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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

四十肩賢者のダークトランス

作者: 旨煮あなご

 今俺は魔王城の目の前にいる。なぜこんなことになっているのかって?


 御年四十になり仕事でも出世志向もなく所謂中間職と呼ばれるポジションを満喫。ビール腹を抱えながら日々を生活していたこの俺、肘肩齢造(ひじかた としぞう)は仕事先の打ち合わせから戻る際、歩道に突っ込んできた乗用車にぶつかり死んだはずだった。


 だが暗闇の中を彷徨うような時間があり、そこで頭の中に直接声が響いてきた。


「どうか……この国を救ってください。貴方の力が必要なのです。どうかお願いします賢者様」


 美しい女性の声が遠のいていき、気が付くとそれはそれは中世ヨーロッパの貴族の城か!? というような内装と調度品にあふれた部屋で目が覚めた。そう、異世界転移ってやつだ。部下が最近そういう本にハマっていて休み時間よくそんな話をされたものだ。


 俺の体型、身なりは全く変わらずスーツのおっさんのままでこんなきらびやかなに場所で目が覚めたのだ。ちなみに事故ったときについたはずに血はなかった。

 正直異世界に転移するぐらいなら身体も若々しくしてほしいものだ。


 そして城の主であるこの国の王様に呼ばれ話を聞くと、俺はどうやら魔王を倒す為に召喚されたらしい。

 しかも、賢者と言うのはこの世界の人間ではなることが非常に難しく、過去にも召喚をしたららしいが魔法使い程度しか召喚出来ず、魔王討伐に向かったが残念な結果となったらしい。


 賢者でしか使えない魔法がありそれで魔王の討伐を依頼したいと。

 そして討伐できた暁には、この国の英雄としてぜひ血を残してもらいたいと姫との結婚を提示された。


 俺は引き受けた。

 いや別に、若い女の子と結婚したいから魔王討伐しているわけじゃない。ただ、魔王の侵略によって困っている人を助けたいからであって、童貞が捨てられるかもしれないとかそんなこと思ってない。


 別に元の世界で彼女が居たことが無かったのも若かりし頃は勉学に、就職してからは仕事に打ち込んでいたらたまたま居なかっただけだし、居ないことで困ったことなんか無かったし。

 全然強がってなんかいない。





 支給されたローブと杖を身に着け、俺は冒頭通り魔王城までたどり着いたのだ。

 こういう話はセオリーで行けば選抜された者で魔王討伐パーティを組んだりすると思うが、すでに何度も魔王に向けて精鋭を送り込んでおり、この国には戦力がほぼおらず国としてギリギリだった。

 だから俺と共に魔王討伐に来たのは若い女騎士が三人だけ。

 言葉も通じるはずなのに、会話もろくに無いままこの場まで来た。


「賢者様の集中の妨げになってはいけないので」

「前衛は私達が務めますので詠唱の準備をしていただければ」

「どうか魔王の討伐を」


 事務的な感情の無い必要最低限しか話さず、ろくに交流の無いこのパーティをはたしてパーティと呼ぶのか俺にはわからない。

 だが、引き受けた以上魔王を討伐して姫と結婚しよう。そうしよう。


 目の前にあるドラゴンのような顔がついた重たそうな大きな金属で出来た扉は、俺達を認識したからか自動でゆっくりと開いた。


 城内に入ると、薄暗く紫色のろうそくの光がぼわぼわと間隔をおいて光っていた。


「ふははは! よくきたな。お前たちが何度来ようとも無駄な事よ。まぁ我輩の元まで来れるものなら来てみるがいい。まずは我輩の部下共がお前たちを対応してやろう」


 まるで機械で声を変えたかのような声が城の中に響き渡る。


 俺は杖を握りしめ城内を女騎士達と進んでいく。

 エントランスを抜けるとまるで誘導されているかのように一本の廊下を進む、そして第一の部屋と書かれた部屋があった。


 騎士達と共にその扉を開けると、そこに居たのは紫色の腰まである長い髪、そして身体の下半身が蛇の女がいた。事前情報に聞いていたラミアという種族のやつだろう。上半身はさらしを巻いていた。

 なんでだよ!! と内心突っ込んだ。こういうファンタジーな世界なら、そこは何も身に着けてなくて、長い髪で際どい部分が隠れているのが定番じゃないのか!? しかもなんでさらしなんだよ!! もっとあるだろボディーラインがわかる様な下着みたいなやつがさぁ!!


