弟子入り
「ちょっ、ちょっと待ってくれ」
いきなりの弟子入り志願に俺は困惑して、ついどもってしまった。シェリーが、俺の腕をきつく掴み爪が腕に食い込んでる、痛いよシェリー。
「ケンジさんの魔法を見て感動しました。火の魔法を使ったのは、解りました。ですけど、体内で破裂する魔法なんて知りません。」
やはり創造魔法を人前で使ったの不味かった。今度から気をつけよう。
「君の言うとおり、あれはオリジナルの魔法だ。けど、他人に教える気はないし、弟子を取るつもりもない、他の魔法使いを当たってくれ。」俺は、突き放した言い方をした、期待されても困るしな。
「ケンジさん、お願いします、どうか弟子にして下さい。」
「いや、駄目だ、弟子は取らない。」
俺とディエスが押し問答してると。
「ケンジ、取り敢えずプレリの街まで付いてきてもらいましょう、フォートとアミも疲れてきてるし。」
シェリーはそう言って子供達を見た。そうだな、ここで立ち話してても時間を食うだけだし、女の子ひとり残して帰るってのもな。
「取り敢えず、俺達の住む街まで来ないか、話しはその後だ。」
「解りました、付いていきます。」
俺はオーバーロール・ウィンドライドをみんなに掛けた。いつものように左右にフォートとアミ、背中にシェリーがしがみついた、それを見たディエスは。
「あの〜私はどうすれば?」
俺はアミが掴んでる右腕の上、肩が空いてるのを見て。
「ディエス、俺の右肩…」
「ディエスさんは私の背中を掴んでね、しがみつかなくても大丈夫だから。」
俺の声はシェリーにかき消された。
じゃあ、何でシェリー達はしがみついてるんだ?
街に着くまでディエスは興奮していた。凄い凄いの連発、ウィンドライドをディエスに見せたのも不味かったな。家に着きマリーさんにディエスの事を話した。ディエスはこの草原の止まり木に宿を取り、弟子入りの話しは翌日話し合う事にした。
お湯を張ったタライに座ると、シェリーが背中を洗い始めた、手で洗ってくれるのは嬉しいし気持ち良い。
「ねぇ、ケンジ、私はディエスさんを弟子に取る事は賛成よ。悪い子じゃないと思うし。」シェリーは背中を流しながら言う。
「森にレベル上げに行く時に、赤の他人が家族に混ざって行くのに抵抗はないのか?俺はやだ、魔法にしても家族以外の誰かに教えたくない。」俺は素直に吐露した。
「ケンジが私達を一番大切に思ってくれている事は知ってるわ、凄く嬉しい。」背中を洗い終わり、シェリーは前に回って胸を洗い出した、くすぐったい。
「でもね、ディエスさんを弟子にする事で、ケンジや私達もプラスになる事があると思うの」シェリーは俺の腹の下を洗いながら言う。
「うっ、わかっ…た、シェリーの言うとおりにするよ。」俺はシェリーの説得と言うか、洗いに折れた。男なんて皆こんな者さ。
「シェリー、次は俺が洗うよ、良いだ…」「それはダメ!」
くそっ、なんて身持ちが堅いんだ。いや、夫婦でそれ以上の事をしてるんだから、今の言葉は当てはまらないな。そんなこんなで、致すこと致した翌日。
「ディエス、君を弟子にしよう。」
「ありがとうございます!ケンジさん」ディエスは喜び頭を下げた、頭を下げるなんて大袈裟だな。
「ディエス、頭を上げてく…」
「ディエスさん、弟子入りおめでとう。」俺の声にシェリーが被せた。
「四番目の弟子として歓迎するわ。」俺は目を見開きシェリーに聞いた。「四番目?」
「そうよ、私が一番フォートが二番アミが三番、ディエスさんは四番目の弟子よ。」シェリーは、ディエスに向き直り。「今からディエスさんは、ケンジの事を師匠と呼んでね。」
いきなり弟子が四人も出来るとは、後シェリーはディエスに俺の名を呼ばれたくなかったようだ。




