拝謁
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俺とシェリーが、王都に着いてから三日が経った。街を出る時にマークさんは、三日で王都に着くと言っていたから、そろそろ着く頃だ
ろう。
予め泊まる宿を聞いていたので、俺とシェリーは、昼食を済ませた後宿を出た。マークさんの泊まる宿の名前は 『商人の集い』 とても宿の名前とは思えないが、王都の商業ギルドが経営していて、中で働く従業員もギルド職員、泊まり客の殆んどは、王都に買い付けや売りに来た商人だ。
商人の商人による商人の為のギルド。
何処かで聞いた事がある様な無い様な…………まあ良い。
『商人の集い』 の扉を押して中に入る。一階は食堂と宿の受け付けカウンター。
この世界の典型的な宿の造りだ。
カウンターに居る従業員に、マークさんの事を訊ねると、既に宿に入ったそうで、呼んできてくれると言う。俺とシェリーはテーブル席に座り待つ事にした。
「ケンジさん、良くお越し下さいました」
食堂に入って来たマークさんは、俺達を直ぐに見つけて声を掛けてきた。
「マークさんも無事に王都に着いて何よりです」
マークさんは、昨日の夜に王都に着いたそうだ。そして今朝、侯爵様に拝謁の伺いを立てて、明日の昼に拝謁する事になった。マークさんは、俺とシェリーに、拝謁のマナーを教えてくれた上に、拝謁に着る衣装迄用意してくれていた。
普段の俺なら、気が付いたかも知れないが、シェリーと新婚旅行に行ける事で気持ちが舞い上がっていた様だ。
「本当なら、衣装は俺が用意しなければいけないのに……ありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらずに、明日は、ケンジさんの宿に馬車を回しますから、宿でお待ち下さい」
俺達はマークさんと明日の打ち合わせをした後、宿に戻った。
そして翌日。
どうしてこうなった……!
テーブルに席が四つ、侯爵様とマークさん、俺とシェリーが座っている。テーブルの上には、ステーキが皿に乗せられている。空になったスープ皿と交換したのだ。
「ケンジとシェリーよ、味はどうだね」
「はっ、はい、とても美味しいです」
侯爵様に返事を返すも、緊張して言葉が出てこない。
「侯爵様、ケンジさんとシェリーさんは、緊張しているのです」
マークさんは侯爵様に別の話題を振って、俺が少しでも会話しやすい様に執りなしてくれたのだが、侯爵様は意に介さず、とんでもない爆弾を
落とした。
「ところでケンジよ、そなた儂の家臣にならんか、もしなるのなら、儂が王と成った暁には、貴族の位を与えよう」
拝謁して直ぐに昼食の席に呼ばれたから、何か有るとは思っていたが、まさか家臣とは。きっと侯爵様は、ドラゴンを倒した力が欲しいのだろう。だが、俺は面倒事は苦手だし、今の生活に十分満足している。
どうやって断ろうか。
「侯爵様、お気持ちは有り難いのですが、私は家臣よりも、この国の民として生きてゆきたいのです、私はこの国に弓を引く者ではございません、この国に窮地が訪れた時は、喜んで力を振るいましょう」
俺の断りの言葉を引き継ぐ様に、マークさんが、侯爵様に進言した。
「ケンジさんはプレリの街で、宿を営む傍ら、街の人達の為に公衆浴場を建設している最中です。その様な人柄のケンジさんが、リージョンド王国に仇をなす者で有るはずなどありません」
マークさんの進言を受け、侯爵様は
俺の顔を見た。
「ケンジよそなたの言葉に嘘はないな?」
「ございません、この国の窮地には喜んで馳せ参じます」
「…………解った、ケンジを家臣にするのは諦めよう」
侯爵様の言葉に俺は安堵し、隣に座っているシェリーを見た。シェリーは大きく息を吐いた後らしく、お辞儀をしている様な姿勢でいた。シェリーも俺が侯爵様の家臣になるか、心配したのだろう。そっとシェリーの手を握った。シェリーは握り返して俺を見る。俺は頷いて微笑んだ。
「んんっ! 話しは終わりだ」
二人の世界に入っていた俺とシェリーは、侯爵様の声で現実に引き戻された。
「マークから聞いてはいたが、そなたらは、本当に仲が良いな」
「自慢の妻です」
この時ばかりは、緊張もせずに答える事が出来た。シェリーは恥ずかしそうに顔を赤らめていたが、気にしたら負けだ。
侯爵様は、ドラゴンの素材全てを買い取ってくれて、俺は金貨一万五千枚を手にした。マークさんに借りた金貨四千枚を返して、翌日俺とシェリーは、子供達が待っているプレリの街に向け王都を出た。
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