表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/28

10.マジカル・マジカル・ハッピネス

「ついに……完成したぞ……!」


 その日、女神の庭園には無数の水球が舞っていた。

 先日は魔法の水球を『作った後しばらくその場に維持させる』ことに成功したのだが、そこからさらに発展させて、今日は水球を『自在に動かす』ことに成功したのだ。


 しかも、制御を離しても勝手に飛び続ける優れもの!


 俺は感動に打ちひしがれていた。

 思った通りに魔法を構築できたのもひとつだが、何より俺はここから新たなステップに進むことが出来るからだ。


 それは――


「――『魂の減退』ッ!!」


 パァンッ!


 俺が女神スキル『魂の減退』を使うと、それに当たった水球が弾け飛んだ。

 つまりこれ! このスキルの命中率を上げるために、高速で動くマトが欲しかったのだ!


 何せこのスキルを使うのは虹色の魂と戦うとき――、つまり『絶対に負けられない戦い』のときになる。

 さくっと全弾当てて、さくっと強制転生に持っていくためには俺も修行を欠かすわけにはいかないだろう。


 まぁぶっちゃけ時間を止めて当てれば良いだけの気もするのだが、念には念を入れることが大切だ。

 いつになるかは分からないが、時間は湯水のごとくある。その戦いまでに、俺は百発百中を目指そうと思う。


 ……ちなみに最初の一発はまぐれ当たりだったようで、その後はさっぱり当たらなくなってしまった。ぐぬぬ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 その六日後、鐘の音が響いたので転生の間に行くと、特徴的な服を着た女性が立っていた。

 特徴的な服とはゴシック・アンド・ロリータ――いわゆるゴスロリの服なのだが、それを着ているせいか年齢はよく分からなかった。

 20代から30代、あるいは40代という可能性も……という感じかな。


 っと、それは良しとしよう。年齢がどうあろうがゴスロリはゴスロリなのだ。

 ゴスロリとはその外観だけではなく、精神性にまで関わる崇高なファッションだ。

 世間一般の人がどう思おうが、俺はかなり認めているんだぞ? まぁ、俺になんて認めてもらいたくは無いだろうけど。


 ――さて、それはそれとして仕事を始めるとしよう。

 実は昨晩、魔法のモニターで見慣れないものを見てしまったせいで少し塞ぎ込んでいたのだ。

 今回の転生をより良いものにして、昨日から続く欝々とした気分を晴れやかなものにしたいところだ。


 よーし、頑張るぞ!




「迷える魂よ……、ここは転生の間。運命に導かれし者のみが来訪を許される場所……」


「わ~! そうなんですか~!? 感激ぃ~♪」


 ……ん? んん?


「私はこの転生の間を司る女神……。名前はリーネルペルファ。

 あなたは運命に導かれ、転生の機会を得ました。どのような世界に、どのような来世を望みますか――?」


「女神様だ~♪ わ~、私って生まれ変われちゃうの~? すっご~い♪♪♪」


 ……イラッ。


「ねぇねぇ♪♪♪ どんなお願いでも叶えてくれるのぉ~?」


 ……イライラッ。


「そうね~♪ 急に言われてもちょぉっと困っちゃうしぃ、ちょっと待ってくれますかぁ~?」


 ――……。


「あのね~♪ マイカね~♪ 今でも超カワイイと思うんだけどぉ~? 生まれ変わるならね~♪」


 ――だぁあああぁあああぁあぁあぁあッ!!!!!?


 違うだろッ! これは全然違うッ!!

 ゴスロリはそうじゃないだろッ!! お前は勘違いをしているッ!! ゴスロリという価値を!!! 崇高さをッ!!!! お前はもう黙れぇえぇッ!!!!!


 ――……はっ!? 違うぞ、俺! 落ち着け、俺! ここは俺のゴスロリ論を説く場では無いぞ!?