 もちろん、そんなことを思っているだなんて顔には出していない。俺は険しい顔をしている……はずだ。


「さぁ、わらわの相手はお前たちか? ふっ、今回は女騎士が来るとは人間共も策が尽きてきたようじゃのぉ」


 コロコロと笑うラミアに女騎士達が突っ込んでいく。

 それを合図に俺は詠唱していく。


 そう、この世界に来てから頭の中に詠唱の単語がどんどん浮かぶようになったのだ。


 この国は不思議なことに詠唱した魔法の威力を最大限引き出すには、杖を上に掲げねばならない。

 上に掲げた分だけ威力が増す。


 ラミアが器用にしっぽで騎士達をあしらっている間に俺は詠唱を完成させ、ラミアに放つため杖を上に掲げようとする。

 しかし、俺は四十肩。肩より上に手が上がらないのだ。だから本来のちからの半分ぐらいしか威力がでない。


 俺の放った魔法は雷の球体にラミアを閉じ込めるというものだ。

 感電したラミアは悲鳴をあげながら球体の中でビクンビクンしている。


 そして電気を身体に通されたラミアは少し黒焦げぷすぷすと音をたてている。

 止めとばかりに騎士達に八つ裂きにされた。

 ラミアを瀕死に追い込んだものの、倒しきれない俺のことを女騎士達は少し不満に思っているようだった。

 たぶん俺が肩までしか腕上げてなかったことを不審に思っているのかもしれない。

 今俺が説明したところで言い訳がましく聞こえてしまうだろうから、何も言わず女騎士たちの後に続く。





 ちょっとパーティの中で空気が悪くなりつつも第一の部屋を通過し、前回同様一本道の廊下を進むと第二の部屋と書かれた場所についた。

 扉を開けると中央に石像があった。

 その石像は男の物で、俺と同じように杖を持ちローブを着ていた。


 部屋の中に男の声が響く。


「引き返せ……今なら、まだ……。引き返せ……俺のようになるぞ……」


 何のことかわからず、一緒に居た女騎士達をみれば皆青ざめていた。

 そこにあらたに別の声が響いてきた。


「ようこそ私のお部屋へ。沢山のお人形たちと遊んでいってくださいね。うふふふ」


 可愛らしい幼女のような声が聞こえ終わると同時に地面からたくさんの石像が現れた。

 どれもこれも俺には馴染みのない人型の石像だが、どうやらこれらの石像はいままで魔王を討伐しに行った者たちらしい。

 女騎士達が怒りながら勝手に説明したので理解した。


「貴様!! 姿を現せ!! お前たちの侵略を阻止しようとした魔法使いと我が国の者達をこのような姿に変えるなど許さん!!」

「この者達恨み私達が晴らさせてもらいます!!」

「必ず打ちとってやる」


 俺には感情的なことを全く見せないけど、元仲間の為に彼女たちは激昂している。

 出てきた石像は勝手に動き出し女騎士たちに襲い掛かっている。

 彼女たちは壊さないように闘っていたが流石に防戦一方だと疲弊してしまうだけだ。

 仕方なく石像達を壊していく。彼女たちは涙ぐんでいた。


 俺にできることはその負担を減らしてやることだけだ。

 石に雷は聞かないだろう。

 思い浮かぶ単語を詠唱していく。そして痛みに耐えながらも出来るだけ杖を上に掲げようとして、今度は腰に痛みが走る。もともとビール腹で鍛えるようなことをしてこなかった俺はこのたるんだ身体を少ない休みで今動かしているわけで、


 石像達に植物の根のようなものが纏わりつきまるで養分を吸っているかのように、石像達がボロボロと崩れていく。

 そして「ありがとう、これで楽になれる」と弱々しい声が響いて消えた。



 なんとか石像達を倒し終わった後、がれきの中から小さなレンガのゴーレムが現れた。どうやらそれがこの部屋のボスのようだ。

 小さなレンガゴーレムに向けて女騎士達は怒りの猛攻をしたが表面が硬いようではじかれている。

 俺は詠唱してゴーレムを水球に閉じ込めそのまま氷漬けにした。


 レンガ内に少しでも隙間があれば水が染み込みその水を凍らせることで水の体積を膨張させその隙間をさらに広げて脆くする為の内部破壊を試みたのだ。

 そしてその作戦は成功し、レンガの内部が脆くなったことによって氷が解けた後攻撃に転じようとして無理に動かしたようで片腕の動きがあからさまに悪くなったのだ。女騎士達の執拗剣戟に徐々に砕かれていくゴーレムはやがてただの土に戻った。



 しかし、戦いが終わった後女騎士達に問い詰められた。


「どうして手加減をしているんですか!」

「あなたが本気を出してくれれば!」

「やる気ないんですか!?」


 聞かれたからこのタイミングだからこそ、肩までしか上がらない俺の腕のこと――四十肩――を彼女達に伝えたが、そのような病は聞いたことがないと取り合ってもらえず、ただ俺が本気を出さずさぼってるようにしか見えないと苦情の嵐。


 そんなことを言われても俺にはどうすることもできない。

 賢者となった今は回復魔法だって出来る。だが、四十肩を治すための詠唱単語は一切思い浮かばない。

 俺だって治るなら治したいのに。

 ストレスで耳鳴りがしてきた。





 連戦で少し疲れが出ているから休みを提案するも「本気も出してないのにだらけるつもりですか!?」と却下され、第三、第四の部屋を連続で無理やりなんとか攻略した。休むことなく進んだ俺の膝は痛みを通り越し、感覚がなくなってしまった。そして遂に魔王の元までたどりつく。

