不潔先生は締め切りという鎖がありつつも、書いたことのないジャンル、『ドロドロしたうつ系』に挑戦するが、無謀すぎて滅びるまでの経過記録
うーっす
ーー締め切りまであと30日
僕のペンネームは『不潔先生』
とある会社と契約して小説を投稿し、電子版小説として世の中の人間どもに売っている天才小説家だ。
僕は過去に、
コメディのジャンルで『デュフフ同好会』
という小説を書いたところ、大ヒットして売り上げ本数が1位になったくらいの凄腕だ。
今回たまたま家でドロドロ系うつ系?みたいな映画を視聴し、それがものすごい印象に残ったので
新作はそいういったジャンルを書きたいと思い今現在挑戦している。
【記者会見にて】
「不潔先生!次の作品はどういったものを書きますか?」
「ふっ…僕はなんと、ドロドロしたうつ系のジャンルを書こうと思ってます。もちろん、すごい作品になると僕は宣言します。なぜなら僕は天才だ。」
一同「おー!!パチパチパチ!!!!!」
「不潔先生!今回の意気込みを一言どうぞ!」
「ふっ…今年の売り上げ本数ナンバーワンは頂いた。」(キラーン!)
一同「おおお!!!!!!!パチパチパチ!!!」
というふうに宣言したほど、僕には自信があった。
成功体験として売り上げ1位という肩書きがあるからだ。 ふっ…
会社にもそういうジャンルで次作を出すと言って了承してくれたので、僕はその期待に応えるため挑戦する。
(締め切りまであと30日…ふっ、いいイメージと全体の構想ができるまで気楽に過ごすとしますか…)
僕はマンション住みで、インドア派なので小説以外ではネットゲームや映画を見たりして過ごしている。
だいたい、小説案はその趣味で過ごしている時に適当に考えているのだ。
天才であると自覚している僕は、有意義に毎日を過ごすことにした。
ーー締め切りまであと10日
【夕方】
(まずいまずいまずいまずいまずいまずい!全然書けれてない!タイトルすらかけれてない!なんも構想が思いつかない!どーーしよーーーー!!!!)
有意義に毎日を過ごしすぎた。
食って寝て起きて 適当にゲームしてたまにホラー映画見てまた寝て食うの毎日だった。
締め切りまであと10日、僕は焦りつつも内心まだ大丈夫じゃねと思う自分がいる。
(……とりあえず、まだ10日ある。落ち着いて冷静になろう。)
ピンポーン
(来た……悪魔が来てしまった!?)
ガチャ!
「不潔ぅ、様子見に来たよー。出来具合はどう?もうあと10日だけど大体かけてる?」
僕のことを不潔呼ばわりする、編集者の佐藤さんが様子を見に来やがった。
佐藤は合鍵でドアを開け、僕の部屋の中に入ってきた。
(奴め…合鍵を持っているとは…いや前に僕から渡してしまったくっそう…)
まずい状況になってしまい焦る。
どう言い訳しようか必至に考える。
絶対に何一つできてないなんて言えない。言ったらぶっとばされるに違いない…
「不潔、んで?出来具合は?」
「ふっ…完璧さ。あと少しで完成するから大丈夫!」
「へぇー……じゃあその出来具合を見させろ。」
「いや、あのぉーえと。」
「まさか…何もできてない……とかないよね?」
『その通り何もできてないです!テヘッ☆』と言えるわけがない。間違いなく鉄拳制裁玉砕祭りだ。
最悪の場合、会社の編集部にある一室(通称:監獄部屋)にて強制的に入れられ監視、管理のもと書かなくてはならない。
(それだけは避けたい…あれは地獄だ。)
そう思った僕は佐藤に適当にごまかして帰ってもらうよう促すことにした。
「さ、佐藤。と、ととりあずさ。今いいところだから!集中したいから!帰ってください!帰れ!」
「へぇ…私に『帰れ』ねぇ………いいよ。完成近いんでしょ?なら3日後にまた様子を見にくるから。」
「う、うん!じゃ!」
僕は佐藤の背中を押して玄関へ行かせ、出て行ってもらった。
「また3日後にねー。」
「ま、またな!」
ガチャ。
扉を閉めて落ち着く。
ようやく悪魔を振り切った僕は安心した。
個室に戻り椅子に座る。
(さて……あと10日しかない。焦りは禁物だ。今何をすべきか考えろ…考えろ考えろ………
………あっ18時からのアニメ始まる見よっと。)
とりあえずアニメを見ることにした。
ーー締め切りまであと7日
【夜】
「それで?この23日間、何も手をつけずに遊んで食って寝て。アニメ見て…はぁ?」
「いやあの…違うんです…僕は必至に考えて」
「必至に考えて、それで何も思いつかずに焦ってたと?へぇー。」
マンションの一室、個室にて僕は正座していた。
編集者の佐藤に説教を受けている状況だ。
残念なことに何も小説が書けてないことをバレてしまってこの有様さ。ふっ…
