外伝5:恋する鬼娘
本編未登場だったキャラクターの話です。
物語的には三十三話より後の話になります。
混ざりモノ――誰かにそう言われたのは、いつだったか。
もうすっかり忘れてしまったし、今となってはどうでもいい。
あたいは混ざりモノ――人間の身体に、鬼を宿した半端な御剣姫守。
誰もあたいを愛してくれる者はいない。
誰もあたいを一人の人間として見てくれる者はいない。
それなら、誰があたいを一人の女として見てくれるのだろう。
そんなの、いるはずがない。
誰も鬼であるあたいを愛してくれる人はいない。
そう思っていた時期があたいにもあったっけ――と、少女は金色のサイドテールを靡かせて、ふと微笑む。
「――す、隙ありです!」
すぱん、と鋭い音が道場内に鳴り響く。
ぽかんとするサイドテールの少女と、そんな彼女をおどおどとした様子で見ている少女。
彼女の手には竹刀が握られており、その竹刃は見事鬼神丸国重の頭部をしっかりと捉えている。
あぁ、とサイドテールの少女が納得した様子で呟いた。
対する少女は短い悲鳴を上げて、後退りを始める。
「ごめんごめん、ちょっと考え事してたから。これが本物の戦場だったら、あたいは今頃斬られて死んじゃってたわね」
「い、いえ……」
「それじゃあ、気を取り直して……やり直しましょうか。あたいに入れた唐竹打ち、なかなか見事だったよ!」
「ひ、ひいいいいいいっ!!」
涙目を浮べてながらも竹刀を構える少女に、サイドテールの少女が肉薄する。
一閃。とんと床を軽く叩く音が鳴った、刹那。
少女は壁に叩きつけられて、そのまま前のめりに倒れこんだ。
ぴくぴくと痙攣し、周りで見ていた少女らからどよめきが上がった頃、サイドテールの少女は頬に一筋の冷や汗を垂らして。
「たはは……また、やっちゃった」
かわいらしく、ぺろりと舌を出した。
村正が生み出した御剣姫守には、奇妙な誕生を果たした者がいる。
それが長曽根虎徹を筆頭とした新撰組と呼ばれる面々だった。
桜華衆に属する傍らで、新撰組は警察機構として存在する。
主な役割は町の治安維持はもちろん、男性保護法違反者による取締り、また後期型である数打達の教育係を担っている。
特に三番隊は武術教練を担当していることもあって、隊長であるサイドテールの少女――鬼神丸国重が指導に熱を入れすぎてしまうのは毎度のことだった。
医務室で意識を取り戻したと報告を受けて、お見舞いに行ったものの悲鳴を上げられたことに傷付き、とぼとぼと重い足取りで鬼神丸国重は帰路に着く。
ふと、空を見やる。
鉛色の雲に覆われた空からは白い結晶が舞い落ちてくる。
今の季節は春から夏へ移り変わろうとしている。
従って雪が降る時期ではなく、されど神威では当たり前の日常なのだ。
鬼神丸国重が担当する神威は大和の北方に位置する。
そこは一年中雪が降る場所として知られ、一部からは魔境などと呼び恐れられたりもしている。御剣姫守が生まれる前よりそうであるから、鬼神丸国重が原因を知っているはずもなく。
しかし、住めば都とはよく言ったもの。
担当してから何十年と住んでいれば、快適にすごせる方法はいくらでも出てくる。
最近では町おこしとして、雪像大会なども開き、高天原などから観光客を呼び寄せたりと町長は活性化に余念がない。
そんな努力もあり、神威の魅力に惹かれて移住をしてくるようにもなり、今ではすっかり高天原や太安京に勝らずも劣らずの都市となった。
夜になった神威は昼間とは違う顔を見せる。
寧ろ、夜こそもっとも活気ある時と認識している。
