龍一とこんにちは
「起きなよ高瀬」
バシッと頭を叩かれた衝撃で、世界に光が差した。
「…え…どこここ」
体を起こすと左に進藤、右に井沢が立っていた。井沢の更に右には山田が泡を吹いて倒れている。
「高瀬くん、大丈夫ですか?ずっと気を失っていたんですよ」
進藤が俺を気遣った。
「私の腕を掴んで転んだ高瀬、このことは一生忘れないよ」
井沢が真顔で見下ろしながら言ってきた。
かなり怒っているようだ。
道連れにして転んだから当たり前か。
「あー起きたんっスね!よかったっス!」
そしてもう1人、男の声が聞こえた。
「うわあああああ!」
「えっ!?ぎゃああああ!」
見れば、骸骨が俺に話かけていた。
色々な感情が湧いて叫んだ俺に驚き骸骨も悲鳴をあげる。
「えっ、えっ、なんで!なんだこれ!」
「落ち着いて高瀬。このボーンは龍一さんて言うんだよ」
「骸骨だぞ!?落ち着けねえよ!」
しかも龍一。
普通の人間のような名前だ。
「おっお前ら骸骨が喋ってるのによく普通でいられるよな!?」
「そう見えるの?私の膝を見てよ」
言われるがまま、井沢の膝を見た。
ジーンズを履いているからわかりにくかったが、膝が震えている。
「顔に出ないだけで本当はまじでなんなのこいつって思ってるからね」
「そうなんだな。…なんかごめんな」
表情に出ないというのも大変だ。
内心混乱してるだろうに、井沢は真顔だった。
「目が覚めないのはあと1人ッスね。なんとかして起こしましょうかね」
骸骨が未だに倒れている山田の方へ顔を向ける。
「なんだ?起きないとまずいのか?死ぬのか?まさか」
「いえいえ!あなたがたもう死んでるっス!」
なーに言ってんスかぁ!と笑う骸骨と、真顔の井沢と俺と進藤。
空気が凍るとはこのことなのだと知った。