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あっち向いてホイ

作者: のぎVer.2

僕は目が覚めると、牢獄のような部屋にいた。何故この部屋にいるのか検討もつかない、ただ、ひとつ出たいという感情を失ったのか、それとも出られないと直感的に思ったのか、この部屋から出ようとは思わなかった。


この部屋は鉄製の壁に、仕切り窓で部屋がふたつに分けられている。向こうとこちらにドアがひとつずつあり、音声が届くと思われるスピーカーがひとつずつある。


そのうちのひとつに僕がいるが、窓で分けられた向こうの部屋にも誰かの人影が見えた。


目が完全に覚めた僕は、人の輪郭がハッキリと見える。それがすぐに、誰かが分かった。


幼稚園児の頃からの幼なじみだ。向こうも僕に気づいたのか、仕切り窓に2人で近づいた。何故ここにいるのか分からないまま、雑談をしていた。


数分経った頃、スピーカーから聞き覚えのあるような無いような、そんな声が聞こえてきた。その声は僕達にひとつの課題というか、ゲームを提案してくる。


それは、『あっち向いてホイ。』


これだけ聞けば簡単なゲームだった。しかしルールを聞いてから、2人は震えを抑えることはできなかった。


ルール

あっち向いてホイは10回行うこと。

じゃんけんの段階でアイコになったら2人とも死。

じゃんけんが終わり、あっち向いてホイに成功したら、負けた方は死。

10回終わっても死亡者がいなければ、2人ともこの場から開放される。


というものだった。その後聞かされたルールで、この時2人は話し合って良いらしく、なにを出すのか示しあわせていいというものだった。


このルールを聞いて、2人は安堵した。僕達は幼なじみで心が通じあっていると言っても過言ではない。赤の他人ならともかく、2人は生き延びるのは簡単だと思った。


ルールを聞いて数分後、ゲーム開始のチャイムが鳴る。2人は示し合わせたとおり、僕がじゃんけんに勝った。


あっち向いてホイでは、わざと失敗させて1回目を難なく成功させる。


同じように2回目、幼なじみが勝ち、あっち向いてホイではわざと外す。


そのように進めて4回目も無事に終わった。5回目を始めようとした瞬間、スピーカーから声が聞こえてくる。


それは、僕の過去を抉るような、暴露と言うべきものだろうか、それがスピーカーから聞こえてくる。


僕は昔、いろんな人にいじめられていた。その時、助けてくれたのが幼なじみ。ずっとそう思っていた。しかし、スピーカーから聞こえてくる声は、そのいじめの首謀者が、幼なじみだと言っている。


それを信じようとは思わなかった。まさかそんな訳がないと。


疑念を抱きながら、5回目、6回目と終わらせ、7回目を始めようと思った時、3度目の放送が聞こえる。


内心、辛かった。


その声は無慈悲にも、過去をいじめてくる。


僕にはずっと大切な人がいた。その人は、いつか遠く離れていった。大切な人だけではない、友達もいつしかいなくなっていった。その時はとても辛かったが、幼なじみさえいてくれた、それだけで良かったと思っていた自分が惨めだった。


まさか、この事も幼なじみがやったとは思えなかった。信じたくはなかった。


信じていたから、問い詰めなかったが、表情を全く崩さない幼なじみが、憎たらしく思えてきた。


弁明もしない、それは何故か。考えてもわからなかった。


僕は、ふと思った。幼なじみは僕を殺すのではないかと。10回目は丁度相手の番。今まで僕の事を騙してきた、最終的には僕を殺しにかかるのではないかと思った。


なら、殺られる前に殺るしかない。僕は7回目じゃんけんに勝ち、相手が見る方向に指を指せば恐怖から逃れる事が出来た。


しかし、そんな事は出来なかった。


8回目に殺そうと思ったが、裏をかいて勝ちに行っても、相手がどこを向くかわからなかった。そのため、9回目まで待つことにした。


9回目、手筈通りじゃんけんに勝ち、相手の見る方向、今回は上を向く取り決めだった。僕は殺す決心をし、指を上に向けた。が、しかし相手は上など見なかった。


相手も僕を信じていなかった。それだけだった。


10回目、取り決めなんて意味がなかった。ただ勝つことを祈ってじゃんけんをした。


次の瞬間2人は死んだ。

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