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11.そして、新しい運命が始まる

 ――パァンッ!!


 女神の庭園に水球の弾ける音が響く。

 俺は引き続き水球に『魂の減退』を当てる修行に励んでいた。


 実はその後、魔法をもうちょっと発展させて、魔法のモニターに点数を表示するようにしてみたんだ。

 そうしたらゲーム感が一気に増して、ついついハマるようになってしまった。


 そのおかげもあって、かなり速い水球に対しても3割くらいは当たるようになっていた。

 ただそこからがなかなか上手くいかず、3割を維持したまましばらくの時間が経過してしまった。


「ふむ、これはゲーム性を上げてもう少し集中力を高める必要が――……」


 休憩の合間に改善点を考える。

 ボーナスタイムを入れてみたりとか、たまにレアな水球を出して高得点にしてみたりとか。

 うん、それはそれで楽しそうだな。


 俺がそんなことを考えていると、どこか遠くから鐘の音が響いた。




 ――ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン 




「――は……?」


 響いてきたのはいつもとはまったく違う鐘の音。しかも――




 ――ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン 




 それはずっと鳴り止まない。

 遠いながらも激しい音。綺麗な楽器から強引に叩き出しているかのような、荒々しい音。


「えぇ……? 何だ、これ――」


 俺はいつもと違う雰囲気に呑まれ、呆然と立ち尽くす。

 何か言葉をつぶやくも、それらはすべて鐘の音にかき消されていった。




 ――ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン ガララーン 




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 転生の間。転生対象者が女神によって、新たなる力を得る場所。


 そこに、それは静かに存在していた。


「――――ッ!?」


「……ほう、貴様がこの世界の神か」


 開口一番、それはそう言葉を発した。


 俺の目の前に存在するのは輝く魂。

 輝く魂自体は先日、銀色に輝く――『ヴィオトルテ山脈』の魂を目にしたばかりだ。

 それはその魂と同じくらいの大きさをしていた。しかし、何よりも違うのは――


「――虹色の魂……ッ!!」


 ちょっと待て、これって1万年に1回ってレベルなんだろ……?

 何でこんなにも早く――ッ!?


「ふははは……。我はついにここまで辿り着いた……。全ての世界を調律するこの転生の間へと……。ふはははは、我を歓迎するが良い――ッ!!」


 虹色の魂は凄まじい圧力を生みながら高らかに吠える。しかし――


「――はい、この世界はあなたを歓迎します。しかしここは転生の間、すべての存在を転生させるために在る場所です。

 あなたもここで、新たな生をお受け取りください」


「ふっ、良かろう……。だが我は――貴様の世話にはならん! この世界の、すべての力をよこせッ!!」


 その瞬間、虹色の魂から大きな力が膨れ上がる。


「消え失せろッ!!!!」


 ――ちっ! 話も聞かずに攻撃か!!


「――『絶対障壁』ッ!!」


 周囲に凶悪な破壊の嵐が巻き起こる――その直前、俺は女神スキル『絶対障壁』を発動させた。

 これはすべての攻撃を無力化する、いわゆる完全無欠のバリアだ。

 これが無ければ開始早々に終わっていたかもしれない――。


 周囲の嵐が何とか落ち着いてくると、暴風の合間から虹色の魂が姿を現した。


「ほう、これくらいはさすがに持ちこたえられるか。ははは、腐っても世界を統べる神ではあるのだな!」


 ああもう、それにしても生意気だなコイツ!

 でもあんな攻撃を何度もされたら正直まずいぞ。ここは早々時間を止める!


 ――時間停止!!




「……ふぅ」


 ひとまず時間を止め、一息つく。しかし――


 ズガアアアアアアアァンッ!!!!!


 轟音に反応し、とっさに身体を捻じる。俺の身体のあったところに、凄まじいまでの力が迸っていった。


「――ッ!?」


「どうした、戦いの最中の油断は――死ぬぞ?」


 声の方を見てみれば、虹色の魂が悠然と宙に揺らめいている。

 え、あれ? 時間が止められていない? ……いや、これは――そうじゃない!!


