1・創造
世界を創りし創造主の異世界転生物語、もちろん全知全能ですから、どこでも無双、なんでも解決、印籠を出すまでも無く終わってしまいそうす。
これからどうすればいいのか困っています。
どうか神様お助けください…
…俺か?
…これは…クローゼットの中…
…なんで俺が?
ある日の夜、深夜…クローゼットで首を吊っている俺を、俺は見ていた。
狭いクローゼットの中、俺の足は床に着いていた。
それどころか、窮屈そうに身体は折れ曲がって中に収まっている。
しかし、俺の首にはタオルが巻かれそのタオルが上のポールに縛り付けられている。
タオルは首に食い込み…
…死んでる…?
…自殺…?
いやいや、おかしいだろ
だって不自然過ぎる。
でも、確かに巻き付いたタオルに体の重みがかかり、俺の首に食い込んでいる。
俺は部屋以外も見て回った。
俺の部屋には俺以外誰も居ない。
玄関はもちろん窓にも、鍵もかかっていた。
ダイニングテーブルに飲みかけのコップが二つ…
俺が死ぬ前に来客があったのだろうか?
…思い出せない
俺は自分の部屋に戻って、ただ何もせず立ち尽くしていた。
首を吊っている俺を見るのは耐えられない気持ちになるが、無性に自分の体から離れたくない衝動の方が強かった。
今の俺の状況はどうなっているのだろうか
これが死後の世界と言う事になるのだろうか
…
突然俺のスマホが鳴った。
でも死んでしまった俺にはどうしようもできない。
呼び出し音が鳴りやんで、少ししてまた鳴ってを何回か繰り返し、それも無くなり静寂な時間がしばらくした後、玄関のチャイムが鳴った。
〈ドンドンッ〉
「斉木さん!」
「斉木さん!いますか?」
「大河さん!居ないんですか?」
あれはたぶん編集の…
「入りますよ」
マネージャーと管理人さんが、ガチャガチャっと鍵を開けて入ってきた。
「…大河さん、居るんでしょ?」
「何も連絡が無く原稿に穴開けちゃって、大変ですよ」
今の俺の姿を見たら驚くだろうな、でも俺にはどうしようもできないんだ…ごめん。
「たい…が…さん、う、うわ~~っ!!」
それから、俺のマンションの前には数台のパトカーと人だかりが出来ているのを眺めていた。
部屋の中には、多くの警察官、刑事や監察官などで部屋の写真を撮ったりしている。
どうでもいいけど、俺の体しばらくそのままで放置状態だ。
『いろいろあるんだろうけど、俺の体を早く出してくれよ…』
ようやく、黒い寝袋みたいのに入れられ、タンカーに乗せられ部屋を出されていった。
俺は俺の遺体についていこうか迷ったが、結局付いていかず、部屋のベットにへたり込んだ
『どうなるんだろう…俺』
俺は項垂れ一瞬をつむった。
目を開けるとそこは俺のいた部屋ではなく広い雲海のような雲の上にいた。
『なにこれ、随分チープなお決まり風景だな』
広大で果てがわからない雲海の上を見渡して、ずいぶん遠い向こうの方に巨大なうごめく塊が見つけた。
意識を向けると一瞬で近くに行く事が出来た。
『ははっ、映画やドラマでよくこんな安易な描写があったっけ、発想力乏しいなと思ってたけど、実際もこんなだったんだな』
近づいてみると塊は無数の人間だった。
どうもどこかに向けて行列を作っているようだ。
並んでいる人に尋ねてみると
「なんでってそりゃ俺もわかんねぇけど、どうやら俺は死んじまったらしくて、何していいかわかんねぇし、見たら俺みたく死んだ奴らはここに並んでるから俺もこうしてるだけだ」
「えっ…でも解らないんだったら、知りたくないんですか?」
「そんなこと言ったって、俺は死んだの初めてだし、何やっていいか解んねぇんだから仕方ねぇよ」
この男の言う事は分からないではない、殆どの人は死んだらどうすればいいか、分からないだろう、途方に暮れてしまうのではないか…
しかし、これでは埒が明かない。
俺は思い切ってこの行列から離れることにした。
だからと言って当てがあるわけではない。
しかし俺は人と同じことをするのが嫌いな性分である。
わからないまま、大勢と行動を共にするなどありえない。
わからないのが同じでも自分だけで進みたい。
反骨精神?…ようはへそ曲がりの天の邪鬼なのである。
広い雲海の上を、俺はただ彷徨っていた。
見渡すところすべて真っ白な空間なのだがようやくピラミッドのような突起物を見つけた。
近づいてみるとそれは巨大でまさに山だった。
頂上にまた雲が覆っていて見えない。
雲海の上にまた雲海である。
本当にこのあの世の世界はでたらめだと思った。
上に登る通路と言おうか、規模的に山道と言った方が正しいのか、俺は登っていくことにした。
登っていくと途中宗教の特徴を持つ建造物があった。