歓楽街は数多の灯りに彩られ、白い吐息を夜空に昇らせながら人々の賑やかな声に包まれる。
まるで毎日が祭のような雰囲気が神威が誇れる自慢だ。
その自慢を守ることが己の使命だと、鬼神丸国重は思っている。
神威には守らないといけない命がたくさんある。
信じて任してくれた局長に応える責任がある。
それが御剣姫守として、新撰組三番隊隊長としての責務だから。
「やぁいらっしゃい鬼の女将。今日も相変わらず一人酒ですかい?」
「だったらあたいのお酌をしてくれる? なんなら一晩肌を重ねて慰めてくれてもいいんだけど?」
「ははは、ご冗談を。私にはもう妻四人に子供八人いる身ですので……」
頬が痩せこけた店長に出迎えられて、鬼神丸国重は空いている席に腰を下ろす。
店が繁盛なのは知っている。
彼が作る料理は絶品であるし、酒もまた美味い。
神威で一番人気がある居酒屋と言っても過言ではないし、実際多くの来客者で賑わっていから赤字に苦しんでいるとは、まず考えられない。
と、家庭事情を知らない者からすれば疑問を抱くだろう。
長年足を運び、一時恋心すらも抱いたことがある鬼神丸国重だからこそ、よく理解している。
早い話が、四人の妻に毎晩搾り取られているのだ。
きっと昨日の夜も激しかったんだろうな、と考えて――今日も妄想が瞬時にできあがる。
『お、お願いだくーちゃん。俺と結婚してくれ!』
『もちろんだよ。あたいも大好き……』
『くーちゃん……俺、くーちゃんのこと幸せにするから!』
『それ、あたいの台詞だよ? でも……ふふ、そう言ってもらえるてなんだか嬉しい気分になってくるね』
熱い口付けを交わす。
嬉しそうに微笑む青年。
釣られて鬼神丸国重も笑う。
二人だけの小さな、されど幸せな結婚式を開いて永遠の愛を誓い合い――そこから毎晩何度も名前を呼び合いながら愛し合いやがて子供もたくさんできて大和一幸せな家庭を築いた夫婦として知られ他の姉妹が悔しがる様に勝利の笑みを浮かべてやりましたとさ。
などと。
決して口にはできない内容の情事が次々と思い浮かんできたところで、鬼神丸国重は思考を停止させた。
このままいくと、きっとあたいは自分を抑えられそうにない。
今すぐにでも彼の元へと行って襲ってしまいかねない。と言うより確実に襲う。
それだけは、絶対にやっちゃ駄目だ。鬼神丸国重は必死に己の言い聞かせる。
彼に嫌われたらせっかく神さまがくれた機会を失ってしまう。
鬼神丸国重は両頬を強く叩いた。
痛みで、下腹部に帯び始めた熱を逃がす。
妄想は家でするもの。
そこからどれだけ声を出してもバレないし、何回やっても構わない。
公の場で今日の妄想はどうしようかな、なんて考えるのは士道不覚悟だ。
あたいは副長とは違って公私混同しない立派な女なのだから。
どこかにいる男喰いの和泉守兼定と比べてしまったが、まぁいいだろう。実際そうなのだから、と鬼神丸国重は気にしないことにした。
「こっちこそ冗談よ。男なら誰でも構わないってわけじゃないわ」
「ははは、そうでしたね。それで、注文はいつもので?」
「えぇ、それでお願い」
しばらくして、酒と料理が運ばれてくる。
口に運んで、おいしいと鬼神丸国重は頬を緩める。
ここで彼が隣にいてくれたなら。
太安京にいるであろう想い人のことを考えつつ、酒と料理に舌鼓を打つ。
「そう言えば」
不意に、店長が口を開く。
「鬼の女将が夢中になってるその男って言うのは、どんな人なんです?」
「そう言えば、話したことなかったわね」
「よかったら教えてもらっても?」
「いいわよ。どれだけ彼のことを想っているか、是非聞いてちょうだい!」
