The beginning of "your turn"
前回、「2話は一月以内に上げる」と書いたのですが、ふと降りてきたので勢いで載せちゃいます。
「それでは1つ目の話から参りましょう。これは『奇跡の衰退と再発見』についての物語です。」
"自称"天使が意気揚々と語り始める。
そこで"あなた"は、声の方向が感じられないことに気づく。
何となく、自分の正面に立って話しているものだと思っていたが、
そういえば気配や息遣いがまったく感じられない。
視覚からの情報が得られない"あなた"は、耳に意識を集中させて声の聴こえてくる方向を特定しようとするが、上からのような気も、後ろから話しかけられているような気もして、全く方向が定まらない。
そんなことをしていると、"あなた"は「そういえば、小さい頃に読んだ『少年探偵団』の中で、これと似たような場面があったな」と思い出す。
怪人二十面相が宝石店に予告状を出す。刑事たちが張り込んでいると、天井から二十面相の声が聴こえてくるので、刑事たちが踏み込むも誰もいない。
実は、宝石店の偉い人に変装していた二十面相が、腹話術で声を出していたのだが、一度「天井から声が聴こえる」と思い込むと、案外横から聴こえる声が、上からの声だと感じてしまう。
確かこんな場面だったと思うが、あれは案外その通りなのかもしれない。なんて妙なことを"あなた"は思う。
暫くして"あなた"は、声の方向を突き止めることは断念し、今の状況を整理することにする。
少なくとも、「天使」が只者で無いことだけは確かだ。
声の方向が不明な点、そして男とも女とも分からないクリアすぎる声。
今も、"あなた"が適当な相槌を打つだけでまともに聴いていないにも拘わらず、ずっと"奇跡"とやらについての弁舌を振るっている。
明らかに普通ではない。
自称天使の正体として考えられる可能性は、4つ。
①自分を天使と「本気で思い込んでいる」異常者
②天使の「演技をしている」異常者
③自分の頭が遂におかしくなって幻聴が聴こえている
④本物の天使
と、ここまで整理して、例えどのパターンであっても、
"事態をますます悪化させるもの"や"到底人の手に余るもの"
しかないじゃないか、と"あなた"は頭を抱える。
まず①。
この場合、この異常者が自分のことを「悪魔」や「鬼」と思い込んでいなかっただけありがたく思うべきなのだろう。まだ「天使」ならば、手を差し伸べることもあり得るのだから、と"あなた"は思う。
その割に、今の所は自分の足の痛みを取り除いてくれただけだが。
ただこの場合にはこいつの思考回路は相当ヤバいので、何か一つ失言をすると殺されることもあり得る。
なのでよく注意する必要があるな、と"あなた"は考える。
そして②の場合、コイツは何を目的としているのだろうか。
ただの愉快犯では無いだろう。それにしては手が込みすぎている上、なんと言うか、「凛としている」。
何というのか、自分のことが正しいと純粋に思っているような、本当に神から遣わされたのではないか…と少し思わせる程の話し方だ。
ただこちらの場合なら、少しはこちらの話は通じるだろうから、取り敢えず様子を見て、何とかこの状況を打開出来るようにしたい。 と思う"あなた"。
そして③。これが一番常識的に考えて、有りそうかつ絶望的な可能性だろう、と"あなた"は思う。
その場合、自分は衰弱して死が目前に迫っていて、最後の走馬灯代わりに、よく分からない幻聴が聴こえているのだろう。
声の方向が分からないことにも、幻聴だと思えば説明がつく。
自分の幻聴なのだから、何も警戒することもやるべきことも無い。ただこのまま、意識が薄れて、本物の天使が迎えに来るのも待つだけだ。
ただ、自分の幻聴にしては、やけにリアリティがあるな、と"あなた"は不思議に思う。
神の類を信じている訳でも無い自分が、ここまでストーリーのある幻聴を作れる才能を秘めていたとは。
これならもし作家を目指していれば、また違った結末だったのかもしれない。
なんて思った"あなた"は、こんな状況でも『もし』なんて考えている自分に対し、心の中で苦笑する。
死にそうな時に『もし』って、「なろう」よろしく「異世界転生して前世の記憶を活かして無双」でもするつもりなのか。
そして④の場合、
文字通り「お手上げ」だ。
自分が浅知恵であれこれ考えて、どうにかなることでは無い。
この「一番あり得ない可能性」こそが「一番自分にとってプラスに働く可能性が高い」という皮肉な事実が、この「謎の天使の訪れ」が福音どころか、限りなく災いに近いという「現実」を、"あなた"に突きつける。
「どうですか、ここまでの話は。私が天使だ、という確信は得られましたか?」と天使があなたに問う。
正直、今までの話は考えをまとめていて聴いていなかったので、相手の質問には応えず、
"あなた"はここで初めて、慎重に口を開く。
そして、"そもそもこの場所にどうやって来たのか"
ということを尋ねる。
すると天使は、
前回初投稿で、10PV程見られており、自分の書いたものが人目に触れるのは小学生時代に国語の授業でお話を作った時以来なので、とても嬉しいです。
次回も遅くとも一月以内(2/28まで)の19:00に上げます。
沢山読んでもらえたら張り切って早く書くと思います(笑)