 そうだ、まずは落ち着け。

 俺の目の前にいるのは何だ。これは転生対象者だ。

 俺は何だ。俺は転生対象者を導く女神だ。


 間違ってないよな? ……うん、大丈夫だ。どこも間違っていないぞ。

 よし、俺の心は問題無い。俺の心はいつに無く冷静だ。


 それならば後は、この転生対象者の希望を黙って聞いて叶えることだ。俺ならそれが出来る。よし、頑張ろう。頑張れ、俺。


「――はい。あなたの希望を仰ってください。思うがまま、心のままに、それを叶えて差し上げましょう」


「わぁ♪ 女神様、超気前良い~♪ 私の次くらいに可愛いかもぉ~♪」


「――ありがとうございます。それでは教えてください、あなたの望みを――」


「はぁい♪ それじゃ、次も超カワイイ感じで~♪ これは絶対ですよぉ~?」


 超カワイイ感じね。はい、了解。


「そうだぁ★ 私のいた世界って、魔法が無かったんですぅ。漫画とかアニメならあったんですけどぉ♪

 だから今後はぁ、そういうマジカルな力も使ってみたいですぅ。ほらほら、キラキラーって感じのぉ?」


 キラキラした魔法ね。はい、了解。


「そういえば私ぃ、カワイサには自信があったんですけどぉ~、何だかおハナシしてくれない人もいたんですぅ。

 私がいるだけで、みんなが近寄ってくれるような? そんな存在でありたいです★」


 みんなが近寄ってくるのね。はい、了解。


「それでね? いくら近寄ってくるっていっても、それだけじゃイヤなんですよぉ!

 私と接することで、みんなにシアワセが訪れれば良いな~♪」


 接した人がみんなシアワセにね。はい、了解。


「あ、そうそう♪ みんなのシアワセな顔、ちゃんと見たいじゃないですかぁ♪ だからテレビでも何でも良いんですけど、そういうのが見れる力も欲しいなぁって★」


 シアワセにした人の顔を見る力ね。はい、了解。


「ん~。それくらいかなぁ? あ、カワイイのは絶対ですからね★」


 うん、それは最初に聞いていたから大丈夫。


「――では、以上の希望をすべて叶えて転生して頂きます。問題無いですか?」


「はぁい♪ ばっちりオッケーでぇす♪」




 俺は時間を止めて、転生の設定をした。

 希望がちょっと特殊だったため、今回は転生スキルをたくさん盛ることになったぞ! 元・女神様を除けば今までで一番大量だ。


 これで文句を言おうものなら『女神の裁き』で滅ぼしてやろう。

 ……おっと口が過ぎた。ついでに、やろうとしても転生先の世界までは届かないからな。残念だが残念だ。


 設定に漏れがないことを確認して、俺は時間を動かし始めた。




 ゴスロリ娘(?)の身体が光り始める。


「これからあなたは新しい世界へと旅立ちます。あなたの可愛さとその存在で、みなさんに笑顔と幸せをもたらしてください――」


「はぁい♪ 私ぃ、超ガンバっちゃいます♪ きゃははー♪」


 ゴスロリ娘(?)はその言葉を残し、転生の間から旅立っていった――。


「……ダメだ、今日はもうダメだ。もう寝よう……」


 転生の間で最後に響いた声は、俺の疲れ切った声だった。

 ああもう、あんなの見せられた後でコレは、精神的に厳しいわー……。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 ――私の名前はマイカ♪ 苗字はちょとカワイクないから、そこは秘密ね★


 何か意識がフワフワ~ってしてるけど、夢を見てるみたい♪


 きっとこの夢から覚めたらぁ♪ きっと女神様がね、またカワイク生まれ変わらせてくれるんだよ~♪ 超楽しみ♪


 あ、そんなことを思ってたら、何だか夢から覚めてきたみたい♪


 うふふ、さーて、どんな感じになるのかな♪


 ――チュンチュン……。


 ん~? あれはスズメさんの鳴き声★ 新しい世界? にもスズメさんっているんだぁ? おはよー、スズメさん♪


 目が覚めるとぉ、そこは綺麗な森だったよぉ?


 ……って、あれぇ? 手が見えないけどぉ……? ってゆーか、身体が見えないよぉ……?