 だがその頃には俺の体力や魔力よりも心がすり減っていた。


 一緒にいるパーティメンバーには魔王討伐のために今は協力しているけれど、本気で取り組んでいないと疑われている人間と心の距離が近くなったり絆が出来るわけもなく、俺の休憩の提案も却下し、むしろ戦闘を重ねるごとに小馬鹿にするような態度を隠さなくなっていった。本当のことを言ったところで信じてもらえない、むしろ侮り蔑む者達といることが苦痛で一刻も早く終わらせたかった。

 俺は人とそこそこコミュニケーションをとれると思っていたが、元の世界は周りの人達に恵まれていたんだなと思った。状況と人が変わるだけで俺のコミュニケーション能力ではどうにもならないこともあるのだから。



 たどり着いた魔王が座する間には、それはそれはグラマラスな胸を強調した耳の尖ったボンキュッボンの美女が優雅に椅子に座っていた。しかも、趣味の悪い頭蓋骨が先端についた杖を片手でいじりながら。


「よくぞここまでたどり着いたな。私だがしかしお前の戦いぶりを見ていたが、本気を出さないとはだいぶなめられたものよ。まぁ、その程度の力に負けてしまう私の部下も情けないことこの上ないがな」


 普段であればあんなボンキュッボンを見たら喜びに打ち震えるだろうが、人間関係に荒み切った俺は、偉そうにこっちの事情も分からず、本気を出していないと決め付けた発言にイライラしていた。魔王相手に投げやりに答える。


「あれが俺の全力だよ……」


 それを聞いた魔王はきょとんとした顔をした後、盛大に笑い始めた。


「くははははは! アレが貴様の全力だと? 賢者だというからあえて本来の力を隠すために半分程度の力しか出さないのかと思いきや……なんとただの愚者だったか!あははははは!」



 魔王にすら笑われる始末。いままで一緒に戦ってきた女騎士達も呆れと蔑みの乾いた小さな笑いを浮かべている。お前らは魔王の味方かよ。どいつもこいつも俺の事情も知らない癖に。いや、知ろうともしない癖に好き勝手言いやがって。


 というかこんな奴らのために魔王を倒す?

 姫との結婚をチラつかせられたがもうどうでも良くなった。

 フラストレーションが溜まり、すでに耳鳴りを越えて頭の中でアラートがビービーと鳴っている。


 やがて脳内でガラスが砕けるような音が響き渡る。

 その瞬間今までにない()()が脳内を駆け巡る。その意味を理解し()()を唱え始める。


 魔王は俺の全力を大したことが無いとよける気配すらない。

 だったら喰らえよ。


 詠唱を終えた俺は杖を掲げた。もちろん肩までしかあげられていない。しかし発動した魔法は紫色の光となって魔王の体に吸い込まれていく。


「なんだ不発か? はははは! 流石愚者だな」


 どうやら魔王に見えていないようで、腹を抱えて大笑いしている。

 女騎士達も俺の魔法が見えなかったみたいで不発に終わったと思っている。そんな俺をゴミ虫を見るような目でみているから、同じ呪文を唱え杖を掲げた。対象を俺の周りにいる女騎士達(クソども)にして。


 この魔法が見えない奴らは俺が魔法を失敗してるように見えるだろう。だがすでに魔法は仕込んだ。


「俺の苦悩を味わえよ」


 他人の痛みはそれを経験しないとわからない。

 だったら経験してもらおうじゃないか、四十肩の痛みを! 歳による膝や腰にくる関節痛をな!!


 魔王は少し身体に違和感を感じたようだが、こちらを舐めているのでデカい口を叩いている。


「貴様に本物の魔術を教えてやろう」


 唱えている単語を聞き何が来るかを理解したが、俺は余裕の構えだ。


「喰らうがいい。っ!? いったぁぁぁぁぁ!!!?」


 意気揚々と杖を掲げ上げた魔王は肩より上に上げようとして勢いよく振り上げたが激痛に耐えられず上げようとした腕をすぐに下ろした。


 ゆえに、発動した魔法はショボいもので余裕で回避できた。


「貴様っ!!なにをした!!」


 魔王が怯んだのを見た女騎士たちが好機と思ったのか、アイコンタクトをして一斉に攻撃を仕掛けるために動き出したがそのうちの一人は間抜けな声を上げてすっ転んだ。


「ふぬぁ!?」


 何が起こったか理解できていない転んだ女騎士は膝をさすりながら立ち上がろうとするが生まれたての小鹿のようになっている。

 転んだ一人を気にしつつも残りの二人は好機を逃すまいと切りかかろうとする。


 一人は下から斜め上へ切り上げ、回り込んだもう一人は袈裟切りをしようと剣をふりあげた。

 しかし、切り上げるようとした女騎士は肩より上に腕を上げることが出来ず、もう一人は勢いよく振り上げ袈裟切りしようとしたが周りにも聞こえるほどの【ゴキッ】という大きな音を響かせ、振り上げた状態で固まっている。こりゃただの腰痛じゃねぇな。ぎっくり腰だ。


