれば、そのうち分かるだろう。今度は、どんな反応を見せてくれるのか楽しみだ。
私はポットを温めながら、次の客を待つ。午後の日差しが窓から差し込み、店内は静かな時間を刻んでいる。
――今日も平和な一日だ。でも、砂漠の王子が来てくれて、少し賑やかになったな。
――アリムか。新しい技術を学んでいるって言ってたが、アイスコーヒーも知らないのか。まあ、異世界の住人だから仕方ないか。
――でも、冷凍技術の勉強をしているって言ってたな。この店の扉のことを言っていたのかもしれない。
――古代魔法の遺物って言ってたが、そんな大げさなものではない。ただ、この店の扉は不思議なだけだ。
――でも、確かにこの店は不思議な店ではある。時々違う場所に繋がる扉があるし、異世界の住人たちが来ることもある。
――まあ、また来てくれれば、そのうち分かるだろう。今度は、どんな反応を見せてくれるのか楽しみだ。
――アリムの新しい技術の勉強の話も聞けたし、なかなか面白い客だった。今度は、どんな冷たい飲み物と勘違いしてくれるのか楽しみだ。
――でも、一人で旅をしているって言ってたが、大丈夫なのかな。砂漠の王子が一人で旅をするのは、かなり危険なことだろうに。
――まあ、父王に言われて旅に出たって言ってたし、きっと大丈夫だろう。でも、また来てくれるといいな。
――今度は、どんな技術の話をしてくれるのか楽しみだ。冷凍技術の勉強をしているって言ってたし、この店の扉についてもっと詳しく聞いてみたいな。
――でも、この扉に技術は使っていないんだ。ただ、不思議な扉なだけだ。
――まあ、また来てくれれば、そのうち分かるだろう。今度は、どんな冷たい飲み物と勘違いしてくれるのか楽しみだ。
砂漠の王子アリムとの出会いは、この店にとってまた一つの小さな奇跡でした。氷という存在を知らなかった彼が、アイスコーヒーという新しい味を発見した瞬間の表情は、まさに宝物のような輝きを放っていました。
異世界の住人たちにとって、この店の扉は未知への扉でもあります。そして、私たちにとっては、彼らの純真な驚きと発見の喜びを共有できる、かけがえのない場所なのです。
今日もまた、この小さな喫茶店で、新しい物語が生まれました。明日はどんなお客様が扉を開けてくれるのでしょうか――
次回予告:雨夜に差し込む一筋の光。戦乱の孤児リュミエが、この店で見つけるものとは……?