 鏡とか、無いよねぇ……。


 あ、あそこに湖があった★ ちょっと原始的で信じられないけどぉ……水面で映してみよっ♪


 えぇっと歩くのは……あれぇ? 私ってもしかして、浮いて移動しちゃってるっ!? うわー、超マジカル♪


 さぁて、水面まで来たけどぉ、どんなカワイイ子に生まれ変わったのかなぁ……? ドキドキ♪


 ……って、あれぇ? 水面にゆるキャラが映ってる……? きゃはは、超カワイイ~♪ ……あれぇ? でも、そうしたら私の姿はぁ?



 ――ガサッ。



 あれぇ~? 向こうの方からぁ、何だか物音がするよぉ? 誰かいるのかなぁ~?

 でもぉ、手も足もよく分からない感じになってるし~、呼ぶのはどうやるんだろぉ? ……あ、何となく呼ぶ方法が思いついたかも♪


 うーん、えいっ!!


 ――キラキラーっ


 わぁ、すご~い! 私、キラキラしてるー! えへへ、これが魔法ってやつなのかなぁ? 超キレイ♪


「――おい、向こうで何か光ったぞ!」


「本当にいるのか、あいつが……?」


 あ、気付いてくれたぁ♪ それにしても、何かを探しているのかなぁ? でもでも、『あいつ』って言ったよねぇ? もしかしたら、私を探しに来た、白馬の王子サマ……? ドキドキ★

 しばらくキラキラしたままでいるとぉ、超カッコイイ男の人が草陰から顔を出したの♪


「おぉ……本当にいたぞ!!」


「よし、一気にいくぞ」


 きゃ♪ 目が合った瞬間、二人のカッコイイ男の人がぁ、私に近寄ってきたよぉ♪ わぁい、嬉しいなぁ♪


 私のところにカッコイイ男の人が来たらね? その男の人はすっと腕を伸ばして――そしたらね、その手にはぁ♪ 鋭いナイフが――って、えええええええっ!?




 ザシュッ!!




「――よし! さすがアンドレアだ、今の一撃すげー良かったぜ!」


「ははは。デリックがいつも修行を付けてくれるからさ」


「お、見ろよ! こいつ、ミスリル鉱石を落としたぞ! やったな、レアアイテムをゲットだ!」


「うお、マジじゃないか! レアアイテムを持っているモンスター――マジカル・ポポルンがいるって聞いていたけど、まさか一匹目で落とすなんてな!」


「そういえば何か光ってたしな、こいつ。何だろうな、俺たちにレアアイテムを贈ってくれたのかな?」


「そうだな。きっと俺たちを祝福してくれているんだろう。ふふふ、俺たちも昨日……ようやく、だったからな」


「おいおい……こんなところで、そんなことを言うなよ……」


「ははは、すまんすまん」


「よし、それじゃ今日は帰って、祝杯と行こうぜ」


「本気か? まだ朝だぜ?」


「ははは、そう言うなって!」




 ――……えぇ~? 何これぇ……。何かカッコイイ男の人たちがぁ、可愛いゆるキャラを倒して帰っていく光景が見えるんですけどぉ……?

 でも、何だか幸せそう……? それにしてもぉ、私ってどうなったのぉ? 何かお空でふわふわしてるぅ……。


 えぇ~? 何だか身体も動かないしぃ? 何か視界の隅っこにボタン? があるんですけどぉ?


 ……わわっ! ボタン? を見てたら、何かが出て来たよぉ~!?


 ----------------------------------------

 【レアアイテム確定所持】

 (転生スキル/パッシブスキル)

 モンスター種の場合、絶命したときに必ずレアアイテムを落とす

 ----------------------------------------

 【幸運の贈り物】

 (転生スキル/アクティブスキル)

 LUK+300の加重値を得る。

 自身のLUKを周囲に分配する。

 使用中、身体が金色に輝く

 ----------------------------------------

 【死魂の楔】

 (転生スキル/パッシブスキル)

 絶命時、意識を保ちながら魂をその場に留める

 ----------------------------------------

 【流転する命】

 (転生スキル/パッシブスキル)

 絶命時、一定時間後に新たな命を得る。

 HP、状態異常、疲労、欠損を全て回復する

 ----------------------------------------

 【限定される命】

 (通常スキル/パッシブスキル)

 指定の時間が訪れたとき、即死する

 ----------------------------------------


 ――なぁに、これ~! 超意味が分からないんですけどー?


 もうやだー、帰りたーいっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