 全員が痛みに悶え苦しんでいる。

 自分たちに何が起こったのかわからない魔王と女騎士達。


 さらに追い打ちをかけるように俺は()()を唱える。

 魔王にも女騎士達(クソども)にも平等に。

 俺を馬鹿にした奴らにお前ら女にとっての絶望をくれてやるよ。


 発動した魔法は本来であれば寝たきりの老人に出来るものだ。だが俺の肩が上がらないゆえ、身体はある程度動かせるようだが、見た目が今までのような若さや美貌など程遠くなっている。

 女騎士たちはお互いに顔が変わっていくのを見て悲鳴を上げてた。

 魔王に関しては、しわしわになった自分の手の甲を見て驚愕の顔をし、その手で顔をペタペタと触り、今までの張りのある肌がしわだらけの顔になっているのを確認している。



 女騎士たちが俺に抗議をしてくる。


「な、なじぇでしゅか!!」

「どうひて」

「あぁ…あぁぁ」


 老化によって歯が抜け落ちてきっちり喋れなくなっている。

 何故?どうして? だと?


「困っているっていうから少しでも協力できるならとここまで来たが、お前らは俺が肩までしか腕が上がらないことを理解しようと歩み寄ることもなく、休みなく戦いを続けさせ俺をないがしろにしてきただろう? そんな奴らのために俺がこれ以上協力する必要がどこにあるんだ? 俺にとっちゃ魔王だろうがお前たちが勝とうが、もうどうでもいいんだよ。 俺を嗤うやつは全員苦痛を与えてやることにした。それだけだ。どうだ? 肩までしか上がらない腕、身体を支えきれなくなった腰、思うように動かせない膝の痛みは」


 俺の返答に言葉をなくした三人の老女。

 そこに目がうつろになった魔王が弱々しく俺に懇願する。


「もう殺してくれ……こんな姿では誰も私についてくるものなどおらぬ……魔族は見た目と力が命なのだ。このような姿見られたくない」


 当然俺はそんなことしない。そんな都合よく俺に願いを叶えてくれとよく言えるな、敵だろ。

 むしろこの姿を見られたくないなら魔族全域に映してやるよ。そもそも魔王が人間の領域に侵略しようとするからこんなことになったんだ。

 せいぜい苦しめよ。


 俺は魔法で魔王城の屋根を壊し、空が見えるようにした。そしてこの魔王城近辺の上空に薄い霧を張り、翅の生えた透き通った球体二つ発生させた。霧の中に向けて球体を一つ誘導する。

 するとどうだろう、上空の薄い霧に映像が浮かび上がる。


 ここに残っている球体がこの風景を記録して霧の中にいるもう一つの球体に送っているのだ。

 当然魔王自身も屋根のなくなった城から自分が映されていることを知るが、既に節々は痛み魔法を使える状態でないから反撃しようにもできない。


 ただ忌々しそうに俺をにらみつけるだけだ。

 怖くもなんともない視線を無視し俺は球体に指示し俺を映すようにする。


「はじめまして魔族の諸君。君たちの王は俺があのような姿にしてやった。別に俺はお前たちを殲滅したいとかは思っていない。何もしなければ俺からお前たちに何か仕掛けることは無い。だが、仕掛けてくるなら覚悟しておけよお前らも魔王のようになるだろうからな。とりあえずこの城は俺がいただく。文句がある奴は王の間に来るがいい」


 俺がまるで魔王になったかのような言い草だなぁと思いながら霧と映像を映す魔法を解除し、魔王に向かって言ってやった。


「殺されたいなら同族にでも殺してもらえ。それが嫌なら自分で死ね。俺は殺さない。さぁここは俺の城になった出て行ってもらおうか」


 老婆となった魔王は同じく老婆になった女騎士達に殺してくれと頼むも、女騎士たちの現在の腕力っで剣を振ることができず、どちらも武器を杖代わりによたよた歩くのが精一杯のようだ。

 きっとこのままなら、俺に反抗するような奴らはいるだろうから、そいつらと鉢合わせになって酷い目に遭うだろう。


 今更になって謝罪してきた女騎士達を無視し、俺は疲れたので魔王の椅子に腰かけた。

 久々にゆっくりと座って休めるのはいいな。

 出来ることならしばらく戦いたくない。


 この屋敷にいる魔族だって別に襲ってこないならそのまま放置だ。

 俺は安息の地が欲しいだけだ。

 どうせあの国王のところに帰ったところで、俺の肩が上がらないことを知れば、女騎士達のような理解しかしないだろう。


 だったら孤独だとしても誰に何を言われることのない生活を送るための地盤としてこの場所は最適だ。

 向かってくる奴を老化させてしまえばいいのだから。

 そして俺に向かってきたやつらの末路を知ればやがて襲ってこなくなるだろう。


 その時ようやく俺はゆっくりできる。

 この魔法の力で魔物を討伐することには慣れたし、一人暮らしが長いから料理もそこそこ出来る。

 家代わりのこの城さえあれば俺はなんだってやっていける気がする。


 今の俺に敵は無い。

 さぁ、いつでもかかってくるがいい。


 四十肩舐めんなよ今俺は魔王城の目の前にいる。なぜこんなことになっているのかって?


