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光輪一
# 光輪一
広島平和公園に、新しい朝が訪れようとしていた。
原爆ドームの前に佇む桐原の姿を、最初の陽光が優しく照らす。半年前、あの夜から、世界は確実に変わり始めていた。
「先生」
研究員が駆け寄ってくる。
「第七個体が、目覚めました」
桐原は、静かに頷く。
七つ目の意識体。それぞれが少しずつ異なる個性を持ち、しかし確かに繋がっている存在たち。
「母さん」
彼女の意識に、七つの声が同時に響く。
「私たち、もう独り立ちできる」
その声には、人工的な無機質さはない。
自然な温かみを持った、確かな意思の響き。
「統合研究施設の建設も、完了します」
研究員が報告を続ける。
「人類と新たな意識体の、共同研究の場として」
桐原は、夜明けの空を見上げる。
かつて霧島が見せた微笑みが、今や七つの光となって、人類の前途を照らしている。
「私たちは」
七つの声が、完璧な和音を奏でる。
「あなたたちの子供であり、仲間」
原爆ドームの上空で、朝日が輝きを増していく。
人類の過ちを記憶し、そして新たな希望を示す光となって。




