クラスメート達の密会
西園寺視点です。
王宮のとある一室。
ここに五人の男女が居た。
「・・・・・・・ここに来るまで、誰にも見つからなかった?」
「わたしは大丈夫」
「わたしも」
「問題なし」
女性が全員、そう答えるの見て、最初に口を開いた女性が男性を見る。
「俺の方も問題ない」
「では、これより第666回定例会議を行う」
「「「我らが宿願を果たす為に」」」
「・・・・・・・・・なぁ、いつまでこのノリを続けるんだ?」
「裏切り者が出たっ!」
「裏切り者には死を‼」
「なんでだよ」
俺こと西園寺は呆れたようにツッコミを入れる。
今日、いきなり雪奈から「話したい事があるから、一緒に来てと言われて」来てみれば、何故か張、村松、真田の三人が部屋に居た。
(何だ。この呉越同舟を通り越して、ナメクジと蛇とカエルの組み合わせは?)
これに雪奈が加わったら、第一次世界大戦のきっかけになったヨーロッパの火薬庫も真っ青な事が起こると思えた。
(・・・・・・・・・何か起こったら、速攻で逃げるか)
君子危うきに近寄らず。
昔の人はいい言葉を残した。
いや、この場合、三十六計逃げるに如かずか。
そう思っていたら、何か勝手に会議が始まった。
「さて、冗談は置いておいて。それでは第一回円卓会議を行ないます」
真田がそう言うと、張と村松が何処からか鳴り物を出して、パフ―、パフ―とかドンドンと音を立てだす。雪奈も恥ずかしがりながらも、ラッパを鳴らす。
「~~~~、・・・・・・・これ結構恥ずかしいね」
なら、するな。
「司会はこの方、西園寺颯真君がしてくれます」
「俺⁉」
「そうだ。でなければ、お前をこの場に呼ぶことはない」
「う~ん、確かに」
「ていうか、ピッタリだし」
「お、お前ら・・・・・・・・・」
「わたしもそのつもりで連れて来たし」
何と、幼なじみまで俺をこんな良く分からん集まりの司会をさせる為に連れてきたようだ。
一度こいつに俺の事をどう思っているのか訊いてみたいと思えた。
(昔は、大人しくて良い子だったのだがな)
そう思いながら、何時の間にか用意されていた、黒板には大きな字で議題が書かれていた。
本日の議題『如何にして、ノッ君をわたしに振り向かせるか』
見た瞬間。帰りたくなってきた。
「マイ、この議題は流石に問題があるだろう」
「そう?」
「ああ、そうだ。他の二人もそうだろう?」
「ええ、その通りね」
「流石にそれは、ちょっと」
ふむ。流石にこんなふざけた議題では話す気も起きないか。
というか、それを含めて、会議を始める前に決めておけ。
「こんなふざけた議題よりも、わたしの『ノブ、お前は天駆ける龍となるのだ。燃えよ。野望の章』の方が遥かにましだ」
それは、ゲームのタイトルか?
どうましなのか、教えて欲しい。
「二人共は全然ね。そんなのよりも、わたしの『猪田君の猪田君による猪田君の為の、世界征服事業』の方は遥かに良いと思うわ」
お前は、あいつに元の世界で誰も成し遂げた事が出来なかった大偉業でもやらせるつもりか。
そんな事する奴じゃないだろう。
「何その、ゲームのタイトルみたいな議題、却下だね」
「それを言ったら、椎名のは議題ではなくただの目的だろうが、しかもノブは絶対にしないぞ。そんな事」
「真田さんの子供みたいな議題だね。まぁ、真田さんらしいと言えばらしいけど。ふっ」
三者三様の反応を見せると、三人は睨み合いだした。
もう、俺要らないと思うが。
溜め息を吐いていたら、村松が元気よく手を挙げる。
「ハイハイ~、あたしの議題にしない?名付けて『イノッチ、ラブラブハーレム大作戦』」
う、う~ん。前の三つとどっこいどっこいだな。
正直言えば、全部駄目だろうと思う。
「「「それ、いいね(な)」」」
うん。俺には何が良いか分からん。
「でも、そんな提案をしたんだから、一番は自分だと思っているの?」
真田が直球で訊いてきた。もう少し、雑談を交えながら話した方が良いと思うぞ。
だが、村松はあっけらかんと答えた。
「全然、あたしは別に一番じゃなくてもいいよ。出来れば一桁だいが良いな~」
村松がそう言うと、三人は笑顔で頷いた。
「そうかそうか。じゃあ、わたしが一番になったら、セナ。お前は特別に二号さんにしてやろう」
「村松さんは分を知っているね。流石ね。わたしが猪田君の奥さんになったら、愛人にしてあげるね」
「流石だね。セナッチ、それでこそ友達だよ。あたしがノッ君の正室になったら、側室にしてあげるね」
また、三者三様の反応をしだした。
お前等、会議なんかする気ないだろう?