意識を過去へと遡らせて、鬼神丸国重は静かに語る。
◆◇◆◇◆◇◆
大和転覆計画事件後、鬼神丸国重は太安京に訪れた。
普段は別々に行動している新撰組は、月に一度集まる機会を設けている。
近況報告であったり、今後の数打の教育方針などの話し合いをして、後は酒と料理を皆で楽しむ。それが彼女らの楽しみであり、普段一人でいる鬼神丸国重にとっては掛け替えのない時間でもあった。
いつものように話し合いも終えて、池田屋で宴会を開く。
男の話を肴にして会話も盛り上がってきたところで――。
「しかし、あの男には本当に驚かされたな」
長曽根虎徹の言葉に、和泉守兼定と加州清光がうんうんと頷く。
あの男とは、はて誰のことを言っているのか。
わからない面々は当然関心を抱く。
鬼神丸国重も例外にはもれない。
ただ、すぐに関心を失って酒を独り飲む。
どこの誰であろうと、鬼のあたいには関係のない。
下手に関わったら、また嫌な思いをする。
「結城悠と言う男だ。男でありながら数打をも上回る実力者で、今回の大和転覆計画を食い止めた功労者でもある。それと、和泉をフった男でもあるぞ」
「えぇっ!?」
その一言に、鬼神丸国重が真っ先に驚愕の声をもらした。
和泉守兼定の男遊びが激しいことは、誰しもが知っている。
風紀の乱れになるから、と長曽根虎徹が咎めても一切従わず。
こんな女のどこに男は惚れるのか。
けれどもほいほいと付いていって喰われた男は数知れず。
世の中は不公平にできている。
男に恵まれている彼女に不満を抱くも、副長だから面と向かって言えるはずもなく。
逆に自分達に女としての魅力がないこと理解して、逆恨みになるからと誰も文句を言わなかった。
その彼女をふった男が存在したことに、鬼神丸国重は驚かずにいられない。
――副長の誘いを断った結城悠……どんな人なのかしら。
一度失せたはずの関心が、再び甦る。
今度はしっかりと、長曽根虎徹らの会話に耳を傾ける。
ひょっとすると、あたいを受け入れてくれる人かも。
そんな淡い期待が何故か浮かび上がり、ありえないと振り払う。
「いやあの男は本当に面白いぞ。男なのに大和刀を持っている時点でもそうだが、あれは一人の男でありながら一匹の剣鬼だ。どんな人生を歩んできたか興味が尽かん」
「きょ、局長! その、結城悠って男の人は今はどこにいるの?」
「今は桜華衆の一員として働いている。勤め先はここだ」
「い、今太安京にいるの!?」
「どうした。随分と聞いてくるじゃないか鬼神丸。まぁ無理もないか――その男ならばほれ、丁度外を歩いているぞ」
長曽根虎徹が窓を指差す。
なだれ込むように他の隊長達が小さな窓にへばりつく。
そんなことをしなくても玄関に出てみればいいのに、と呆れながらも鬼神丸国重は外に顔を出す。
「あ……」
とても美しい男が目の前を歩いていた。
中性的な顔立ちで、化粧をして着飾れば女と間違えてしまうかもしれない。
だが、腰に差している大和刀と武術の心得のある者の歩き方が長曽根虎徹の言葉の意味を理解させてくる。
なるほど。確かに彼は剣鬼だ。
だから美しい。人としての魅力はもちろん、御剣姫守のように一振りの剣として彼は完成している。
だから、二度目の一目惚れの到来を鬼神丸国重は感じずにはいられない。
どうやらあたいは彼に一目惚れしてしまったらしい。
でも、どうせ叶いっこない。
どれだけ彼が剣鬼でも、肉体的な意味で本当の鬼じゃない。
あたいとは違う。だからこの想いは伝わらない。伝えたらいけない。
また、あんな目で見られるのだけは嫌だ。
「ん?」
ふと、目が合ってしまった。
