第71話 連合軍結成
「「他種族と連合して、魔人領に侵攻っ⁉」」
「し~、まだ誰も言っていない事なんだから、そんな大きな声を出さないでよ」
僕が宥めると、二人ははっとした顔で口を手で押さえた。
「すまん。もう魔人領に侵攻して魔王を討つ事など出来ないと思っていたからな」
「だよね。あたしもそう思っていたよ」
まぁ、今まで侵攻しようにも国力を回復させないといけなかったからな。
それが三年で済んだのは良いと思えるけど。
「でも、これから各勢力の折衝をしないといけないから大変だよ」
「そこはそれ、あれだ」
「うん。あれだね」
あれ? どういう意味?
「「がんばれ‼」」
・・・・・・うん。なんとなくだけど、そんな感じがした。
とりあえず、各勢力の知り合いに手紙を出して、まずは商人達に会見を申し込み、軍の兵糧と武具の価値をこちらの国の貨幣基準でどれくらいするか調べてもらい、それから大量に買いそろえないと。
もちろん。その席で反対もされるだろうから、そこでデメリットとメリットを教えて交渉しないと。
「さて、早く書状を書いて、早く会見ができるようにしないと」
僕は席を立ち、何処かの部屋を借りて知り合いに書状を書いて、そこを経由して商人に届くようにしないといけないから、一つの種族に最低でも二通は書かないと駄目だな。
「ああ、そう言えば。椎名さんと村松さんは?」
「あの二人か? あの二人なら今は修業に行ったぞ」
「修業?」
一年前にあった時は、椎名さんはドラゴンを一人で倒したとか言っていたし、村松さんは鬼人族の中でも好戦的で知られる大鬼の群れを一人で滅ぼしたとか言っていたぞ。
もう、修業なんてしなくても十分強いだろうに。
「なんか、もっと強くならないといけないとか言っていたな」
あれ以上強くなって誰と戦うのかな?
「それと、強くならないとつり合わないとかどうかとも言ってなかった?」
「・・・・・・そんな事も言っていたな」
釣り合わないねぇ。と言うか、それだけ強かったら、つり合いとる人も大変そうだな。
「じゃあ、僕は仕事に行くから」
「うむ。しっかりこなして、この国に信康ありと謳われるような働きをしろよ。今後の為に」
書状を書くだけで、それは無理だろう。
「頑張ってね! 疲れたら言ってね。疲れたら甘い物を食べたら良いって言うから、あたしが厨房に行って一作るから」
それは止めてください。厨房が大惨事になるのが目に浮かぶから。
マイちゃんは本当に料理のセンスがない。
何せ、おばさんにキッチンに立つなと厳命されているからな。
部屋を出た僕は、宰相に頼んで部屋を借りて書状を書きあげ、直ぐに届けた。
各種族の商人達と会い、意見交換しつつ、こちらの話をする。
快く受け入れる人も居れば、渋る人も居た。
渋る人には、色々な手段を用いて頷かせた。
ちなみに、賄賂は渡してはいない。
単に、向こうが扱っていない商品を扱かわせるようにしただけだ。
そんなこんなの調整をしていたら、時間は瞬く間に過ぎた。
各種族の交渉も終わったそうで、一ヶ月後には各種族の軍が王都に到達するそうだ。




