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異世界王女の恋愛譚  作者: ユウギリ
3/10


 ユウヤ様に心を開いていただくための方策を定めてから1ヶ月経った頃。

 それまで変化が無かったユウヤ様に、変化が現れました。

 なんと、城下を見てみたいと仰ったのです。


「準備はよろしいですか?」

「……見ればわかるだろ」

「!?」

「……なに?」

「い、いえ、なんでもございません」


 多少棘があり小声ではありますが、これが初めての会話だったため、内心では歓喜していました。

 城下に行く際は、いつもは護衛が付きますが、今回は付いていません。

 完全に安全と言えるわけではないですが、二人きりの方がユウヤ様の負担にならないだろうという配慮です。


「では、参りましょうか」


 こうして、ユウヤ様がこの世界に来て初めて、二人きりの時間を過ごすことになりました。


 ◆


「あ、あのっ。城下に行く際はいつも町娘の装いなのですが、どうでしょうか!」


 歩いている間気まず過ぎたため、思い切ってそう訊ねました。

 しかし、ユウヤ様から返ってきたのは、


「ふーん」


 その様な興味なさげなものでした。

 しかも、全くこちらを見ずに。

 これでも容姿には自信があったので、自信をなくしそうでしたが、返事をしていただけただけ進歩したのだと、気持ちを前向きに持つようにしました。

 返事をしていただけるのならと、私は話し掛けることを継続することにします。


「どこか、行きたい場所、見たい場所はございますか? 案内致しますよ?」

「……店」

「店、ですか。どの様な店が見たいなどはございますか?」

「……料理」

「料理ですね。でしたら、私の一押しのお店があるので、そちらへ参りましょう。こちらです」


 ユウヤ様を案内し、ご所望の料理店──私が城下に来たら必ず行く料理店へと向かいました。


 ◆


「ここです!」


 私がそう申し上げるも、ユウヤ様は何も仰ることなくお店に入られてしまいました。

 ユウヤ様の後に続いて中に入ると、お店の中にいらっしゃった全員の方が私を見るなり駆け寄って来られました。


「ルーちゃんじゃないか! こんなところに来てて大丈夫なのか!?」

「そうよ? 私たちのことよりも自分を大切にしてほしいわ」

「あんなことがあったんだ、無理して来なくていいんだよ?」


 などなど、私のことを心配した温かい言葉ばかり言い募られます。

 なぜ皆さんがその様な言葉をかけてくださるのかと言うと、町娘な格好をしている私ことルー(偽名)の正体が王女である私だということをご存じだからです。

 そうなった経緯があるのですが、それはこの場で申すことではないため、割愛させていただきます。

 その一方、ユウヤ様は私の周りに集まり優しい言葉をかけてくださる皆さんとそれに対応する私を見て、目を見開いてるように見えました。

 何か、驚くところがあったのでしょうか?

 それを後に聞いても、ユウヤ様は頑なに教えてくださいませんでした。なぜなのでしょうか?

 それはさておき、どうにか皆さんを落ちつかせることができた私は、ユウヤ様が案内された席へ向かいました。


「お待たせいたしまして申し訳ございません。何か食べたい料理は見つかりましたか?」


 謝罪をした際にメニュー表をご覧になっていたためそう尋ねました。


「……」

「ご遠慮なさらずとも良いのですよ? お金はこちらが持ちますから、お好きなものをお好きなだけ頼んでくださいませ」

「……さっきの」

「はい?」

「あんなことって、なに?」


 唐突にそう質問された私は、一瞬、なんのことだろう? と思考を巡らせました。


「あんなこと……。あぁ! それはですね、私の母が魔族の手にかかって亡くなったことですね」

「ごめん」


 すぐさま頭を下げられたユウヤ様に驚きながらも根は優しい方なのだろうかと思い、自然と笑みがこぼれました。


「いえ、私の中ではもう整理がついてますから、謝っていただくようなことではありません。悲しんでいる間にも魔族によって大勢の方が亡くなっていくのです。私と同じ悲しみを持つ方が少しでも少なくなるようにすることが、母への誓いであり使命だと思っております。ですので、本当に気になさらないでください」

「……」


 どうにも雰囲気が重くて仕方ないので、話題を切り替えることにしました。


「さぁ、何を頼まれますか? こちらなどオススメですよ」

「……じゃあ、それにする」

「! はい、かしこまりました! あのっ、注文お願いします!」

「はいよー!」


 その後は私だけが一方的に話すだけの寂しい食事になってしまいましたが、私は近い年齢の方と食事を共にしたことがなかったので、とても新鮮でした。



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