外伝 ターバクソン奮闘PART2
いやぁ、まさかこれだけの量の金が出来るなんて思わなかった。
お蔭で採掘する人達に、手伝ってくれた報酬を渡す為に砕くのが大変だ。
元々、報酬は払っていたから別に払わなくても良いのだけど。
粗悪な岩石塊から金に成る所をバッチリ見られたし渡さないとね。
人足達に十分すぎる量の小粒金を小さい皮袋に入れた。
貰った人達は、皮袋に入っている金を手に取っては本物かどうか確かめていた。
それが終ると何処か惚けた顔をしながら、家へと帰って行った。
手伝った人達に渡しても、まだ大量の金があった。
後は、この金を元手に色々な事業が出来る。
「あの、男爵様。訊いてもよろしいですか?」
そう声を掛けたのは、僕を案内してくれた役人の人だ。
名前は確か、ハンク・ガルセボスさんだったかな。
「男爵様、あの者達には採掘させる為の報酬は前払いで払っております。なのに、何故金を与えたのですか?」
「ああ、それは簡単です」
僕は後ろにいるハンクさんに振り返った。
「言葉よりも物を見せた方が良いですからね」
「モノ?」
「例えば、金が出来るのををこの目で見たと言われて納得できますか?」
「・・・・・・無理ですな」
「じゃあ、その金を少しでも持って帰って来たらどう思います」
「流石に信じますな」
「そうでしょう。僕の世界の言葉にこんな言葉があります『人の口に戸は立てられない』という諺です」
「戸ですか? そうなりますと、金の事はいずれ知れ渡るという事になりますな」
「そうですね。でも、金が造られるという話を聞いたら、誰でも来ると思いますよ」
「・・・・・・商人が目の色変えてこの領に来そうですね」
「それで金を安定供給したら、この領の復興が進むと思います」
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
あれ? 皆の顔が引きつっているように見えるのだけど。
何で、そんな顔をするのだろうと思い、肩に止まり羽繕いしているモリガンに話し掛ける。
『ねぇ、何で皆の顔が引きつっているのだろう』
『それはお主、触媒もなく物質錬成の魔法を使える者など今までの歴史で見た事はないぞ』
『触媒が無しって、岩石塊を触媒にしたじゃないか』
『あれは触媒ではなく、材料じゃ。触媒というのはじゃな。分かるか知らんが賢者の石の事じゃ』
『賢者の石? それって霊薬だよね』
『ほう、よく知っておるな。その通りじゃ。ちなみに、この世界の魔法使い達は、触媒なしで物質錬成の魔法で金を造る事が出来る者は、我が知っているだけでも数人しかおらんぞ』
『・・・・・・それって、要するに凄い事したっという事かな?』
『そうゆう事じゃな』
・・・・・・これは、やりすぎたという事か。
とりあえず、今日は金を倉庫に入れて解散しよう。
次の日。
僕は領主の館で書類仕事していると。ドアが激しくノックされた。
「男爵様、大変です!」
「何かありましたか?」
魔物が襲撃してきたのかな?
「この都市に移住したいと言う者達が門の前で列をなしております。あまりに多いので役人の数が足りない上に、住む家がありません! どうなさいますか⁉」
「ええっと、・・・・・・手の空いている人達に手伝うように言って下さい。今、仕事をしている人は仕事が終わり次第、手伝って下さい。後は移住してきた人達を独り者か家族連れかを調べて下さい。それで独り者の人達は、採掘場にある大きな宿舎に泊まってもらって。家族連れの人達には、空き家とか宿屋に泊まらせて下さい」
「はっ、かしこまりました!」
「それと移住を希望してきた人達は何を仕事にしているかも聞いておいてください。大工の仕事をしていた人が居たら、金はこちらが出すので、大きなアパートいや、違う共同住宅を建てるように伝えてください」
「キョウドウジュウタクですか?」
あっ、この顔意味が分かっていないな。
「取りあえず、大工の人達が何人いるか調べておいてください。その人達を纏めてから、僕がその話をします」
「はっ、ではっ」
役人の人にそう伝えると、役人の人が直ぐに向かって行く。
ああ、そうだ。地図で何処に住居を建てるか確認しておかないと。
僕はハンクさんとミルチャさんを呼んで、何処に住居を建てるか相談した。
更に数日後。
急ピッチで住居を建てて、何とか住む所を確保して、それから採掘した岩石塊を金にして、それを商人に売って、手に入らない物を手に入れるようになった。
また、館で書類仕事をしている時。
「住民が増えたから、他の所にも開拓するようにしないと」
どうしようかなと考えていたら、またドアがノックされた。
「男爵様、先程、この都市から北に数日行った所にある鉱山から、奇妙な物が採掘されました」
「? 奇妙な物?」
「こちらになります」
役人の人が、布で包まれた物お机に置いた。
それはピンク色の物体だ。
「採掘した者も何か分からないので、こうしてこちらに届けに来たのです。少し削ってみて舐めたら、しょっぱかったと言っていたそうです」
「ふ~ん。・・・・・・もしかして、これって」
僕は爪でこすって、その物体を削り舐めた。
このまろやかでクセがある味だ。
「これは、岩塩だ」
「ガンエン?」
「簡単に言えば、塩ですよ」
「し、塩ですかっ⁉」
「ミルチャさん、地図を」
この領に来てから、秘書のような事をしてくれるミルチャさんに地図を持って来てもらい、その地図を見ながらどこの鉱山から発見されたのか訊いた。
その翌日から岩塩の採掘が始まった。
更に数日後。
岩塩の採掘により、更なる金が入る様になってきた。
金が造られるという話と、岩塩が採掘されるという事で商人が更にこの領に来るようになった。
儲かった金で開拓村を造る。
そうして、この領を復興させていく。
「いやぁ、最初は金を造って、それを売って少しずつ豊かにしておこうと思ったけど、まさかこんな一気に豊かになるとは思わなかったな~」
正直、あり得なさ過ぎてこの後、どんなしっぺ返しがくるか分からず怖かった。
今日も大人しく書類仕事をしていた。
(頼むから、もう何も来ないでくれよ~)
そう願いながら、僕は仕事をしていたら、またドアが激しくノックされた。
ま、また何か来たのかなとと思いながら、入る様に言った。
「男爵様、東にある開拓村の近くの山から、こ、このようなものがっ」
そう言って役人の人が、机に輝く物体を置いた。
うん? 何だろう。銀色に輝いている鉱物のようだけど。
軽く叩いてみると、硬い感触とコンコンッという音がした。
「これは?」
「・・・・・・魔法銀です」
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
はい? ミスリルですと?
『うむ。この輝き、間違いなく魔法銀じゃな』
モリガンがいうなら、本当のようだ。
「と、とりあえず、王都に誰か使者を立てて、相談しましょうか」
「は、はい」
役人を執務室に集めて、護衛を数人と使者一人というメンバーにして、王都に行ってもらった。
後日、王都の役人と合同で採掘する事で決まった。
それから数日後に、この世界で一~二争う硬さを持つ鉱物である神鋼の鉱脈と神金剛の鉱脈が見つかった。
次から本編です。