「ふっ。」
「ふっ…じゃないねぇよ!!!!!何が完璧で完成に近いだ、天才だからできるわー、すごい作品になるだ??!!なんっっっにもできてないじゃんか!!!どうするのよ!!!この不潔!」
佐藤が顔を真っ赤にして怒鳴る。
僕は気まずそうに正座して耐えていた。
「いや違うんだ…僕は必至に考えたんだ。でも日にちが経つのが早くて…」
「言い訳は聞き飽きたわ!!!!と、とりあえずどうするの!もうあと1週間で投稿しないと間に合わないよ!!??」
「間に合わせる。がんば…るから。」
「はぁーーもぉお!!!3日前に正直にできてないならそう言えばいいのに!もうあと1週間よ!頑張るじゃなくて必ずやる!さっさと小説書きなさい!!!」
「は、はぃー…」
佐藤が説教をした後、帰って行った。
僕はこの3日間考えに考えまくったがもちろん、何一つ進展がない。映画を借りたり、関連の小説読んだがイマイチで何も成果がなかった。
このままだと間に合わない。
だからといってこのままやめるわけにはいかない。
(インタビューで僕はああ言ったんだ。それに待ってるファンの方もいる。裏切ることはできない。)
しかしいざ小説を書こうとするが、何を書こうかイメージがさっぱりだ…
どうすればいいか、悩んでたその時またピンポンが鳴った。
僕はまた佐藤が戻ってきたかと思いドアを開ける。
ガチャ
「あらあら…なんだかお疲れのようねぇ。センセっ。」
「…も、もかさん!うぅ…毎度食料提供感謝しますぅ…」
この方はもかさん。僕の隣に住んでる若奥様だ。結婚してるかどうか知らないし聞いたことがないが、雰囲気的にママさんぽい方で美しい…
僕は自炊が下手でめんどいため、いつも冷凍食品やカップ麺で食事してる。
そんな食生活を知った隣近所のもかさんが、
『夜だけでもきちんと健康に良いものを食べなさい。』
と毎度タッパーの中に肉じゃがやカレーなど手作りほやほやのものを入れて持ってきてくださる。
(天使だぁ…)
「もかさん!毎日どうもです!助かります!」
「いいのいいの。料理好きだし余り物だから。しっかり食べて元気をつけてねっ。」
「は、はい!元気になりました!」
「ふふっ。まだ食べてないのにもう元気だなんて。…じゃあね。小説頑張ってねぇー。」
僕はモカさんから元気をもらう。
モカさんの料理は絶品だから1日の楽しみであり癒しである。
(おっ…今日は豚肉の生姜焼きか!うまそぉ。)
嫌なことを忘れてしまうほど、食事が楽しみであった。
でももう1週間しかないことに変わりない。
やらなきゃいけないと思いつつ、別れの挨拶を交わした。
ふと、気になったことがあるので帰ろうとするモカさんを呼び止めて聞いてみた。
「あ、モカさん!すみません待ってください。」
「あら。何かしらセンセっ。」
「小説の件なのですが、『ドロドロ系うつ系』のジャンルを書こうと思ってるんですが、何か良いものとかないですか?」
モカさんは以前に昼ドラが好きだとおっしゃっていたためもしかしたらと思い、聞いてみた。
「うーん、ドロドロねぇ…昼ドラのアレとかどうかしら?毎日午後3時から放送されてるやつ。恋愛ものだけど結構暗めな話よ。」
「ドラマ名はなんです?」
「『サチコとヨウスケ〜光と闇のエンジェリー』1話から録画してるから、その録画機器を貸しても良いわよ。」
「ありがとうございます!!!」
僕は夜更かしして、1話からずっと見ることにした。
ーー締め切りまであと5日
【朝】
「サチコォォォォーーーー!!!!どこへ行ったんだサチコォォォォーーーー!!!!!!!」
「うっさい!!!これはどういうことよ!!!!」
「サチコがぁああ…行方不明なんだ!置き手紙を残してどこかへいってしまっだあああ……探さないと!」
「あんたハマりすぎでしょその昼ドラ!頭どうかしてるよ!!!」
僕は深夜ずけでこの2日間 その昼ドラを見たが、とても感情移入しやすく、心にグサッとくるものがあった。
そのため現実と非現実の境目がわからなくなるほど、心を持っていかれた。
「それよりも小説は!どうなの!書けてるんでしょ!?」
「ん?小説?なにそれ?…それよりも俺はサチコを探さないといけないんだ!!!ぬおおおどけぇ!!!」
「はぁ、もうあんた風呂入ってないでしょ!臭いし頭ボサボサじゃないの! 不潔よ不潔!」
僕は熱中しすぎて日常生活がおろそかになって食事以外はなにも手をつけなかった。
服は2日前のまま、頭はものすごいことになって人様にお見せできないほどだ。異臭が部屋を漂う。
「どけぇ佐藤!僕はこれからサチコを!」
「まずは目を覚まさせないとね …オラァ!!」
ドガッ!!!!
