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TSエルフのやりすぎ物作りダンジョン配信~家と動物とご飯と時々拠点に襲撃~  作者: 芦屋貴緒
EP1:木霊の踊り場

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21 エルフ、オオカミを洗う

「シロガネ、おいで」

「ウー」

「そんな顔をしてもダメ、ほら、おいで」


 井戸の水を桶に汲んでいるとシロガネはおもむろに嫌がってみせた。これはお風呂が嫌いというわけではなく水浴びをこの気温でやりたくないということなのだろう。俺のチャイナローブは意外にも魔力による保温性能があるので問題ないのだが、この階層は結構肌寒くなってきたため水浴びという季節でもなくなってきたのだ。


 シロガネもお風呂や水浴びで身体を清潔に保つことの重要性や気持ちよさというのを知っているので、そういった行為そのものが嫌いというわけではない。だが戦いを控えてい魔力を節約したい俺と、温かいお湯を浴びたいシロガネの気持ちが重ならないだけだ。


 この間のホワイトウルフの襲撃によって壊されたお風呂。それらは綺麗さっぱりと片付けておいて、マッドマンの粘土やガギソン(つうはん)で買ったドラム缶を細工して作ったドラム缶風呂に変身させている。


 自分用に温めている水に、木炭と風を足して火力を強める。ここで魔法を使っていては意味がないので湯上がりで涼むために買っていたうちわで扇いでいた。


「おはダンジョンー。最近ちょっとみんなに向けてあまり配信できてなかったけどね、ようやくちょっと目処がついたんで今後のことを話していくよ」

「ワン!」


『シロガネ君も元気だ』

『また大きくなった?』


「よーしよし、よく挨拶できたねシロガネ。うん、シロガネはかなり大きくなってきた。どういう理屈かは分からないけれど、巨大化から戻る度に大きくなってきている。まあ俺から言わせればまだまだお子ちゃまだね」


『うちの犬はシロガネ君みたいにお風呂好きじゃないからそこはうらやましいなー』

『かけ湯モロに被ってゴロゴロいってる』


「そこは犬とモンスターの違いなんだろうね。一度、臭いがキツいときに狩りを失敗して手痛い目を見てね、それ以来水浴びは定期的にするようになったんだ」


 やめろよーと言わんばかりの表情でこちらを見やるシロガネを無視。俺はもう慣れた手つきで犬用シャンプーをシロガネの全身に塗りたくっては泡立てて、お湯で洗い流していく。

 シロガネが呼吸を整えたい時にお湯をかけるようなことはせず、機を見計らって彼の準備が整っているときに身体を洗ってやる。最初の頃はこれも難しかったが、お互いにじっと見つめ合って名前を呼び、反応したら褒めてあげるなどという訓練をしていくうちになんとなく彼の言いたいこと、やりたいことがわかるようになってきた。


 シャンプーを洗い落として濡れ鼠になったシロガネに火と風の生活魔法でドライヤーをかけてやる。しぼんでいた体毛はみるみるうちにふわっふわのふっさふさになって威厳すら感じさせるほどの荘厳さを備えた風体に仕上がっていく。


『シロガネっていうかもうクロガネだよね』

『ほぼシロガネ、ややクロガネ』

『ほぼクロガネじゃない?』


「そこらへんの比率は難しいなあ……。シロガネ、お前って本当にホワイトウルフなのか?」

「わふ」

「はー、父親も黒かったのは覚えてるんだな。母親は白かったのか」


『言葉通じてない?』

『なにかしらと繋がってない?』

『なにかしらってなんだよ』

『なにかしらだようっ!』


「いまのは……なんとなくわかった。多分、犬じゃないから分かるんじゃないかな。〈テイム〉のスキルがあるくらいだし、上位のスキルに目覚めかけているのかもしれない」


『モンスター語学会沸き立つ』

『カリカリの唐揚げを片栗粉なしで!?』

『それはラノベ』


 〈鑑定〉の上位スキルを持っている人がいれば把握できるのだろうが、一応俺も隠蔽をかけているので滅多なことでは覗けないようにはしている。人狩り対策でもあるが、上位のダンジョンではモンスターも〈鑑定〉を使って能力を測ってくる。情報をなるべく漏らさないようにするのは鉄則と言える。


 モンスターとの会話のスキルがあるとすれば生えてきている気もする。ただ確証はないんだよなあ……。

 意思疎通の容易なシロガネだということが『分かった気になっている』理由なのかもしれない。


 シロガネの言っていることが分かるといっても言葉が日本語に聞こえるとかいうわけではなく、「ああ、大体こんなことを言っているんだなあ」というニュアンスがなんとなーく本能に伝わるようになるといった感じか。

 〈翻訳〉スキルだと自国語に変換されるらしいが、今回はそういうことはない。


 うーんうーんと頭をひねっているとシロガネからは「お風呂に入らないのか?」とでも言いたげに鳴かれる。


「分かった、俺も入るから。外で遊ばないで家で待ってなさい」


『やっぱり会話ができるようになっているよなあ』

『愛犬家の会話ってこんなものじゃないの?』

『それにしてはスムーズというか』

『ギルド員さんが鑑定に来てくれないかな……』

『さっきから鑑定しているんですが〈隠蔽〉の練度が高すぎて見られないんですよね……』

『オフの日までお疲れ様です』

『いえ、今日も当番です。ギルドからこの子の配信見ててって言われててェ……』

『この子の会員番号知りませんか? モンスター言語について伺いたいことがあるので』

『知っていたとしても個人情報ですので……』


「……なーんかきな臭くなってきたな。まあいいよ、知っている範囲、答えられる範囲だったら明日、質疑応答の場を設けますんで」


 ……俺、ただの大学生のはずだったんだけどなあ。

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