ディエスの友達
物音がして目を覚ます。シェリーが着替えている、朝食の準備に厨房へ行くのだろう。薄目で見ていると、支度を終えたシェリーが俺の頬にキスをして部屋を出て行った。俺は愛されてるな。ベッドから出て着替えて食堂に行く。シェリーとマリーさんは厨房に、テーブルにはフォートとアミが座って、料理を待っている。
「おはよう、フォート、アミ」
「「おとうさん、おはよう」です。」
子供達は朝から元気一杯、アミは待ちきれないのか、フォークとナイフを手に持ち、待ち構えてる。
「ケンジ、おはよう。」
「おはよう、シェリー。」
丁度料理を運んで来たシェリーにおはようのキス。さぁ食べよう。
ベーコンエッグにパンにサラダ。
ホテルのモーニングみたいだ。
食後のハーブティーを飲んでると、
ディエスが俺達のテーブルにやって来た。
「昨日、王都の友人から手紙が来て、今日プレリの街に着くと書いてありました、ぜひ友人に師匠を紹介したいのですが、宜しいでしょうか。」ディエスの話しでは、魔法学校で一緒に学んだ友人だそうだ。
「いいよ、そう言う事なら、午後の練習をやめよう。友達とゆっくり話したら良い。」友達は大切だ、俺は、家族はいるが、この世界に友達と呼べるヤツはいない。何せコミュ症なもので。
ディエスの友達が宿に着いたのは、昼を少し過ぎた頃だった。
「こんにちは、こちらの宿にディエスと言う女の子はいますか。」
シェリーが受けてディエスを呼びに行く、俺はディエスの友達を見る。
女の子だ、背が小かく黒髪のめがねっ子、それにしても、オレンジ色のローブとは派手だな。そんな事を考え待っているとディエスが来た。
「メリア、久しぶりですね。」
「ディエスも元気そうで何より。」
久しぶりの再会なのだろう、二人は抱き合って喜びを表している。
「メリア、紹介したい人がいるの。」
「こちらは私の魔法の師匠、ケンジ先生よ」先生って、照れるな。
「初めまして、ケンジです。ディエスから話は聞いたよ、学校の同級生だってね、よろしく。」
「メリアです、こちらこそよろしく。」
軽く挨拶をして自己紹介が終わり、
メリアがうちに宿泊する事になり、ディエスはメリアを部屋に案内した。夕食後、ディエスとメリアが俺に相談があると言うので、食堂で話す事になった。
「鉱石を取りにアルジャンテ鉱山に行きたいのです。」
アルジャンテ鉱山は、プレリの街から西に行き、ラック村を通り、そこから2日ほどでモンターニ村に着く
。モンターニ村はアルジャンテ鉱山の麓にある村で、鉱山に入る鉱夫はこの村をねぐらにしている。プレリの街から3日ほどの道のりだ。
「メリアは、鉱石を取りに行くのに冒険者を雇って行くと言うのです。私はメリアが冒険者を雇う事に反対してます。」
ディエスの反対する理由はこうだ。
女の子1人に複数の冒険者が付いて、往復1週間の旅をする。荒くれ者の冒険者達がメリアに善からぬ事しないか心配なのだ。まぁ、気持ちは解るな、メリアをシェリーに置き換えたとする……絶対冒険者など雇わない!
俺はメリアに提案する。
「俺を雇わないか?弟子のディエスもサービスで付けるぞ。報酬は金貨10枚、格安だ。」
「本当にその金額で宜しいのですか?」メリアは目を丸くして聞く。1週間ボディーガードする金額としては、確かに破格だろうな、1週間としては、な…
俺がそれで問題ないと言うと、メリアは快諾して、俺達を雇う事になった。
「そうと決まれば、シェリーに家族全員のお弁当を頼まなきゃ。」
「ええっ、家族全員!」
メリアはびっくりして椅子から立ち上がった。
俺は笑顔でメリアに言う。
「うちは移動する時、家族全員です。」
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