僕は佐藤から強烈な一撃をくらい、目が覚めた。
いや、目が覚めてしまった。
あと5日しかない…
「うぅ…。」
「ようやく目が覚めたね…それで進展状況はどうなの?」
佐藤が嫌な予感がするばかりの顔をしながら僕に聞いてきた。
僕はただこの二日間なにもしなかったわけじゃない。ちゃんと少しは進展したことを伝える。
「タイトルできた!できましたよ!」
「へぇ…そのタイトル名は?」
「…『ジョンとステファニー 〜闇と光のエンジェル』…です」
「パクリじゃないの!!!!ダメじゃん!!なにがジョンとステファニーよ!アメリカンにしてどうすんの!光と闇を入れ替えただけ、エンジェルはもう…なにも変わってないじゃない進展してないじゃないの!!」
(あー…うるさいな、頭に響く…)
また佐藤に説教されてしまった。
やっとタイトル思いついたのにボツとは残念だと思いつつ、正座オンリーな時間を過ごすことになった。
ようやく説教が終わり、一旦僕は風呂に入った。
久しぶりの風呂に体が喜びを示したが風呂上がりはまたうるさいだろうなと思いつつ、重い体のまま入浴を終えた。
佐藤は僕の個室で編集部と連絡を取っている。
『申し訳ございません』やら『なんとか間に合うので!』と言っているようだ。
僕は内心、大変だな迷惑かけて本当にすまない…
……とは全然思わず、ざあまないぜと思い、ふっと笑いそうになるがそんなことしたらこの先の結果は見えているので我慢した。
佐藤が電話を切り、僕に振り向いて言う。
「不潔。」
「お風呂上がりだから綺麗だけど?」
「いや違う!。まあ違わないけど…不潔先生。あと5日にこの進展0の状況。わかってるよね?」
「わかりたくない。」
佐藤の言うことは理解していた。今のままだと編集部の監獄部屋行きだって。
僕はあそこだけは行きたくない。絶対に。
「まあ理解してるでしょうけど。とりあえず、今取れる選択肢は3つ
1、監獄行き徹夜ずけ
2、この5日間で絶対に完成させる
3、今回のことは全部なしにする。
さあ不潔。選びなさい。」
「くぅうう…僕は…」
1はありえない。2にかけるしかないか。もう後がないし…3は…
「私からの提案だけど3がいいと思う。流石にメディアに叩かれて、期待するファンに迷惑をかけてしまう。スキャンダル一択ね。でもこれが最善だと思うわ。」
たしかにそうだと思う。
だが僕はいち小説家だ。天才であり、結果を残している。そのプライドを信じてここまでやってきたんだ。最後まで諦めたくない。
「僕は5日間で全てをかけて小説を仕上げる!だから2だ。迷いや後悔はない。」
「へぇ…じゃあその言葉今だけ信じるから。裏切ったら承知しないから。」
もう迷いはない。
僕は今からでもすぐに小説を書こうとする。ネタはまだないが、書き始めてから何か思いつくかもしれない。
だが、
「とりあえず寝てないんでしょ不潔。少し休憩すれば?万全な状態で書かないと体がもたないよ?」
「そうだね。とりあえず一旦休むことにするよ。」
佐藤は用を終え、マンションを後にする。
僕は眠気が限界に来ていたため、ベッドに倒れるように寝た。
ーー締め切りまであと3日
【昼】
よく眠れ、すっかり元気になった僕は2日前からちょくちょく小説を書くことができた。
思いつく限りのことを書く。毎日。
この状態ならばなんとか間に合いそうだ。
ピンポーン。
天使が来た。
僕はつかさず、小説を書くのをやめて玄関へ行く。
「差し入れ持ってきたわよセンセっ」
「モカさんどうも!」
「ふふっ、センセーが元気になって嬉しいわ!」
今日は珍しく、モカさんが特製のお弁当を作ってくれて弁当箱とトランペットを持った小さい少女を連れてやってきた。
ん?少女?