 御年四十になり仕事でも出世志向もなく所謂中間職と呼ばれるポジションを満喫。ビール腹を抱えながら日々を生活していたこの俺、肘肩齢造(ひじかた としぞう)は仕事先の打ち合わせから戻る際、歩道に突っ込んできた乗用車にぶつかり死んだはずだった。


 だが暗闇の中を彷徨うような時間があり、そこで頭の中に直接声が響いてきた。


「どうか……この国を救ってください。貴方の力が必要なのです。どうかお願いします賢者様」


 美しい女性の声が遠のいていき、気が付くとそれはそれは中世ヨーロッパの貴族の城か!? というような内装と調度品にあふれた部屋で目が覚めた。そう、異世界転移ってやつだ。部下が最近そういう本にハマっていて休み時間よくそんな話をされたものだ。


 俺の体型、身なりは全く変わらずスーツのおっさんのままでこんなきらびやかなに場所で目が覚めたのだ。ちなみに事故ったときについたはずに血はなかった。

 正直異世界に転移するぐらいなら身体も若々しくしてほしいものだ。


 そして城の主であるこの国の王様に呼ばれ話を聞くと、俺はどうやら魔王を倒す為に召喚されたらしい。

 しかも、賢者と言うのはこの世界の人間ではなることが非常に難しく、過去にも召喚をしたららしいが魔法使い程度しか召喚出来ず、魔王討伐に向かったが残念な結果となったらしい。


 賢者でしか使えない魔法がありそれで魔王の討伐を依頼したいと。

 そして討伐できた暁には、この国の英雄としてぜひ血を残してもらいたいと姫との結婚を提示された。


 俺は引き受けた。

 いや別に、若い女の子と結婚したいから魔王討伐しているわけじゃない。ただ、魔王の侵略によって困っている人を助けたいからであって、童貞が捨てられるかもしれないとかそんなこと思ってない。


 別に元の世界で彼女が居たことが無かったのも若かりし頃は勉学に、就職してからは仕事に打ち込んでいたらたまたま居なかっただけだし、居ないことで困ったことなんか無かったし。

 全然強がってなんかいない。





 支給されたローブと杖を身に着け、俺は冒頭通り魔王城までたどり着いたのだ。

 こういう話はセオリーで行けば選抜された者で魔王討伐パーティを組んだりすると思うが、すでに何度も魔王に向けて精鋭を送り込んでおり、この国には戦力がほぼおらず国としてギリギリだった。

 だから俺と共に魔王討伐に来たのは若い女騎士が三人だけ。

 言葉も通じるはずなのに、会話もろくに無いままこの場まで来た。


「賢者様の集中の妨げになってはいけないので」

「前衛は私達が務めますので詠唱の準備をしていただければ」

「どうか魔王の討伐を」


 事務的な感情の無い必要最低限しか話さず、ろくに交流の無いこのパーティをはたしてパーティと呼ぶのか俺にはわからない。

 だが、引き受けた以上魔王を討伐して姫と結婚しよう。そうしよう。


 目の前にあるドラゴンのような顔がついた重たそうな大きな金属で出来た扉は、俺達を認識したからか自動でゆっくりと開いた。


 城内に入ると、薄暗く紫色のろうそくの光がぼわぼわと間隔をおいて光っていた。


「ふははは! よくきたな。お前たちが何度来ようとも無駄な事よ。まぁ我輩の元まで来れるものなら来てみるがいい。まずは我輩の部下共がお前たちを対応してやろう」


 まるで機械で声を変えたかのような声が城の中に響き渡る。


 俺は杖を握りしめ城内を女騎士達と進んでいく。

 エントランスを抜けるとまるで誘導されているかのように一本の廊下を進む、そして第一の部屋と書かれた部屋があった。


 騎士達と共にその扉を開けると、そこに居たのは紫色の腰まである長い髪、そして身体の下半身が蛇の女がいた。事前情報に聞いていたラミアという種族のやつだろう。上半身はさらしを巻いていた。

 なんでだよ!! と内心突っ込んだ。こういうファンタジーな世界なら、そこは何も身に着けてなくて、長い髪で際どい部分が隠れているのが定番じゃないのか!? しかもなんでさらしなんだよ!! もっとあるだろボディーラインがわかる様な下着みたいなやつがさぁ!!


