食材ハンター
「アミ、今だ!」
「ウィンド・カッター」
アミの放った風の刃が、牙イノシシの首を切り落とした。アミは風属性の魔法を得意としている。カミソリの刃ように薄い刃は、切れ味抜群だ。俺はアミの仕留めた牙イノシシ に近づき、魔法のウェストポーチに入れてから、アミを労う。
「ごくろうさま、魔法の切れ味もよかったよ」
俺はアミの頭に手を置いて言った。
「えへへ、良かったのです」
アミも魔法の切れ味に満足げである。
「そろそろ、フォート達と合流しよう」アミにそう言ってピンガーを放つ。そう遠くない場所に反応がある。俺はアミを抱っこして、ウィンドライドを掛けた。
俺達は朝から森に来ている。狩るのは、魔物ではなく動物、食材だ。
実は、今『草原の止まり木』 は大繁盛中なのだ。風呂を目当てに女性冒険者や商人が、わんさと押し寄せて満室状態。マリーさんとシェリーはてんてこ舞いだ。シェリーも、今日の狩りには参加していない。
狩りに来ているメンバーは、俺とアミ、フォートとメリアだ。ディエスも宿の手伝いで残っている。
フォートとメリアに合流して、狩りの状況を聞く。キジ鳥が三羽に野うさぎが二羽、俺抜きで狩りをしたにしては中々の成果だ。フォートとメリアには、狩りを始める前に、ピンガーを放ち反応のある場所を教えていた。俺とアミは大物、フォートとメリアは鳥や小動物を狩る事を目的にしている。
「フォート、メリア、ごくろうさま。まだ昼前なのに大したものだ」
「うん、最初は上手くいかなかったど、途中から馴れたよ」
そう言ってフォートは弓を見せた。
今日の狩りから、フォートには、短剣の他に弓を持たせている。フォートも魔法は使えるが、本来は戦士職でアミほど魔力量がない。相手が魔物なら攻撃してくるから、向かい打てば問題無いが、動物は逃げる事が多い。なので弓を持たせた、矢に魔力を通して放つから、魔力を流す練習にもなって一石二鳥だ。
昼食を挟んで午後も狩りをする。
午後は俺とフォート、アミとメリアに別れて狩りをした。フォートは弓で牙イノシシの目を射抜き、短剣を抜いて走り、牙イノシシの足を斬り、返す刀で喉を切り裂いた。流れるような動きに惚れ惚れしてしまう。思わず叫んだ。
「フォート、ナイスだ!」
「へっ、ナイス?」
フォートは俺を見て、きょとんとしている。あ〜ナイスは通じないか、
日本の言葉だよね、なので言い換える。
「フォート、素晴らしく良かったぞ、流れるような良い動きだった、腕を上げたな」
フォートは短剣に着いた血を振り払って鞘にしまった。
「今のは自分でも良かったと思うよ」照れ笑いして俺の側にくる、俺はフォートの肩に手を置き歩き出す。目の前で子供達の成長を見れるのは幸せだ、帰ったらシェリーに伝えよう。
夕方も近づき、食材もかなり捕ったのでアミ達と合流して森を出る。
今日の獲物は牙イノシシ五匹、キジ鳥六羽、野うさぎ五羽、大猟だ。
「みんな、お疲れさま、十分狩れたから、帰ろう」
皆にオーバーロールウィンドライドを掛けた。草原の上を滑るように飛ぶ、風が気持ち良い。
街に帰る道中、ピンガーで探索しながら進むと、街道の方が騒がしい。
何かあったかと街道に近づく。人と人とが争っている反応だ。次々と反応が減っていく、俺はウィンドライド破棄して止まった。
「みんな、街道で騒ぎが起こっている、見てくるからここで待っていて欲しい」アミが不安そうな顔で俺を見る。
「何か、あぶない事なのです?」
アミの問に笑顔で答える。
「大丈夫だよ、おとうさんに勝てる人はいないから、安心して」
アミを抱き上げフォートの肩を抱く。
「メリア、アミとフォートを頼む」
「お任せ下さい」
メリアは持っている杖を地面に突き立てた。
「それじゃ、ちょっと行ってくる」
子供達とメリアにサンクタスサークルを掛け、俺はウィンドライドを使い、騒ぎの現場に向かった。
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