つかつかと彼がやってくる。
近付くにつれて、ぼんと音が鳴ってしまいそうなぐらい顔に熱が帯びる。
なんて声を掛ければいいんだろう。とりあえず自己紹介かしら――いやいやいや、それ以前に話し掛けることも掛けられることも駄目なんでしょうが。
混乱する思考の中で、鬼神丸国重は必死に対応を考える。
考えて。
「えっと、こんにちは」
結局間に合わず。
とうとう話し掛けられてしまった。
「あう、え、えぇっとその……」
「おぉ悠! 貴公も酒を飲みに来たか! こっちに来て某らと一緒に飲まないか!」
「そうだ悠。私の隣にきて一緒に飲もう。そして今夜私に抱かれてみる気はないか?」
「一緒にお酒を飲んで酔いが回って介抱してそれからそれから……ぶふっ!」
「まさか。まだ真昼ですよ? 寝言は寝てから言ってください兼定さん。それと清光さんは相変わらず大丈夫ですか?」
窓を境に親しげな会話が行われる。
するとそこに、一人の少女がとことことやってきた。
金色の体毛に覆われた獣耳と尻尾を生やした御剣姫守。
太安京を任されている小狐丸だ。
「やぁ、今日は宴会の日かい?」
「おぉ小狐丸。見ての通り新撰組恒例行事の報告会だ」
「相変わらずだね。ちなみに私と悠は逢引の途中なんだ」
「なんで堂々とわかりきった嘘を言うんだお前は」
「もう、照れ屋さんだね君は」
「はいはい」
「……」
――あたいは、夢でも見ているのかしら?
鬼神丸国重は目を丸く見開いた。
呆れながらも小狐丸と親しげにじゃれ合う悠の行動が、彼女を大いに驚かせていた。
小狐丸は見ての通り人間の姿をしていない。
人でありながら獣としての特徴も持ち合わせている彼女も、人々から恐怖の対象として恐れられていたことを鬼神丸国重はよく知っている。
何故なら同じ境遇を味わってきたから。
他者の痛みを真に理解するには、自分も同じ痛みを受けなければわからない。
そう言う意味で鬼の一部を宿す鬼神丸国重は、誰よりも怪物と恐れられた御剣姫守の気持ちがよくわかる。
故に、怪物として罵らず一人の人間として接している悠に期待を抱いた。
抱いてしまった。
今まで見てきた男とはまるで違う。
もしかすると、本当にこの人ならばあたいを受け入れてくれるかもしれない。
言葉ではなく、直感した鬼神丸国重は口を開く。
戦い以外で勇気を出す日がくるとは思ってもいなかった。
彼に話しかけるのがとても怖い。
だけど、もしここで逃げてしまったらきっとあたいは一生後悔する。
敵前逃亡は士道不覚悟なり。あたいはあたいの心が赴くままに行動するのみ。
鬼神丸国重は己が選んだ行動を信じて、悠に話しかける。
「あ、あの!」
「は、はい!? なんでしょうか?」
「あ、あたいは鬼神丸国重って言います! だ、だからまずは友達としてあたいと交際してください!!」
「はい!?」
「いきなり人の女将に交際を迫るとか、ちょっと非常識すぎやしないかな?」
「だから誤解を招く言い方はやめろ」
「あいたっ! げ、拳骨を落とすなんて酷いじゃないか悠……」
「当たり前だろ。ちょっとは反省しろ――えぇっと、友達なら全然いいですよ。改めまして、俺の名前は結城悠って言います。気軽に悠と呼んでもらえれば」
「は、悠ね! それじゃああたいのことは……く、くーちゃんって呼んでくれてもいいかな?」
仲の良い男女が愛称で呼び合う。
古くから小説にも用いられているこの手法は、現代に入っても人気を集めている。
鬼神丸国重もその手法に憧れる乙女の一人であり、もし恋人ができたらこんな風に呼んでもらいたいと考えていた時期があった。