 もちろん、そんなことを思っているだなんて顔には出していない。俺は険しい顔をしている……はずだ。


「さぁ、わらわの相手はお前たちか? ふっ、今回は女騎士が来るとは人間共も策が尽きてきたようじゃのぉ」


 コロコロと笑うラミアに女騎士達が突っ込んでいく。

 それを合図に俺は詠唱していく。


 そう、この世界に来てから頭の中に詠唱の単語がどんどん浮かぶようになったのだ。


 この国は不思議なことに詠唱した魔法の威力を最大限引き出すには、杖を上に掲げねばならない。

 上に掲げた分だけ威力が増す。


 ラミアが器用にしっぽで騎士達をあしらっている間に俺は詠唱を完成させ、ラミアに放つため杖を上に掲げようとする。

 しかし、俺は四十肩。肩より上に手が上がらないのだ。だから本来のちからの半分ぐらいしか威力がでない。


 俺の放った魔法は雷の球体にラミアを閉じ込めるというものだ。

 感電したラミアは悲鳴をあげながら球体の中でビクンビクンしている。


 そして電気を身体に通されたラミアは少し黒焦げぷすぷすと音をたてている。

 止めとばかりに騎士達に八つ裂きにされた。

 ラミアを瀕死に追い込んだものの、倒しきれない俺のことを女騎士達は少し不満に思っているようだった。

 たぶん俺が肩までしか腕上げてなかったことを不審に思っているのかもしれない。

 今俺が説明したところで言い訳がましく聞こえてしまうだろうから、何も言わず女騎士たちの後に続く。





 ちょっとパーティの中で空気が悪くなりつつも第一の部屋を通過し、前回同様一本道の廊下を進むと第二の部屋と書かれた場所についた。

 扉を開けると中央に石像があった。

 その石像は男の物で、俺と同じように杖を持ちローブを着ていた。


 部屋の中に男の声が響く。


「引き返せ……今なら、まだ……。引き返せ……俺のようになるぞ……」


 何のことかわからず、一緒に居た女騎士達をみれば皆青ざめていた。

 そこにあらたに別の声が響いてきた。


「ようこそ私のお部屋へ。沢山のお人形たちと遊んでいってくださいね。うふふふ」


 可愛らしい幼女のような声が聞こえ終わると同時に地面からたくさんの石像が現れた。

 どれもこれも俺には馴染みのない人型の石像だが、どうやらこれらの石像はいままで魔王を討伐しに行った者たちらしい。

 女騎士達が怒りながら勝手に説明したので理解した。


「貴様!! 姿を現せ!! お前たちの侵略を阻止しようとした魔法使いと我が国の者達をこのような姿に変えるなど許さん!!」

「この者達恨み私達が晴らさせてもらいます!!」

「必ず打ちとってやる」


 俺には感情的なことを全く見せないけど、元仲間の為に彼女たちは激昂している。

 出てきた石像は勝手に動き出し女騎士たちに襲い掛かっている。

 彼女たちは壊さないように闘っていたが流石に防戦一方だと疲弊してしまうだけだ。

 仕方なく石像達を壊していく。彼女たちは涙ぐんでいた。


 俺にできることはその負担を減らしてやることだけだ。

 石に雷は聞かないだろう。

 思い浮かぶ単語を詠唱していく。そして痛みに耐えながらも出来るだけ杖を上に掲げようとして、今度は腰に痛みが走る。もともとビール腹で鍛えるようなことをしてこなかった俺はこのたるんだ身体を少ない休みで今動かしているわけで、


 石像達に植物の根のようなものが纏わりつきまるで養分を吸っているかのように、石像達がボロボロと崩れていく。

 そして「ありがとう、これで楽になれる」と弱々しい声が響いて消えた。



 なんとか石像達を倒し終わった後、がれきの中から小さなレンガのゴーレムが現れた。どうやらそれがこの部屋のボスのようだ。

 小さなレンガゴーレムに向けて女騎士達は怒りの猛攻をしたが表面が硬いようではじかれている。

 俺は詠唱してゴーレムを水球に閉じ込めそのまま氷漬けにした。


 レンガ内に少しでも隙間があれば水が染み込みその水を凍らせることで水の体積を膨張させその隙間をさらに広げて脆くする為の内部破壊を試みたのだ。

 そしてその作戦は成功し、レンガの内部が脆くなったことによって氷が解けた後攻撃に転じようとして無理に動かしたようで片腕の動きがあからさまに悪くなったのだ。女騎士達の執拗剣戟に徐々に砕かれていくゴーレムはやがてただの土に戻った。



 しかし、戦いが終わった後女騎士達に問い詰められた。


「どうして手加減をしているんですか!」

「あなたが本気を出してくれれば!」

「やる気ないんですか!?」


 聞かれたからこのタイミングだからこそ、肩までしか上がらない俺の腕のこと――四十肩――を彼女達に伝えたが、そのような病は聞いたことがないと取り合ってもらえず、ただ俺が本気を出さずさぼってるようにしか見えないと苦情の嵐。


 そんなことを言われても俺にはどうすることもできない。

 賢者となった今は回復魔法だって出来る。だが、四十肩を治すための詠唱単語は一切思い浮かばない。

 俺だって治るなら治したいのに。

 ストレスで耳鳴りがしてきた。





 連戦で少し疲れが出ているから休みを提案するも「本気も出してないのにだらけるつもりですか!?」と却下され、第三、第四の部屋を連続で無理やりなんとか攻略した。休むことなく進んだ俺の膝は痛みを通り越し、感覚がなくなってしまった。そして遂に魔王の元までたどりつく。

 だがその頃には俺の体力や魔力よりも心がすり減っていた。


 一緒にいるパーティメンバーには魔王討伐のために今は協力しているけれど、本気で取り組んでいないと疑われている人間と心の距離が近くなったり絆が出来るわけもなく、俺の休憩の提案も却下し、むしろ戦闘を重ねるごとに小馬鹿にするような態度を隠さなくなっていった。本当のことを言ったところで信じてもらえない、むしろ侮り蔑む者達といることが苦痛で一刻も早く終わらせたかった。