「話は聞かせて貰ったわ‼」
誰だ。入って来たのは?
うん? こいつは確か、魔法師団の師団長だったな。名前は確か、エリゼヴィアとか言っていたな。
「貴方達が、子豚の事で議論するフリをしながら、子豚の後を追わせないように牽制しあっているのも、そして議題を挙げた様に見せて、巧みに争わせる様にしているのも。全て、わたくしは把握させてもらったわ」
ああ、何で、猪田の後を追いかけないのだろうかと思っていたら、そういう訳か。
しかし、巧みに争うわせるとは、誰が仕掛けたんだ。
「ちぇ、ばれたか」
って、お前かい⁈
村松、お前意外に策士だな。
「その上で、その上で、わたくしは宣言させてもらうわ」
エリゼヴィアとかいう女は一度区切って、大きく息を吸う。
「子豚はセリーヌとわたくしのものよっ。貴方達がどれだけ頑張っても精々、側室のぐらいにしか成れないわ。だから、今の内に諦めて、他の男に鞍替えしておきなさい。オッホホホホホホッッッ‼」
あいつ、いつの間に第二王女を誑し込んだんだ?
手が早いというか、どんな手段を使ったんだ?
今度、訊いてみるか。
「「「その喧嘩っ、買った‼」」」
真田、張、村松が席を立つなり吼える。
「オッホホホホホホ、貴方達のような方々に、わたくしの相手が務まるかしら? 前の戦争だって子豚の知識だけ勝ったのよ。貴方達は何もしていないじゃない」
「面白い。魔法師団師団長の実力を見せてもらおう」
「そうだね。あたしは魔法が使えないけど。戦技が使えるから覚悟しておいてね」
戦技か。
職業が肉弾戦闘向きに使える技のような物だ。
俺もいくつか習得している。
「あたしは魔法と戦技両方使えるけど、文句ないよね」
「ホッホホホ。当然、わたくしも両方使えますわ。なんでしたら、ハンデをつけてどちらかしか使えないようにしましょうか?」
「「「上等っ」」」
四人は部屋から出て行った。
残ったのは、俺と雪奈だけだ。
「・・・・・・お前は行かなくていいのか?」
「うん。行くけど、戦いには参加しないわ」
「どうしてだ?」
こいつなら、いの一番に参加すると思うのだが。
「あの人、実力あるから。正直、わたし達四人がかりで戦っても勝てるか分からない」
ほぅ、こいつがそう言うとはよっぽど強いのだな。
あんな笑い方する人、初めて見たが本当に居たんだな。
「前にちょっとね。それで実力は分かったの」
そのちょっとが非常に気になるが、今はあえて訊かないでおこう。
「で、どうするんだ?」
「真田さん達に戦ってもらって、相手の癖とか苦手な所を調べるわ」
何か今、ルビが違う字になっていたような気がするが、気のせいだろう。
「今言ったのを調べつくしたら、どうするんだ?」
「隙を見て、闇討ちする」
そこは正々堂々じゃなくて闇討ちか。
こいつの職業は「シノビ」だったな。じゃあ、闇討ちが得意か。
「じゃあ、わたし行くから」
そう言って、雪奈は部屋から出て行った。
俺は溜め息を吐いて、誰も座っていない席に座る。
(あんな奴らに惚れられる猪田は不幸と取るべきか、それとも幸運なのか分からんな)
と言うよりも、どんな方法を使ったんだ。




