表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/756

第70話 久しぶりの再会

「陛下、恐れながら申し上げます」

「うむ。申すが良い。レオン騎士団長」

 そう名前を呼ばれた騎士団長は椅子から立ち上がる。

「魔人領に攻め込むのは、我らは反対はありません。ですが、他種族たち共に攻めるのはお止めになった方が良いと思います」

「ふむ。何故じゃ?」

「前回の侵攻は他種族との足並みが乱されたため敗退しました。もう一度そうなるのではと思うののが第一です。

 第二に武具、兵糧といった兵站は誰が準備するのか。

 最後に誰がその連合軍を指揮するかです。以上の三つの事から反対する所存です」

「確かに、今言った三つの事は懸念事項であるな」

「であれば、何故他種族と共に侵攻するのですか?」

「お主の懸念事項なのは分かる。故に、今からその懸念を払拭しよう」

「払拭?」

 陛下がそう言うと、皆ざわつきだした。

(そう言う所をみると、陛下も何か考えがあって言うのだろうな)

 どんな事を言うのだろうと、僕は耳を傾ける。

「まず第一の懸念だが、我らの足並みが崩れたのは、総大将がきちんと全体の指揮をとっておらなかったから、各種族軍の連携が乱れたのだ」

「確かにそうでしたな。前回の総大将であられた天人族の将は、統率力の面でいえば些か・・・・・・」

 レオン騎士団長が苦々しい顔をしていた。

(・・・・・・面倒な人だったんだな)

 その顔を見て、何となくだがそう察した。

「じゃから、今回の侵攻軍の総大将は話し合いではなく、くじで決めようとお思う」

「くじですか。ふむ、それなら大丈夫でしょう」

 確かにそれだったら、総大将になるチャンスは平等だから反発はないだろう。

 というか、前回は話し合いで決めていたのか。何か凄い面倒な話し合いになったのが目に浮かぶ。

「そして第二の方じゃが、武具、兵糧といった兵站は我が国が全面的に統括する」

「という事は、我らの国が兵站を握ると言う事ですか?」

「そうじゃ」

「ですが、我が種族と他種族とでは、武具も兵糧が違います」

 そうなのだ。実は人間族と獣人族、竜人族、天人族、亜人族、鬼人族とは武具も兵糧が違う。

 例えば、獣人族では弓の作り自体が違う。弓は複合弓だ。

 魔物の骨やら皮やら腱を張り合わせた物だ。

 獣人族はその弓を使うが、他の種族は色々な理由があって使わない。

 その上、この弓の製造方法は獣人族の職人しか知らない。

 弓一つで、このように面倒だ。

 国王陛下は、そこをどうするつもりかな?

「そこは、ターバクソン男爵」

「はっ、はい⁉」

 何で、僕が呼ばれるんだ?

「お主は各種族とそれなりのコネクションを持っておるな?」

「は、はい。ですが、国を通しての付き合いですから、それほど親しいという訳では」

 敵対したら縁を切れるように、広く浅い付き合いだ。

 まぁ、中には親族を僕の嫁に~とか言っている人は居る。

「そのコネクションを使い、他種族の武具、兵糧などの価値を調べてもらおう」

 成程。つまり武具、兵糧の値段の価値を調べて買い上げるという事か。

「分かりました。大至急、調べておきます」

「うむ。頼むぞ」

 後はこっちの軍を統括する大将だな。

 誰がするのだろう?


 「最後に陛下これだけ御聞かせください」

「何じゃ?」

「総大将はくじで決める事にしたそうですが、我ら人間族軍を統率する大将は誰になさるのですか?」

「それは」

 陛下は自分の横に居る第一王女を見た。

「我が娘、アウラ・エクセラ・ロンディバルアを大将とする」

 陛下がそう言うと、各軍団長達は頷きながら納得した風の声をあげる。

「王女殿下ならば、問題ないな」

「ああ、近衛兵団の団長を務めている方だ。兵からも慕われている」

「うむ。王女殿下ならば、各軍団の兵も従うだろう」

 各軍団長達も不満はないようだな。

「では、他に意見がある者はいるか?」

 陛下がそう尋ねると、誰も何も言わなかった。

「では、これより四種族を我が王都に招き、そして総大将を決めた後に、魔人領に侵攻する。各々、準備を整えておくのじゃ」

「「「はっ、承知しました」」」

「では、これで会議を終了とする。解散」

 宰相閣下がそう言うと、会議に参加していた人達が出て行く。

 僕も今日は特に用はないので、久しぶりに友人達に会いに行く事にする。

 会議室を出ると、視線を感じた。

 何故か理由が分からず、首を動かし周りを見る。

 だが、その視線を送る人が見つからない。何だか怖く感じてしまった。

(どうしようかな? 敵意はないようだから無視した方がいいかな)

 そう考えていたら、向こうから誰かが走ってこちらに向かって来る。

「お~い」

 その者は走りながら、僕に向かって手を振っている。

 丁度、逆光なので顔が見えない。誰だろうと目を細めて見ようとしたら、その人は僕に向かって飛んで来た。

「ノっっっっく~~~~~ん‼」

 僕をそんな風に呼ぶ人は一人しかいない。

「マイ、ちゃん、・・・・・・ぐぶっ⁉」

 僕の喉にマイちゃんが両腕が巻き付かれた。

 飛んで来たので、、一瞬呼吸が出来なくなった。

「久しぶり~、会いたかったよ~」

 マイちゃんは僕の喉を絞めながら、頬ずりしてきた。

 力いっぱい絞めるくるので、息苦しかった。

「ま、マイちゃん、く、くび、くびが・・・・・・」

「元気だった? 領地運営は大変だったでしょう。少し痩せた? それとも太った?」

 マイちゃんは首を絞める腕に力を込めてきた。

 僕はマイちゃんの腕をタップするのだが、マイちゃんは腕を叩かれているの気にせず、ギュッと首を絞めて行く。

(ああ、やばい、いしきが・・・・・・)

 意識が遠のきそうになった瞬間、パコンっと音がした。

 すると、僕の首を絞めていた腕が放れた。

 咳こみ、新鮮な空気を吸う。

 そして、どうして腕が放れたのだろうと思って見たら、そこにはユエが居た。

「マイ、久しぶりに会うのは分かるが、首を絞めてどうする。久しぶりに会って早々殺す気か?」

「うう~、だって~」

 ぐずるマイちゃんを言い聞かすように宥めてるユエ。

「ユエ、久しぶり」

「久しぶりだな。ノブ」

 ユエは笑顔で僕に挨拶する。

「元気そうで何よりだ。どうだ。領地運営の方は?」

「最初の頃に比べたら、かなり豊かに出来たかな」

「かなりか。・・・・・・・十分過ぎるの間違いじゃないのか?」

「そうかな?」

 領内ではまだ開拓村がかなり有る。この開拓村を少しづつ豊かにさせて、村にいずれは町になる予定だ。

「まぁ、ノブならそう言うと思っていたぞ」

「そうかな。ああ、そう言えば、他の皆は元気にしている?」

「うむ。まぁ、皆元気にしているぞ」

「そっか、それでお前はどうして王都に来たんだ?」

「・・・・・・その内、発表されるだろうけど、今の内に話しておくね」

「ほぅ、それは随分と重要な事のようだな」

「うん。という訳で、どこかゆっくりと話せる所無いかな?」

「丁度良い所がある。そこで話そう」

「じゃあ、そこに行こうか」

「うむ、行くぞ。マイ」

「オッケー」

 僕は二人の案内で、そのゆっくり話せる所に向かった。



 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