 俺は人とそこそこコミュニケーションをとれると思っていたが、元の世界は周りの人達に恵まれていたんだなと思った。状況と人が変わるだけで俺のコミュニケーション能力ではどうにもならないこともあるのだから。



 たどり着いた魔王が座する間には、それはそれはグラマラスな胸を強調した耳の尖ったボンキュッボンの美女が優雅に椅子に座っていた。しかも、趣味の悪い頭蓋骨が先端についた杖を片手でいじりながら。


「よくぞここまでたどり着いたな。私だがしかしお前の戦いぶりを見ていたが、本気を出さないとはだいぶなめられたものよ。まぁ、その程度の力に負けてしまう私の部下も情けないことこの上ないがな」


 普段であればあんなボンキュッボンを見たら喜びに打ち震えるだろうが、人間関係に荒み切った俺は、偉そうにこっちの事情も分からず、本気を出していないと決め付けた発言にイライラしていた。魔王相手に投げやりに答える。


「あれが俺の全力だよ……」


 それを聞いた魔王はきょとんとした顔をした後、盛大に笑い始めた。


「くははははは! アレが貴様の全力だと? 賢者だというからあえて本来の力を隠すために半分程度の力しか出さないのかと思いきや……なんとただの愚者だったか!あははははは!」



 魔王にすら笑われる始末。いままで一緒に戦ってきた女騎士達も呆れと蔑みの乾いた小さな笑いを浮かべている。お前らは魔王の味方かよ。どいつもこいつも俺の事情も知らない癖に。いや、知ろうともしない癖に好き勝手言いやがって。


 というかこんな奴らのために魔王を倒す?

 姫との結婚をチラつかせられたがもうどうでも良くなった。

 フラストレーションが溜まり、すでに耳鳴りを越えて頭の中でアラートがビービーと鳴っている。


 やがて脳内でガラスが砕けるような音が響き渡る。

 その瞬間今までにない()()が脳内を駆け巡る。その意味を理解し()()を唱え始める。


 魔王は俺の全力を大したことが無いとよける気配すらない。

 だったら喰らえよ。


 詠唱を終えた俺は杖を掲げた。もちろん肩までしかあげられていない。しかし発動した魔法は紫色の光となって魔王の体に吸い込まれていく。


「なんだ不発か? はははは! 流石愚者だな」


 どうやら魔王に見えていないようで、腹を抱えて大笑いしている。

 女騎士達も俺の魔法が見えなかったみたいで不発に終わったと思っている。そんな俺をゴミ虫を見るような目でみているから、同じ呪文を唱え杖を掲げた。対象を俺の周りにいる女騎士達(クソども)にして。


 この魔法が見えない奴らは俺が魔法を失敗してるように見えるだろう。だがすでに魔法は仕込んだ。


「俺の苦悩を味わえよ」


 他人の痛みはそれを経験しないとわからない。

 だったら経験してもらおうじゃないか、四十肩の痛みを! 歳による膝や腰にくる関節痛をな!!


 魔王は少し身体に違和感を感じたようだが、こちらを舐めているのでデカい口を叩いている。


「貴様に本物の魔術を教えてやろう」


 唱えている単語を聞き何が来るかを理解したが、俺は余裕の構えだ。


「喰らうがいい。っ!? いったぁぁぁぁぁ!!!?」


 意気揚々と杖を掲げ上げた魔王は肩より上に上げようとして勢いよく振り上げたが激痛に耐えられず上げようとした腕をすぐに下ろした。


 ゆえに、発動した魔法はショボいもので余裕で回避できた。


「貴様っ!!なにをした!!」


 魔王が怯んだのを見た女騎士たちが好機と思ったのか、アイコンタクトをして一斉に攻撃を仕掛けるために動き出したがそのうちの一人は間抜けな声を上げてすっ転んだ。


「ふぬぁ!?」


 何が起こったか理解できていない転んだ女騎士は膝をさすりながら立ち上がろうとするが生まれたての小鹿のようになっている。

 転んだ一人を気にしつつも残りの二人は好機を逃すまいと切りかかろうとする。


 一人は下から斜め上へ切り上げ、回り込んだもう一人は袈裟切りをしようと剣をふりあげた。

 しかし、切り上げるようとした女騎士は肩より上に腕を上げることが出来ず、もう一人は勢いよく振り上げ袈裟切りしようとしたが周りにも聞こえるほどの【ゴキッ】という大きな音を響かせ、振り上げた状態で固まっている。こりゃただの腰痛じゃねぇな。ぎっくり腰だ。


 全員が痛みに悶え苦しんでいる。

 自分たちに何が起こったのかわからない魔王と女騎士達。


 さらに追い打ちをかけるように俺は()()を唱える。

 魔王にも女騎士達(クソども)にも平等に。

 俺を馬鹿にした奴らにお前ら女にとっての絶望をくれてやるよ。


 発動した魔法は本来であれば寝たきりの老人に出来るものだ。だが俺の肩が上がらないゆえ、身体はある程度動かせるようだが、見た目が今までのような若さや美貌など程遠くなっている。

 女騎士たちはお互いに顔が変わっていくのを見て悲鳴を上げてた。

 魔王に関しては、しわしわになった自分の手の甲を見て驚愕の顔をし、その手で顔をペタペタと触り、今までの張りのある肌がしわだらけの顔になっているのを確認している。



 女騎士たちが俺に抗議をしてくる。


「な、なじぇでしゅか!!」

「どうひて」

「あぁ…あぁぁ」


 老化によって歯が抜け落ちてきっちり喋れなくなっている。

 何故?どうして? だと?