「はははっ。時間停止ごときで我を止められると思ったか? ぐははははっ、そんなもの、我には何の意味も成さぬわ!!」


 ――マジかっ!?

 くそっ、考えていても仕方ない。正面切って、こいつを――強制転生させる!!


 俺はひとまず時間停止を解除した。




「――穏やかな話し合いを望みましたが、無理のようですね。それでは……実力行使で参りますッ!」


「ぐはははは、何が話し合いだッ! 貴様に分かるか? 幾兆の虚無の時間を過ごした我の思いがッ!

 ここまで、ようやくここまで来たのだ! 我はこの戦いを経て、さらなる上位存在へと至るッ!!」


 そんなこと知るか! お前はここで、力を失うんだよッ!!


「――『魂の減退』ッ!!」


「はっ! このような魔法なんぞ――ぐはっ!?」


 虹色の魂はバリアのようなものを出したが、『魂の減退』はそれを無視して虹色の魂の力を削いだ。

 ――あの感じからすると、あと4発も当てれば無力化できるか……?


「ちっ、小癪(こしゃく)な魔法が! ならば――」


 虹色の魂はかなりの高速で宙を舞い始めた。

 だが――


「――『魂の減退』ッ!!」


 パァンッ!!


「ぐはっ!!」


 こっちだって修行してたんだよ!! 命中率は3割くらいだけどな!!

 さらに――


「――『魂の減退』ッ!!」


 パァンッ!!


「――ぐふ……っ!」


 水球とは違い、『魂の減退』を当てるたびに目に見えてその速さと力は失われていく。

 そのため命中の難易度は格段に下がっていくのだ。


「こ、こんなところで――我が滅ぼされるものかッ!!」


 バチバチィッ!!!!!


「――かはッ!?」


 俺の周りに突然、強烈な電撃が生まれた。しまった、まともに食らった――!?


 意識が遠のく。だが――俺はここを、元・女神様に任されているんだ。

 何だかギャグっぽく任されたのは置いておいて、ここを守る責任があるんだよ――ッ!!


「――『魂の減退』ッ!!」


 パァンッ!!


「――つぁ……っ! な、なんと……そこから、それを撃つか――」


 虹色の魂の力はさらに弱まり、動きが緩慢になっていく。

 今までに当てたのは合計4発。あと一撃で完全に無力に出来そうだが――俺のダメージも深刻だ。さっさと終わらせるッ!!


 くそっ、目が霞んできたが――


「――『強制転生』術式発動ッ!!」


 俺はチャンスを逃さず、素早く強制転送の術式を展開した。

 その瞬間、稲妻のような光が虹色の魂を捕縛する。


 ここまで来れば虹色の魂は逃げることが出来ない。あとは時間経過により術式を進行させる!

 下位存在の『チリ』に転生させて、誰もいない虚無の世界に送り込んで――あとは自滅を待つのみ!!


「……くくく、ははは、はーっはっはっは!!!」


 俺の考えをあざ笑うかのように、虹色の魂は大きく笑った。


「――何がおかしい!?」


「くくく……。この世界では我は貴様に敵わないようだ……。ここまで来て、それは実に、実に残念だ。我は下位存在を介して、滅ぼされることになるのだろう」


 その通りだ! 長く生きたお前には悪いが、これが運命と思え!


「だが――我もそんなにお人好しではないのだよ。故に、貴様にも少しばかりの贈り物をしたいと思うのだ」


「何を訳の分からないことを――」


「ぐははははっ! 気が付かなかったか? 我はまだ力を残している! その力を使えば――この強制転生に多少の改竄を加えることが出来るのだ!!!」


「な――ッ!!」


「分かる、分かるぞ……。この世界からの出口――どうやら貴様、何やらお気に入りの世界があるようだな。

 ふはは、我はそこに向かおう。そして――貴様の愛する世界を滅ぼしてくれるわッ!!」


「そ、そうはさせない! 『強制転生』中止――」


「無駄だ! 『強制転生』改竄――! 強制発動ッ!!」




 ズガガガガッ!! パアアアアアアアアンッ!!!!