その時期が現在、彼女に訪れた。
今まで思い描いてきた妄想を現実とするために。
鬼神丸国重はおずおずと申し出る。
「く、くーちゃんですか。いきなり愛称呼びで呼んでもいいものかちょっと悩みどころですけど。わかりました、それなら口調も普通にした方が接しやすいかな、くーちゃん」
瞬間、凄まじい衝撃が全身に駆け巡った。
恋人とまではいなかいけれど、憧れの愛称呼びを現実のものとした。
これを喜ばずにいられるはずがない。鬼神丸国重は歓喜に打ち震える。
傍から見ればきっとあたい達は恋人同士に見られるかも。いや、きっと見えるはず。
だけど今喜びを表に出しちゃいけない。
節操のない女だと思われたらすべてが水の泡になる。
他の御剣姫守とは違うことを鬼神丸国重は彼に宣伝していなかないといけない。
「ぜぜぜぜ全然問題ないよ! すっごく嬉しいよ。それじゃあ、その……よろしくね、はーちゃん!」
「は、はーちゃん!? ま、まぁいいけど……初めてそんな風に呼ばれたな」
「それじゃあ次からは私のことをこーちゃんって呼んでもいいけど?」
「いや、お前はこーちゃんって呼ぶより小狐丸って呼んだ方がいいわ。その方が俺的にはしっくりくる」
「……まぁ、君がそう言うならいいけどね」
小狐丸の顔に不服の感情が宿るのを見て、鬼神丸国重は内心で勝ち鬨の声を上げた。
◆◇◆◇◆◇◆
「へぇ、そんな出会いがあったんですね」
「まぁね。でもその後色々あったんだけど、今じゃすっかり仲良くなったよ。多分周りからは恋人同士って思われてるんじゃないかな?」
「そうですか。それはよかったですね」
「えぇ、本当に。だけどね、最近こう思っちゃうことがあるんだ」
「と、いいますと?」
「……はーちゃんをね、監禁して滅茶苦茶にしてあたいだけの物にしてやりたいって。こんなこと考えるなんて、あたいって駄目な御剣姫守だね」
自嘲気味に小さく笑い、鬼神丸国重はお猪口の酒を一気に飲み干した。
偶然か、あるいは神の悪戯によるものだったのか。
製作段階で鬼に襲われた村正はとっさに手元にあった刀で斬り捨てた。
事なきを得たものの、鬼の血肉が生成中であった一振りの刀に付着し――結果、鬼を宿した御剣姫守が誕生した。
鬼の力を持つ御剣姫守は人々より酷く恐れられた。
彼女はとても心優しい少女であることを、誰も理解しようとしない。
戦場に出れば誰よりも果敢に前線に立ち、見事な剣を振るう姿を誰も見ようとはしない。
何故なら彼らにとって彼女は鬼だから。
その証拠となる角を頭に生やしているから恐れる。
結城悠との出会いは、鬼神丸国重に多大な影響を与えた。
角があるからと鬼と差別しない。だからこそ彼女は彼に惚れて、一人の女として想いをどんどん伝えていく決心を鬼神丸国重に持たせる切っ掛けとなった。
ただ、なかなか会えない分寂しさを感じずにはいられなくなった。
やがて寂しさが日に日に募り――一つの邪念が彼女の心を誘惑する。
そんなにほしいと思うなら檻の中にいれてしまえ。
邪魔する奴はすべて叩き潰せ。
他に女がいるなら殺して奪い取れ。
果たしてこの思考は一人の女である証拠なのか。それとも……鬼の本能なのか。
今はわからない。
わからないが、悠が悲しむことを鬼神丸国重は決して許さない。
その時は悪即斬のもとに斬り捨てるであろう。
その悪が自分であったとしても例外にもらさない。
鬼神丸国重は腰の得物にそっと触れて口元を緩める。
八重歯をちらりと口から顔を覗かせる。
それがまるで鬼の如き笑みを浮べていることを、周囲の人間を除いて鬼神丸国重は気付かない。