「困っているっていうから少しでも協力できるならとここまで来たが、お前らは俺が肩までしか腕が上がらないことを理解しようと歩み寄ることもなく、休みなく戦いを続けさせ俺をないがしろにしてきただろう? そんな奴らのために俺がこれ以上協力する必要がどこにあるんだ? 俺にとっちゃ魔王だろうがお前たちが勝とうが、もうどうでもいいんだよ。 俺を嗤うやつは全員苦痛を与えてやることにした。それだけだ。どうだ? 肩までしか上がらない腕、身体を支えきれなくなった腰、思うように動かせない膝の痛みは」


 俺の返答に言葉をなくした三人の老女。

 そこに目がうつろになった魔王が弱々しく俺に懇願する。


「もう殺してくれ……こんな姿では誰も私についてくるものなどおらぬ……魔族は見た目と力が命なのだ。このような姿見られたくない」


 当然俺はそんなことしない。そんな都合よく俺に願いを叶えてくれとよく言えるな、敵だろ。

 むしろこの姿を見られたくないなら魔族全域に映してやるよ。そもそも魔王が人間の領域に侵略しようとするからこんなことになったんだ。

 せいぜい苦しめよ。


 俺は魔法で魔王城の屋根を壊し、空が見えるようにした。そしてこの魔王城近辺の上空に薄い霧を張り、翅の生えた透き通った球体二つ発生させた。霧の中に向けて球体を一つ誘導する。

 するとどうだろう、上空の薄い霧に映像が浮かび上がる。


 ここに残っている球体がこの風景を記録して霧の中にいるもう一つの球体に送っているのだ。

 当然魔王自身も屋根のなくなった城から自分が映されていることを知るが、既に節々は痛み魔法を使える状態でないから反撃しようにもできない。


 ただ忌々しそうに俺をにらみつけるだけだ。

 怖くもなんともない視線を無視し俺は球体に指示し俺を映すようにする。


「はじめまして魔族の諸君。君たちの王は俺があのような姿にしてやった。別に俺はお前たちを殲滅したいとかは思っていない。何もしなければ俺からお前たちに何か仕掛けることは無い。だが、仕掛けてくるなら覚悟しておけよお前らも魔王のようになるだろうからな。とりあえずこの城は俺がいただく。文句がある奴は王の間に来るがいい」


 俺がまるで魔王になったかのような言い草だなぁと思いながら霧と映像を映す魔法を解除し、魔王に向かって言ってやった。


「殺されたいなら同族にでも殺してもらえ。それが嫌なら自分で死ね。俺は殺さない。さぁここは俺の城になった出て行ってもらおうか」


 老婆となった魔王は同じく老婆になった女騎士達に殺してくれと頼むも、女騎士たちの現在の腕力っで剣を振ることができず、どちらも武器を杖代わりによたよた歩くのが精一杯のようだ。

 きっとこのままなら、俺に反抗するような奴らはいるだろうから、そいつらと鉢合わせになって酷い目に遭うだろう。


 今更になって謝罪してきた女騎士達を無視し、俺は疲れたので魔王の椅子に腰かけた。

 久々にゆっくりと座って休めるのはいいな。

 出来ることならしばらく戦いたくない。


 この屋敷にいる魔族だって別に襲ってこないならそのまま放置だ。

 俺は安息の地が欲しいだけだ。

 どうせあの国王のところに帰ったところで、俺の肩が上がらないことを知れば、女騎士達のような理解しかしないだろう。


 だったら孤独だとしても誰に何を言われることのない生活を送るための地盤としてこの場所は最適だ。

 向かってくる奴を老化させてしまえばいいのだから。

 そして俺に向かってきたやつらの末路を知ればやがて襲ってこなくなるだろう。


 その時ようやく俺はゆっくりできる。

 この魔法の力で魔物を討伐することには慣れたし、一人暮らしが長いから料理もそこそこ出来る。

 家代わりのこの城さえあれば俺はなんだってやっていける気がする。


 今の俺に敵は無い。

 さぁ、いつでもかかってくるがいい。


 四十肩舐めんなよ!!

すみません、なんか思いついて筆を走らせたらこんなことになっていて、自分でもよくわかんないんです。


読みに来てくださった皆様ありがとうございます。m(__)m

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●●よかったら、初投稿作品のグルメ系?連載小説完結済みも見ていただけると嬉しいです。●●
スマホで料理召喚の独身貴族~映える写真は異世界無双に向いてるかも~
美味しいご飯は幸せになれる。
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