 大きな音と光を発しながら、強制転生の術式は完了させられた。

 虹色の魂の姿は当然のように無く、その場に残されたのは俺一人のみ。

 それまで激しい戦いがあったことが嘘のように、転生の間には静寂が広がっていた。


 ――ドサッ。


 俺はその場に倒れ込み、朦朧とした意識の中で色々なことを考える。

 ああすればよかった……。こうすればよかった……。でもそれは正しいのか……? もっと良い方法はあったんじゃないか……?

 それは誰にも相談できないし、これから自分で収拾を付けていかなければいけない。


「――元・女神様……。ごめん……」


 俺は最後にそんな言葉を残し、気を失っていった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 ――私の名前はセラフィーナ・ラノ・エイベル。王都ヴィエラルド生まれのプリーストです。

 親友のエリノアと一緒に冒険をしていたのですが、少し前に盗賊団に捕まってしまって……絶体絶命に陥ったんです。


 でもそんなとき、その盗賊団を壊滅しに来た勇者様に助けてもらったんです。

 信じられないことに勇者様はたった一人で盗賊団を壊滅させてしまって……私たちも、そのおかげで無事に解放されました。


 それ以来、私たちはその恩を返すため、勇者様に同行することにしたんです。


 勇者様はとても強くて、優しくて……たまに子供っぽいところもあるんですが、とても頼りになって。

 ……あ、子供っぽいというか、私たちよりも年下なんです。あんなにも強いのに、15歳なんですって。それならまだ、子供の内に入るのでしょうか?


 私たちはそんな勇者様にどんどん惹かれていってしまって――。ふたりとも、その恋心は絶対に負けていないつもりです。

 恋の前には女同士の友情なんて……そう思われる方もいらっしゃると思うのですが、でも、私たちはそれ以上に強い結び付きの仲。


 出来たら一緒に、勇者様と結ばれちゃう? そんな話もエリノアとしてしまうんです。それくらい私たちはお互いのことを、そして勇者様のことを――……。




 そんなある日、空を恐ろしい波動が駆け巡りました。


 まるで水面に広がる波紋のような――しかし、荒々しくて漆黒色をした波。

 そしてそれは、空の向こう側から逆の側まで、とても凄い速さで、何度も何度も駆けていったんです。


 どんな物語にも出てこないような、どんな伝説にも出てこないような――その恐ろしさに、私もエリノアも腰を抜かしてしまいました。


 そんな中、勇者様の声が聞こえてきたんです。


「あれは、まさか――? いや、それにしても早すぎる――。

 あの子は一体、何をしてるの――」


 ……勇者様はあれ(・・)の存在をご存知だったのでしょうか。

 いつもはどこか余裕のある表情をされているのですが、その時ばかりは私たちも見たことの無い表情で――。


 『まさか』って……? 『早すぎる』って……? 『あの子』って……? 『何をしてるの』って――……?


 その後、勇者様は私たちに、パーティを解散しようと言い始めました。


 でも、私たちは頑なに拒んだんです。

 まだ恩を返せていないこと、ずっと一緒にいたいこと、それでも別れなければいけないのなら、そのときまでは連れて行って欲しいこと。


 勇者様は一晩考えた後、どうしてもだめになったときは解散するから、と言って、引き続きパーティを組むことを許してくれました。


 足手まといになるかもしれない。でも、出来るだけお助けしたい。

 ――そして、この想いを大切にしたい。


 そんな気持ちを親友のエリノアと共有しながら、今日も私たちは、勇者様と一緒に冒険を続けさせて頂いています。




 神様、私たちの行く末を、そして世界の行く末を、どうかどうか――お護りください。

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