異世界ドタバタハロウィン物語
ハロウィンネタです。
勢いだけで書きましたwww
町中で菓子が配られる奇妙な事件が発生した。道行く先々で何故、という疑問の声が上がっている。だからと悠が彼らに応えることはなかった。菓子を配っている張本人であるのだから、気に留める必要がどこにあろう。
「急げ急げ……!」
焦燥感に駆り立てられて、とにもかくにも町中を疾走しては、目につく男性陣に菓子を配っていく。あまりにも突然すぎて、なんの説明もなしに配るものだから、彼らが小首をひねるもの無理はない。悠には時間がなかった、雑でも説明する時間さえも惜しまれるほどに彼は焦っていた。
「まさか鈴の発言でこんなことになるなんてな……!」
事の発端は、本当に何気ない会話から始まった。
元凶たる当事者でさえも、このような事態を招くとは思いもしていなかったと口にしている。現在は悠と同じく、町中の菓子を買い漁っては配っている頃であろう。
明日はハロウィンだ――かつての世界にて行われていた行事を千年守鈴姫が何気なしに呟いた。当然ながら、ハロウィンを知らない面々が食いつく。
悠自身でさえも、ハロウィンに対する知識は浅くしかない。お化けの格好に紛争して家々に菓子を渡すかいたずらさせるか――トリックオアトリートと要求する行事、ぐらいの知識しかなかった。無論、剣鬼の愛刀もその程度にしか持っていない。
トリックオアトリート……この一言が御剣姫守らを刺激してしまうとは、恥ずかしながら発言した時にはまったく思い至らなかった。もっと早く気付いていればと悔やみ、嘆いたところで過去は変えられない。故に現在、悠はできる限りのことをやっている。
何も知らない輩に、御剣姫守は容赦なくトリックオアトリートと唱えよう。そしてそのままいたずらをする、もちろん性的な意味合いのものだ。
男性たちにまた新たなトラウマが植え付けられる前に、悠は是が非でも止めねばならなかった。
「後はどこだ!」
「そこまでだよ悠!」
とうとう、天敵が目の前に現れる――まずは恰好から指摘してやることにした。なんだその格好は、悠は小首をひねる。
「小狐丸……その格好は?」
「何って……死しても尚想い続けている男の下へ幽霊となってやってきた花嫁に決まってるじゃないか」
「設定が多いな! 俺の知ってる仮装はもっとシンプルだぞ!?」
「固いことは言いっこなしだよ悠。それにしても、君の世界にはこんなにも素晴らしい行事があるんだね――戸いう訳だから“とりっくおあとりーと”因みにお菓子は求めてないから」
「そうはさせるかよ」
悠はお菓子を適当に投げつける。
「お菓子は確かに渡したからな。いたずらはなしだ」
「くっ……! やるね悠。だけど次に会った時は年貢の納め時だと覚悟してくことだね」
「あ、同じ相手から何度も要求するのは違反行為だからな」
「なっ……!?」
驚愕する小狐丸を置いて、悠は再び走り出す。
程なくして新手が行く手を遮った。またしてもどうして、と疑問が尽きない。立場的に考えれば、彼女は本来ここにいてはならない。
「三日月さん……」
「お久しぶりですね悠さん。そして“とりーとおあとりーと”です!」
「ルールを捻じ曲げてきた!?」
「天下五剣としての権限です」
「職権乱用じゃないですか!」
さも当然とばかりに汚職している上司に、思わず卒倒しそうになる。弥真白でしか伝わっていないはずの情報をどこから入手したかはさておき。またしても尋ねずにはいられない状況に悠は溜息をもらした。
「それで? 三日月さんのその格好は?」
「これはですね。身分の違いから成就しないことを悔やみなくなった武者が亡霊と化した姿です」
「だから設定凝りすぎ!」
三日月宗近と小狐丸……いがみ合い、時には斬り合うほど不仲でもよく似た姉妹である。
とりあえず、悠は三日月宗近にも菓子を投げ渡した。ルールの改変は如何に天下五剣であろうとも許されない。
「あ、待ってください悠さん! お菓子はいらないです、代わりに悪戯されてください!」
「全力で拒否します!」
逃走する。そしてまた絡まれては菓子を投げ渡す。
明日を迎えるまでまだまだ時間はある。どこまで捌き切れるか、不安に苛まれながら悠は町中を駆け回った。
「おぉここにいたかワシの僕よ。さて、早速じゃが……“まねーおあdすとろい”じゃ」
「帰ってください実休さん」
「ワシの扱い本当に最近酷くない!?」




