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初クエスト~準備編~

台風すっごい……

「では早速冒険者の仕組みやギルドについて説明させていただきます。」


 真偽を無事確かめ終え、カウンターへと戻ってきて、冒険者の説明を受ける。


「まず、こちらが冒険者カードになります。」


 渡されたのは名刺サイズのカードだ。そこには名前と性別、そして右下には☆がひとつ書かれている。


「こちらのカードは手の甲の紋に合わせることで本人であると認識できます。つまり身分証の代わりになってくれます。」


 試しに手の甲にかざしてみると、紋が浮かび上がって発光した。


「おぉ~」


 こんな小さな魔法でもやはり感動してしまう。しばらくの間はこのかざして発光を繰り返して遊んでいる自分が想像できる。


 今からでももう一度やりたいが、受付嬢のお姉さんが次の説明をしたそうにしているのでぐっとこらえる。


「では、冒険者カードに記載されている内容についてご説明させて頂きます。」


 冒険者カードに書かれているのは以下のとおりである。


=======================================


氏名:チハヤ・カグラザカ  男


最終更新地点:レスタード王国 王都


職業:冒険者


クラス:☆


=======================================


 最終更新地点とは、冒険者ギルドのある場所や冒険者ギルドが認めている街において、換金やクエストを受けたりすると更新される。


 職業とはその名の通り冒険者や商人、鍛冶師などが表示される。これによって冒険者は冒険者の、商人には商人といった、冒険者ギルドで取り扱うクエストの種類が変わってくる。


 クラスはでクエスト難易度を決めるために必要な基準で、☆の数が多ければ多いほど難度の高いクエストを受けることができるようになるのだそうだ。要するに実力を簡単に表示できるものである。


 現在確認されている最上位クラスは☆10クラスなのだそうだ。どのくらいすごいのかというと、一般的に国の精鋭軍の者たちが冒険者のクラスに当てはめると☆5クラスだという。


 単純に戦力が倍というわけではなく、それ以上の実力を持っているのはこの世界に来て一日しか経っていない俺でもわかる。恐らく一個師団クラスの実力は普通に持ち合わせていると考えるのが妥当だろう。


(まあ俺とは無縁の話だな)


 冒険者カードの裏面にも記載があった。そこには『進行中のクエスト一覧』と書かれている。


 これはクエストを受けると、クエストの達成条件が簡単に記されるそうだ。最大で5つまで表示することができるが、その影響から受けられるクエストの上限も5つだ。


 どういう仕組みで記されているのか尋ねると、ギルドの受付嬢と各支部長であるギルドマスターのみが携帯を許されている指輪の魔道具がそれを可能としているという。


 なるほどと、一通りカードの説明を受けて感嘆する。


 つまりこのギルドカードに金額なんかが表示された日にはVISAになるわけだ。


 この世界では化学が発展していない代わりに魔法がその代用となってるからか、変なところで向こうの世界の近代文明に匹敵する技術を習得していた。


 情報技術に関しては中世よりも(むし)ろ19世紀や20世紀といった近現代に近いのかもしれない。電話なんかも魔道具で解決していそうである。


「冒険者カードの説明は以上となります。続いてギルドの説明をしていきますね。」


 冒険者ギルドにはどこの支部に行っても必ず、換金所、カウンター、預り所の三つが置かれている。


 この世界での冒険者ギルドの位置づけとしては、国を跨いで世界共通に設置してある役所みたいなところだろうか。冒険者ギルドの設置を許していない国もあるが、ほとんどの国に支部を展開させているため困ることはないだろう。


 また冒険者ギルドには商人ギルドと鍛冶ギルドの二つのギルドが傘下についており、それぞれのギルドで同じことができる。ただあくまで同じことができるというだけで実際には冒険者は冒険者ギルドにというようにそれぞれの職業のギルドに行くそうだ。だからこのギルド内にはいかにも冒険者といった者が多いのだろう。


 ギルドのクエストに関しても、メインで扱うのはそれぞれのギルドが基本で、それ以外の担当のクエストを閲覧するにはカウンターに行くしかない。


 さらにギルドクエストには指定クエストがあり、☆5以上のクエストがそれに相当する。そのクエストに関しては国単位の範囲でそれぞれの支部に貼られていて、それ以下のクエストに関しては地域ごとになっている。なんでも☆5クラス以上の冒険者になると、報酬も増えるが人数が圧倒的に少なくなるのだそうだ。そのため地域によってはそのクラスの冒険者がいないこともあるので、国単位でクエストを発注しているということだそうだ。


「以上で説明は終わりになります。何かご質問はありますか?」


「クラスを上げるにはどうすればいいんですか?」


 これは結構重要なことで、何せ報酬にかかわる。☆1クラスは報酬が極端に少ないはずだ。ここまで簡単に冒険者になれるということは、☆1クラスのクエストは大したものがないからだろう。