「ほら…メイ。挨拶しなさい。」
「ブォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!ブォオオオオオオオオオオォォォォ!!!!!!!ブォオオオオオオオオオオ!!!!」
「うぐっ!!耳があああああ!!?!!?」
少女は僕の耳元にトランペットを向けて爆音を鳴らしやがった。
急なことですごくビビってしまった。
そのあと少女はすぐに、どこかへ走って逃げていった。
「モ、モカさん…あの子は?」
「あらら…ごめんなさいねぇ。メイは私の娘で…
(娘ってリアルマジママだったのかーーー!!!)
あの子ったら人見知りで、人に挨拶するとき耳元でトランペットを可愛くふくのよ。」
全くもって違うだろと内心ツッコミした。
あんな子がトランペットで爆音を耳元で鳴らすとか大迷惑だし、どんな育て方したらああなるのか不思議に思った。
それに予想はしていたが、ママさんだと言うことを知ってしまい、驚いた。
「まあ…あの子のことは私が後で叱っておくから…センセっ、弁当食べて元気つけてね。」
「は…はぁ…ありがとうございます。」
モカさんと話を終え、玄関から出て行った。
(モカさん……両耳に……耳栓……)
僕は虚しいようでよくわからないまま、魔女からもらった弁当を食べることにした。
…夜にて
「そのね。私は…信じてたよ。信じた。信じたのにさ…なにこれ?」
「なにこれって……小説だけど。一応完成したよ。」
「完成したよって…………これが?」
タイトル無 /// 文:僕は死にたい…
「ほらね?完成。」
「じゃないよ!!!!!!!なんじゃこりゃ!!この一文だけの小説!あんたなにやってたの!全然できてないじゃんか!!何よこれ?!!」
「これが僕の…ドロドロ系うつ系の小説だ。」
「一文だけで終わる小説があってたまるか!!!!こんなの小説じゃないでしょ!ただの名言…いや迷言でしょ!!どう言うことよ!」
僕はこの二日間、なにもしてなかったわけじゃない。全力で何時間もかけて1文字ずつ考えてきた。
何度も書き直してできた大作だ。
そう佐藤に伝えたが…
「はぁ…後3日ね。」
「後3日だけど完成してよかったね!」
「………監獄行き決定。」
嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…
「嫌だああああああああああ!!!!!」
ーー締め切りまであと0日
【真夜中】
ここはとある会社の編集部
佐藤は、ようやく小説ができたことを編集長に報告していた。
「どうでしょうか編集長。なんとかギリギリ間に合いました。」
「ふむ…そうか、ご苦労だった。」
「はい!」
ギリギリだったがなんとか間に合わせることができてほっとする佐藤。
監獄部屋にて監視しつつ、不潔が手を止めたら注意または体罰を施行するを繰り返し、ようやくあいつから…
「アアアァァ“ ア“アアア…ア”」
と完成したみたいなことを言ったため原稿を受け取り、急いで編集長に持っていって確認を受けた。
内容はまだ見てないがおそらく素晴らしいものが書けているだろう。
しかし編集長からこう返ってきた。
「佐藤。これはボツだ。今回の件は無しだ。」
「ど、どうしてですか?」
「そうだな…まずあいつを追い詰めすぎた。その上で何時間も頑張って書いてくれたが…まあ…内容を見てからだ。ほれ。」
「は、はぁ……」
佐藤は没になったことを内心良かったのか悪かったのかわからないまま、編集長から受け取った原稿を見てみる。
【タイトル:死】
【文】:死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたいシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイ…いいいいいいいいいいいいいイイイイイイイイイイイ……………
「佐藤。納得したか?没決定だ。これからもっと忙しくなるだろうが…みんなで乗り切ろう。」
「はい…」
佐藤は最後にこう思った。
不潔は最後まで諦めずに小説そのものになったんだ…と。
うぇーっす