その一つ一つが俺の世界では比べ物にならないほど巨大でほとんどが人がまばらにいる程度だった。
中を全て調べたわけでが無いが、多分数十人と言ったところだろう。
『これって、もしかして生前信者だった人間が集まって来てるんじゃないだろうか』
俺はそんなことを想像したが、ある世界的宗教の建造物が無人だったのには驚いた。
ほかの建造物も外観を見れば何の宗教か素人の俺でも判別がついた。
もし俺の想像が当たっていたら実は殆どの人が宗教を信じていなかったんじゃないだろうか…
様々な宗教が旗印となり、戦争が起こり、迫害があり人が死んだ。
それが事実なのは歴史が証明している。
信じていたとしても、死んであの世に来たら何も知らされず、得たいの知れない行列に並ぶ永遠かもしれない日々。
『確かに死んでみたら宗教は無力そうだもんな』
地位や名誉や金は死んだら無意味とは何となく言われてたけど、宗教もだとは多分思っていなかったんじゃないだろうか。
いや、そうじゃなく案外みんなドライだったのかも…
それがこのそれぞれの建造物に集まっている人の少なさの理由なのかもしれないと思った。
それらを通り抜け、俺は上にと登って行った。
途中途中がこんなありさまだ、失望だけで何ら得るものが無い、このまま登ってもあまり希望が持てないだろうなという予感はあったが、この死後の世界にはあと探しても何もないだろうと感じていた。
幸い、いくら登っても肉体の無い今の俺には疲れないし何も問題はない。
ようやく、来た道の先が途絶えた。ここが頂上のようだ。
見渡すと幾重にも空間に入り口用のドアが左右向かい合い無数に伸びていた。
『なんだこれは?』
ドアだけで壁はなく、先が見えないほど続いているがこの形態は見覚えがある。
『ネットカフェみたいだな』
ドアには番号も振ってある。
俺はある列を何となく選んで、左右にあるドアの間を進んでいった途中ドアを選んでノブの手をかけるが、どれもカギがかかっているようだ。
すると、先の方に一つだけドアが半開きになっているのを見つけ開けてみる。
覗いてみるとパソコンにリラックスチェアー狭い部屋の中。
『ほんとに中まで似てやがる…何なんだ?』
俺は中に入ってみると椅子とか棚が乱雑になっていて、今まで誰かがこの部屋にいて、使用されていたように思われた。
すると部屋に備え付けのパソコンと思わしきモニターの前に、淡く発光したモニターらしき空間が浮かぶ。
『なんだこれ?』
空間に浮かんだ画面に手を近づけると更に発光し、指で横になぞるとスマホのように画面が変わった。
俺はテーブルに備え付けのモニターに目をやり、こっちの浮かんでいる画面の方がメインのようだが、それだとこのモニターの方はどうしてわざわざ置いてあるのか、意味が解らない…
謎仕様に俺は首を傾げ、浮かぶ画面の項目を詳しく見てみた。
異世界創造プロジェクト(初回特典 モニター参加者無償提供)
提供 宇宙創造社ヤハ
1・制作者同調及び、ダウンロード 【yes】 【No】
2・宇宙空間構成要素詳細一覧、及び選定 【オート】 【手動】
3・宇宙空間構成要素分布比率設定 【オート】 【手動】
4・生命体種別詳細一覧、及び選定 【オート】 【手動】
5・生命体生存設定詳細一覧、及び選定 【オート】 【手動】
6・生命体生存拠点(惑星)一覧、及び選定 【オート】 【手動】
7・宇宙空間エントロピー拡張設定 【オート】 【手動】
8・生命体循環システム一覧、及び設定 【オート】 【手動】※製作者特典あり
9・ハルマゲドンリセット詳細一覧、及び設定 【オート】 【手動】
10・製作者特典選択 【参加型】 【観察型】 【上位支配型】注1 上位支配型選択の場合は神設定が別途必要
※各項目の仮設定の保存されている場合は、こちらをクリックしてください
※上記設定完了後、実行をクリックしてください
項目の内容は俺には解るようでよく解らなかった。
それでも俺は、第一項目を指でクリックしてみた。
すると、半透明のゴーグルや各身体の部位に装着されるプロテクターのようなものが現れ、俺の体に浸透するように消えていった。
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異世界創造プロジェクトダウンロード!!
現実世界、この世界っていい加減です。
矛盾だらけで未解決だらけ、間違いだらけで騙し合いだらけ、こんな不完全な世界、私に世界を作る能力があったならもっとましな作り方をしたい、そう思っている内に、もしかしたらこの世界を作った奴が適当な性格でバカなんじゃないだろうかと思ってみたり、そんな厨二病的な発想でこの物語を書いてます。






