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死人の国からこんにちは  作者: あたぱん
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すべては肝試しから始まった


「ねえ肝試ししようよ!」


同じクラスの山田が、目をキラキラさせながら言った。

俺達は高校2年生。残念ながら俺は肝試しを楽しむことはできない。

世の中には幽霊よりも怖いものがあることを知っているからだ。だが、山田は違う。

純粋で、中身は小学生のような女なのだ。


「肝試し…したいのか?本当に」

「したーい!夏と言えば肝試しじゃん!あとスイカと稲川淳二!」

「稲川淳二は俺も好きだわ」


別に肝試しをしても何も楽しくない。しかし、山田のことは友として好きだ。

幼馴染で家族ぐるみの付き合いだし、山田がしたいなら付き合おう。


「いいよ。肝試しね。何時から?」

「9時に学校前の公園で!」

「わかった。後でな」


そうして別れて夜になり、集合場所に行ってみると山田と知らない女と知らない男がいた。


「いや誰だよ!」


知らない女も知らない男も、そっちこそ誰だよという顔をしている。


「この子はね!井沢ゆいちゃんて言うの!この前色々あって友達になったんだ!」

「そ、そう…こんにちは。高瀬のぼるです」

「こんにちは。井沢ゆいです」


真顔で挨拶された。にこりともしないのに目はバッチリ合っている。なんだこの女。

だがしかし、顔は整っている。整っているからこそ真顔は怖かった。


「こちらは進藤くん!進藤くんともつい最近友達になったばっかなの!」

「こ、こんにちは」

「こんにちは。進藤です。よろしくお願いします」


今度は眩しいほどの笑顔で挨拶された。だが、嘘くさい笑顔だ。

作り笑いで生きてきたようなタイプだと思う。そしてなによりイケメンだった。

いやどこで知り合ったんだよ。


「じゃ、肝試しやろっか」


こんな気まずいことがあるだろうか。

幼馴染と顔も名前も知らない人間2人と突如始まる肝試し。

正直、山田を恨んだ。

誰だって嫌だろう。こんな中で「イェーイ!張り切っていこうぜ!」なんて言えない。


「イェーイ!張り切ってこう!」


謎の人物井沢ゆいが真顔のまま声を出した。

顔は全然張り切ってないのに、声だけはしっかり出してくる。驚かせるなよ。


「どこからどこまでが肝試しなんですか?」


イケメンの進藤が山田に聞いた。イケメンで言葉遣いも丁寧で欠点なんてなにもなさそうだが、笑顔がとにかくうさんくさい。

面倒だな、早く終わらせて帰りたいぐらいは思ってそうな顔をしている。


「この公園の裏にある道を2人で歩いてこの場所に帰ってくるまでが肝試しだよ!」


山田はそう言ったけど、公園の裏にある道は綺麗に整備されてるしたまに人も通る。

別に肝が試されるようなコースではなかった。

ただ、早く終わりそうだしいいかと思い同意した。同意したらなんと井沢とペアを組まされた。

そんなことあるのか?普通山田が俺と組むだろ。


「行ってらっしゃーい」


イケメンと2人で肝試ししたいからか?いやまさかな。山田は基本的にアホだからなにも深く考えずに提案したんだろう。

そうして歩き出した俺と井沢はなかなか会話ができずにしばらく無言が続いた。


「ねえ高瀬」

「すっごいね。いきなり呼び捨てなの?」

「喉乾いたんだけど。自販機で飲み物買おうよ」

「わかった」


距離感もテンションもよくわからない謎の女、井沢と一緒にお茶を買って飲んだ真夏の夜。

昼間は暑くて仕方ないけど、夜は風が吹いて少し気持ちが良かった。


お互い喋ることもないので同じ方向をぼんやり見つめながら飲んでいる。

すると、俺達の視線の先にあった古いトイレから誰かがこちらを見ている気がした。

暗くてよく見えないが、何かが動いている。


「ギャアアアアア!!!」

「!!??えっ!!なにどうした!」


突然井沢が叫んだ。持っていたお茶を盛大に地面に落として血相を変えている。


「あれ!あれ!あれどうしよう!」

「なにが!?」

「高瀬目ェ悪いの!?あれだよ!骸骨!」


よく目を凝らすと、トイレからこそこそ見ていた人物がだんだん近づいてくる。

ゆっくりこちらに向かってくるそれは、本当に骸骨そのものだった。


「ギャアアアアア!」

「うわあああああ!」


最初は歩いていた骸骨が、急に走り出した。

全速力でこちらに向かってくる。


俺達は無我夢中で走った。どこに向かって走っているのかもわからず、ただ走ってくる骸骨に捕まらないように逃げた。


その後の記憶は曖昧だ。確か一度転んだ気がする。

転ぶついでに井沢の腕を掴んでしまい、見事に2人で転んだ。

パニックになる井沢。背後から鳴るガッシャガッシャという音。

それから、どうなったんだろう。それからーーー。

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