レビュワー兼定
Twitterで投稿したネタを文章化しましたwww
明晰夢を見ている。
悠が如何様にしてそうとわかったのか。答えは至って単純である。悠の視線の先には、彼にとって大変懐かしい物が鎮座している。
パソコン――現代人にとって欠かせられない文明の利器が、高天原に……ないし異世界にあるはずがない。
故に悠はこれが夢の中であると知ることができた。
「しかし、パソコンか」
つい懐かしさから、触ってしまう。
幸いなことにパスワードは設定されていなかった。簡単に使えてしまうことに、持ち主の甘さには呆れてしまう。久しいキーボードの感触を楽しんだのも束の間。悠の顔が疑問に歪められる。
動画投稿サイトの【MeTube】を開いた時だった。
オススメとして挙げられている動画の中に、見知った顔がいた気がした。
いやそんなまさか、と半信半疑でクリックしてみる――見知った顔が何やらやらかしていた。
《ボンボンはろぉみーちゅーぶ! 皆のかねちゃんこと、九字兼定だよ!》
「あいつ何やってるんだ!?」
夢の中であるとわかっているのに、ついツッコミを入れてしまう。
画面では九字兼定が元気よく挨拶をしていた。どこかで聞いたような気がしなくもないが、この場においては些細なことである。
何故、九字兼定が動画投稿をしているのか。夢というものは経験や記憶から見るものであるらしい。ならばこの夢は、己の記憶などには一切関係がない。彼女が評論家らしきことをやってたならば、いざしらず。
見たこともないし、聞いたこともない。何もかもが訳がわからない。
酷く混乱している悠を置いて、動画は進んでいく。
九字兼定が何やら箱から取り出した。どうやら袋菓子であるらしく、つまるところポテトチップスだった――どうしてそんなものがこの世界にあるのだろうか……。
《それじゃあ今日はこのおやつについて‶れびゅう”するよ!》 美味しそう~」
意気揚々と袋菓子に手をやった。
ここで、注意しなくてはならない点が一つある。袋菓子を購入した者ならば、誰しもが一度はこの失敗を通ろう。普通に開いた、次の瞬間。中身が飛び散って辺りが大惨事となってしまう可能性が、あの袋菓子には秘められている。過去、剣鬼もこの大惨事を招き落ちたのを拾って食べるというみすぼらしいことをやっている――その後で母親からはもちろんのこと、妹からもこっぴどく叱られた。
開かないからと、無理矢理力ずくでやって失敗するよりは、ギザギザの部分から裂くか、もしくはハサミを使って開けた方が断然賢い。
以上から、力ずくで開けんとしている娘に彼ははらはらとした心境にあった。
なんだ嫌な予感がする。そしてそれは、ものの見事に的中してしまった。
「あ……」
画面の前でポテトチップスが儚く舞い散る。
しばしの静寂が流れて――そして。
《あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 兼定のおやつがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!》
散らばったポテトチップスの前で泣きじゃくる九字兼定の姿があった。
何をしているんだ、と画面の外から声が入る――撮影者は狐ヶ崎為次だったらしい。
ある意味放送事故と呼べる動画を見せられて、悠は酷く狼狽した。
(……本当に俺は何を見せられているんだろう)
自らに問い、答えが出ないことに盛大な溜息をもらす。目覚める兆しが訪れるまで、他の動画を見てみることにした。




