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天使との語らいと戯れ言。  作者: 覆原 ユウダイ
4/9

The second time" you" think

【 "あなた"はもうすぐ、「今あなたが科学や自分の論理性に抱いている信頼」と同じ強度で、「私という奇跡の存在」を信じることになります。】



 天使にそう言い放たれ、"あなた"は少し不快な気分になる。

 

 まるで、天使の存在を信じることは、すでに決まっており、それが早いか遅いかが問題だ、とでも言いたげな言い草である。この天使は、()()()()()()()()()()()()()()のだろうか?





 ここでふと、ルターと親鸞という二人の宗教的偉人の存在が、"あなた"の頭をよぎる。この二人の共通項は、どちらも自由意志に否定的である、という所だ。


 ルターは、当時腐敗していた教会に抗議し、そこから「抗議する者(プロテスタント)」という宗派を立ち上げた。そんな彼は、「人間に自由意志は無く、なんなら全ての起こる事は神による必然である」と主張していた。


 

 一方の親鸞も、東洋で広まっている宗教の中から、一宗派を開いた開祖である。

 彼も「絶対他力」という、「人が阿弥陀さまを信仰するのも阿弥陀さまのお力にほかならない」という考えを持っており、自由意志には否定的であった。


 時代も場所も異なる二人の宗教家が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、この事実は、果たして偶然で片付けていいのなのだろうか─────。




 だめだ。"あなた"は心の中で頭を振る。

 もう少しでなにか掴めそうな予感はあるが、今は疲労からか頭が回っておらず、うまくまとまらない。 


 


 取り敢えず、今までの会話で分かったことを整理しよう。

と考えた"あなた"は、先ほどの「天使の正体」についての仮説について、蓋然性の順に整理することにした。




①自分を天使と「本気で思い込んでいる」異常者


②天使の「演技をしている」異常者


③自分の頭が遂におかしくなって幻聴が聴こえている


④本物の天使



をそれぞれ、①狂人タイプ②演技派タイプ③幻覚 ④本物

とすると、可能性が高そうな順に、


①狂人タイプ > > ②演技派タイプ >③幻覚          


そして、一番望み薄なのが(やはりと言うべきだが)


 ≫ ④本物


となるだろう。



 まず④の本物についてはやはり信じがたい。

先程、『「科学的に」考えられない事だからといって信じないのはおかしい』、と天使は語っていた。




 確かにそのとおりだ、と一瞬納得させられそうになったが、よく考えると、この天使の主張から導き出せるのは"この天使が本物だ"という非現実的な仮説も立てることが可能だ"、というだけであり、この天使の理論は、この仮説の信憑性を補強する材料とはなり得ない。


 




 本物の天使が、こんなまどろっこしい理論で説き伏せようとするだろうか。

もっと手っ取り早く、自分で始めに言っていた"天使でしか知り得ない話"とやらをすればいいだけではないか。


 



 となると、残りは①狂人タイプ②演技派タイプ③幻覚のいづれか。

その中で"あなた"は、③の可能性は低いのではないか、と思う。



 今の正確な日付が分からないので体感でしかないが、最後に食事をした時から(因みに駅前の牛丼チェーンだった)経った時間は丸2日程度だろう、と"あなた"は推測する。


 その根拠は、「体重が70kg程度で計算すると、『過酷な暑さの中で水分を補給せずに自転車に3時間乗ったとき』と、『2日間水をまったく飲まない』のが、同じくらいの脱水症状になる」

という以前テレビで見た知識なので、どこまで正確かは分からないが。


まだ幻覚は見えるほどには衰弱していないはずだ。

 


 そうなると残りの①狂人タイプ②演技派タイプのうち、②演技派タイプはこんなことをされる目的に心当たりも無いので、消去法的に今最もありそうな天使の正体は、①「本気で自分を天使だと思いこんでいる」狂った異常者だ。





 さっき食べ物のことを思い出したからだろう、"あなた"は水が欲しくなってきた。


ずっと水分を摂っていないので喉の渇きはもう限界に近い。乾燥のあまり、息をするたびに擦れるような感覚がして苦しくなる。


 


 そうだ、この際狂人でもなんでもいい。この"天使"に水をくれるように頼もう。もう限界だ。






     (暫し黙り込む)


 








  

 そこであなたは気づく。

()()()()()()()()()()()()()







 そういえば、あんなに喋っていた天使が静かだ。

どうしたのだろうか。いつから黙っていたのだろう。考えることに集中していて気づかなかった。


 もしかして、今までの会話も全て幻想だったのか。


"あなた"の背中を冷たい汗が伝う。


 いや、そんなことは無いだろう。

"あなた"は天使に対し呼びかけようとするが、喉が極限の乾燥状態のために上手く声が出せない。




   (何かの物音)



    ん?

     

   (同じ物音)



   なんだ?今のは。



 何となく「鎖のジャラジャラした金属音」のように"あなた"には聴こえたが、はっきりとは分からない。




  


   (遠のいていく荒々しい足音)




 今度は確かに足音が聴こえた。こちらから遠ざかっていくような、しかもかなり大きな足音だった。

 

 ここが静まりかえっている事を鑑みても、それにしても大きすぎる足音だ。まるで、凄く急いでいる、または()()()()()()()()()()()()()










 つまり、あの天使は人間(フェイク)で、今この場から離れた、ということか?


  ならどうして、さっきまで気配や息遣いさえも感じられない程、慎重に振る舞っていた人物が、こんなに騒がしく撤退するんだ?


 しかも何故、突然にこの場から離れるのか?


 あの天使の目的は結局なんだったんだ?


 

"あなた"の脳内に、大量の疑問が湧いてくる。が、水分不足の脳では処理仕切れない。だが、極度の緊張状態も相まって、"あなた"の思考自体は止まらない。




 この足音を天使の逃げた音だとすると、逃げ出したのは何か状況が変わったから。

 確かにさっきまでは外部からの干渉は一切無く、だから最初、これは幻覚では無いのかと思った。が、音を出さざるを得なくなった。



ということはつまり、 

 ()()()が、この場所に起こる、若しくは()()()()()()()

 今回は推理物らしく、犯人候補ならぬ天使候補をもう一度整理するパートでした。ちょっと暴走気味だったかもしれませんが、お付き合い下さりありがとうございます


次回は、番外篇の予定です。是非ブックマークしていただけると幸いです。




P.S 今日の晩御飯はコンビニおでんでした。美味しかったです。

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