「クラスの上昇は基本的にノルマによって行われていきますよ。例えば☆2クラスに上昇するには5つのクエストをクリアし、その後申請をして一度こちらが指定した☆2クエストをクリアすれば晴れてクラス上昇です。」


 ☆4クラスまではノルマ数は増えるだけで形としては変わらないが、それ以上の☆5クラスを超えるとプラスαとして演習が入ってくる。演習はシンプルで、昇格するクラスに既にいる者と戦い、その者が認めれば晴れて昇格出来るというものだ。


ただこの方法が取れるのも☆7クラスまでで、☆8以降に関しては通称英雄クラスとまで呼ばれているほどの者達であり、10人いるかどうかというレベルだ。


ではどうやって昇格するかと言えば、簡単な話、不可能ダンジョンの攻略や災害レベルの魔物を倒すことらしい。


(もうそれ人間やめてるだろ……)


その話を聞いて軽くドン引きした。


向こうの世界にも各武術の神様と呼ばれている人達はいたが、それはあくまでも対人での話である。もちろんクマを倒したなんて事も聞いたことはあるが別に災害レベルじゃない。


軽い気持ちで来てしまったが、とんでもない世界に来てしまったのかもしれないと早速後悔しそうである。


「ほかに質問はありますか?」


「いえ、ありがとうございました。」


受付嬢のお姉さんに聞かれるが、もうお腹いっぱいなのでこれくらいにしておく。


「クエストの受託については案内板に貼られている紙をこちらに持ってきてもらえれば受けることができます。それでは、よい冒険者ライフを!」


諸々の説明を終え、笑顔で胸の前で一つ手を叩いたお姉さんが眩しい。


 そしてまた目頭が熱くなってしまった。「よい異世界ライフを!」を何の抵抗もなく言えるなんて。



「さてと、とりあえずクエストを見に行くか」


 クエスト案内板には所狭しとクエストの紙が貼られている。

よく見るとそれぞれのクエスト難度に区分けされていて、高いほど上にあった。高い位置にある高難度のクエストに関しては、見にくかったらカウンターに行けば一覧を見せてくれるらしい。


「お、あったあった」


☆1クエストの場所を見つけ、1枚1枚内容を見ていく。意外と量が多いが、どれも家庭教師やペットの散歩、捜し物のお手伝い等、冒険とは程遠いものが多かった。1番酷かっのはサンドバッグの募集だろうか。


そんな中から冒険っぽいものを見つけてカウンターに持っていく。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


☆1クエスト:薬草の採取


王都近郊にあるガーラ森林に生息する薬草を麻袋いっぱいに摘んできて欲しい。

薬師オルバーニャ


報酬:銀貨3枚


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


なんというか現代日本で生きてきた身としては、いくら物価が安いとはいえ、日給がこの値段だと思うとかなり違和感がある。1日銀貨3枚だと銀匙亭にすら泊まれない。(この国に限らず、宿代は一泊金貨1枚からが一般的)


だがとりあえずクエストになれなければいけないため、今日のところは1つでいいという考えである。無理にクエストを沢山受ければパンクしかねないからだ。


  それに、行く途中に出会うだろう魔物を倒すことができれば、一部分(主に皮や牙)を持って帰ることで換金所で交換することもできる。


 幸いにして一週間は食事と宿がタダでついている。その間にクエストに慣れて、一日で金貨一枚以上稼げるようになればいい。


 早速カウンターにクエスト用紙を持っていき、冒険者カードにクエストを記録してもらった後、麻袋をもらってギルドを出た。 


 

   *   *   *



 場所を移動して、今いるのは王都の南側の街道に出ていた。すでに日は真上を過ぎているという時間だ。


 そもそも薬草がどういう形をしているのかもわからなかったので、準備のために図書館を探して植物の本を借り、一度腹ごしらえをと銀匙亭に戻り昼食をとるといったことをしていたら予想以上に時間がかかった。


 もっとも、ゲームで見る地図なんかよりも圧倒的に広いため、物珍しさ(ゆえ)なかなか散策を楽しんでいたというのもあったが。


 ともあれ、本来であれば王都南門にある馬車を使ってガーラ森林まで行くのだが、残念ながら無一文なので徒歩での移動となる。幸いにして、そこまで距離が離れてはいないらしい。


 街道をしばらく進むと、看板が見えてくる。



 ―この先、南西側ガーラ森林―



 そう書かれて、現在地の赤点と矢印が描かれている。その看板通りに南西側を見てみれば、街道を外れ、少し行ったところに森林が広がっているのが見える。


 すでに午後ということもあって、時間がかかれば夜になり、夜になれば魔物も活発に動き始めるとのことだったので、足早にしかし軽い足取りで森林へと向かった。

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